文献情報
文献番号
200801003A
報告書区分
総括
研究課題名
社会保障の制度横断的な機能評価に関するシミュレーション分析
課題番号
H18-政策・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
府川 哲夫(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
研究分担者(所属機関)
- 山本克也(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
- 野口晴子(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
- 佐藤 格(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
- 酒井 正(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
- 菊池 潤(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
4,904,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、制度横断的に社会保障の機能を分析し、家族形態や就労形態の変化に対応した社会保障の機能を考察するとともに、シミュレーション分析を通じて、政策の選択肢が社会保障の機能に与える影響を評価することを目的としている。
研究方法
社会保障の機能に関する個別研究と、それらを総合するシミュレーションを行った。個別研究では(1)年金、医療、介護におけるリスク・プーリング機能、(2)社会保障における「子育て支援」機能、(3)社会連帯の構成要素、(4)公私の役割分担、(5)個人のライフサイクルと社会保障、を検討した。シミュレーション分析では有識者に対するヒアリングの結果を具現化するモデルを構築し、社会保障制度や日本経済の将来像を示した。
結果と考察
本研究で得られた結果は以下の通りである。第1に、高齢者就労等を考慮すると、基礎年金をクローバックする方法が優れるが、法律論的には難しい。第2に、介護の認定率の地域差に対して保険者の財政規律が影響を与えている。また保険原理が働く規模としては不十分な保険者が多く存在するため、保険規模の拡大が求められる。第3に、市場の失敗が存在する状況では、最適な出生率の実現には、政府による育児支援政策が必要となる。第4に、年金におけるアメリカ方式の導入や、年金や医療における国庫負担分の消費税化あるいは保険料化が経済を好転させる。一方で老人保健制度の維持や自己負担割合の引き下げはプライマリーバランスを悪化させ、マクロ経済に悪影響を与える。また年金保険料の引き上げはなるべく早い時期に行うことが望ましい。
結論
本研究からは以下の結論が導かれた。第1に、給付算定方式の変更を検討すると、ベンドポイント方式はポイントとスロープの設定次第で、クローバック方式よりも大きな年金減額が可能となり、年金財政の健全化に資する。第2に、医療保険を適切に管理するには、需要と供給の両面で政府の適切な関与が不可欠である。第3に、仮に介護保険制度に所得再分配機能を求めるならば、保険者間の財政調整を行うことは不可欠であるが、その前提として保険規模の拡大が求められる。第4に、プライマリーバランスの回復が経済を大きく好転させる効果をもつため、高齢化に伴って給付が増加することは避けられないとしても、社会保障改革においては給付と負担のバランスを考慮し、プライマリーバランスに対して少なくとも中立的な改革を目指す必要がある。
公開日・更新日
公開日
2009-04-09
更新日
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