血液凝固異常症等に関する研究

文献情報

文献番号
202011056A
報告書区分
総括
研究課題名
血液凝固異常症等に関する研究
課題番号
20FC1024
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
森下 英理子(国立大学法人金沢大学 医薬保健研究域保健学系)
研究分担者(所属機関)
  • 冨山 佳昭(大阪大学医学部附属病院 輸血部)
  • 村田 満(慶應義塾大学 医学部)
  • 桑名 正隆(日本医科大学 大学院医学研究科 アレルギー膠原病内科学分野)
  • 島田 直樹(国際医療福祉大学 基礎医学研究センター)
  • 松本 雅則(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部)
  • 丸山 彰一(名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座腎臓内科学)
  • 宮川 義隆(埼玉医科大学)
  • 小亀 浩市(国立循環器病研究センター 分子病態部)
  • 横山 健次(慶應義塾大学 医学部)
  • 大賀 正一(九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野)
  • 松下 正(名古屋大学 医学部附属病院輸血部)
  • 根木 玲子(国立循環器病研究センター ゲノム医療支援部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性疾患政策研究事業として、エビデンスに基づいた全国共通の診断基準・重症度分類の策定や改訂、診療ガイドライン等の確立や改正および普及・啓発活動などを行う。対象疾患は血液凝固異常症等が主な病態である4つの指定難病、すなわち特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る。)である。小児と成人を対象とし、さらに小児から成人への移行期医療も含める。
研究方法
令和2年度は3年計画の1年目として、前年度(研究代表者:村田 満)に引き続き疫学調査、レジストリー、遺伝子解析、診断法の標準化、診療ガイドの改訂、指定難病検討資料の作成、臨床情報やゲノム情報に基づく病態解明や保険適用拡大に注力した。臨床的有用性の高いデータベース化システムの構築、そして新しい体外診断薬の開発や検証、新規治療の検証を継続した。さらに本年度はCOVID-19パンデミックの発症に伴い、国民の関心の高いCOVID-19関連血栓症について全国調査を実施し、本邦における血栓症合併頻度を推定した。
結果と考察
(1)ITP:難病法施行後初の臨床調査個人票集計による全国疫学調査(2015年~2017年のデータ)を行い、最新の疫学像として患者数(受給者数)、新規受給者の男女比、年齢、発症年齢、発病からの期間、出血症状、臨床所見、重症度分布、治療の実施状況などの基本的実態を明らかにした。治療の標準化に関しては、「成人ITP治療の参照ガイド2019年改訂版」の普及・啓発、今度の改訂に向けての課題検討を行った。診断に関してトロンボポエチン(TPO)測定法を企業と共にキット化し、さらに全自動検査システムで短時間に大量の検体測定が可能な化学発光試薬にアップグレードした。さらに臨床検体を用いてTPO測定系の性能評価を行った。疾患の普及・啓発活動として「ITPをめぐる最近の話題」といったタイトルで市民公開web講座を実施し、ITP治療参照ガイド2019年版の普及・啓発活動に多いに貢献した。web講演で用いたスライドは、本研究班のホームページ(HP)に公開した。
(2)TTP/aHUS: TMAレジストリには今年度27例の新規登録が行われ、先天性TTP1例のADAMTS13遺伝子解析を行った。aHUSの蛋白質学的・遺伝学的解析と症例集積を継続し、12月までに44例の相談を受けた。ガイドラインについてはCQに基づいたTTPガイドラインの作成を目指し、今年度はリツキシマブを使用する可否についてのCQを作成した。aHUS診療ガイドは改訂のためにCQの策定を今年度完了したので、今後は文献検索を行い科学的根拠に従った推奨を作成する。造血幹細胞移植後TMAの病態解析にも着手した。さらに、TTPとaHUSそれぞれの病態と治療に関して患者向けの動画(1疾患5分程度)を作成し、当研究班のHPに公開した。

(3)特発性血栓症:遺伝性血栓性素因による特発性血栓症の全国アンケート一次調査が終了し、データを収集、解析した。今年度完成した「遺伝性血栓性素因患者の妊娠分娩管理に関する診療の手引きQ&A」が国内雑誌に掲載され、本研究班のHPにも公表した。今後、英文誌にも投稿予定であり、学会、Web講演会などを通じて広く発信していく。小児期発症遺伝性血栓症については、集積した臨床像より個別化医療に向けたエビデンスを構築する。遺伝性血栓性素因の症例集積ならびに病態解析を継続し、9症例の変異を同定した。さらに、今年度はCOVID-19関連血栓症の全国アンケート調査を日本血栓止血学会、日本動脈硬化学会との合同で行い、6000例の回答を解析した。その調査結果についてはJ Atheroscler Thrombに掲載され、かつ全国の医療者・国民に向けてwebセミナーを開催した。また、当研究班のHPにも公表した。
結論
4疾患について、それぞれのサブグループに分かれて課題に取り組むとともに、グループ間の相互議論をweb会議などで活発に行うことによって、(1)分子病態に基づいた診断基準、治療指針の確立/普及およびその効果の検証、改正、(2)大規模な疫学的解析による我が国での発症頻度、予後の把握と治療の標準化、などについて一歩一歩進めた。今年度はCOVID-19により活動が制限されたが、web講演会の開催や動画作成など新しい手法を用いて普及活動に努めた。今後は、インターネットをさらに活用した研究活動の展開を試みていきたい。

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202011056Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,000,000円
(2)補助金確定額
19,973,000円
差引額 [(1)-(2)]
27,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,594,108円
人件費・謝金 2,757,217円
旅費 0円
その他 5,007,275円
間接経費 4,615,000円
合計 19,973,600円

備考

備考
自己資金600円

公開日・更新日

公開日
2022-01-28
更新日
-