ミトコンドリア病、レット症候群の調査研究

文献情報

文献番号
202011051A
報告書区分
総括
研究課題名
ミトコンドリア病、レット症候群の調査研究
課題番号
20FC1019
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 雄一(国立精神・神経医療研究センター 疾病研究第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 小坂 仁(自治医科大学 医学部)
  • 大竹 明(埼玉医科大学 医学部)
  • 高島 成二(大阪大学大学院 医学系研究科 生命機能研究科)
  • 藤野 善久(産業医科大学 医学部)
  • 松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
  • 三牧 正和(帝京大学医学部)
  • 村山 圭(千葉県こども病院 代謝科)
  • 山岨 達也(東京大学 医学部)
  • 米田 誠(福井県立大学看護福祉学部)
  • 伊藤 雅之(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第二部)
  • 岩崎 裕治(東京都立東部療育センター)
  • 松石 豊次郎(久留米大学高次脳疾患研究所)
  • 高橋 悟(旭川医科大学医学部)
  • 青天目 信(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 黒澤 健司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 ミトコンドリア病の確定診断に必要な検査は専門性が高く、検査の標準化と集約的診断体制の確立を継続する。特に、ミトコンドリア病の遺伝学的検査と遺伝カウンセリングの重要性が増しており、わが国全体のゲノム医療の推進に対応して遺伝子検査を位置づける。多様な診療科と連携したオールジャパン体制で「診療ガイドライン」を作成する。先進的な生殖補助医療の適用が試みられているので、倫理的な問題を含むそれらの適否等について検討する。患者レジストリーを構築するとともに、海外との同様な活動と連携するとともに、疫学横断班と共同でミトコンドリア病の診療における実態調査を行う。
 レット症候群(RTT)の多角的な臨床研究を目的とする。
研究方法
 ミトコンドリア病は、1)診断フローチャートの作成と検査標準化、2)診断基準、重症度スケールの作成、3)診療ガイドラインの作成、4)ミトコンドリア病の情報提供体制の整備とアウトリーチ活動、5)患者レジストリーの構築、を行う。
 レット症候群では、RTTの追跡調査、自然暦、臨床実態を明らかにし、診断基準を検証する。また、RTT患者のQT延長症候群の検討、臨床遺伝学的解析を行う。RTTをはじめとする様々な神経疾患の遺伝学的検査の位置づけについて検討する。
結果と考察
ミトコンドリア病では、
1)診断フローチャートの作成と検査標準化
 ミトコンドリア病の確定診断には、病理検査、生化学検査、遺伝学的検査を行い、総合的な評価が必要である。遺伝学的検査の保険収載を目指すものの、血液以外の組織検査が重要なミトコンドリアDNA検査、200以上の疾患関連核遺伝子パネル検査の方法を確立させることに重点を置いた。難波班の活動に参画し、難病パネル検査等の提唱を行った。
2)診断基準、重症度スケールの作成
 小児慢性特定疾患の診断基準との整合性や臨床試験のためのミトコンドリア肝症やミトコンドリア心筋症の個別病型の診断基準作成を協議し、保険適用の可能性を考え、遺伝学的検査による診断の確定化を入れた診断基準の改定を行った。
3)診療ガイドラインの作成
 診断マニュアル作成へと方針変換を行い、AMED研究班と分担作成を目指し、担当者を確定させるなど、2022年度の完成を目指し活動を継続した。
4)ミトコンドリア病の情報提供体制の整備とアウトリーチ活動
 ミトコンドリア学会と連携し、「ミトコンドリア病に詳しい医師のネットワーク」を構築する計画を継続した。
5)患者レジストリーの構築
 患者レジストリーについては、AMED難治性疾患実用化研究班(村山班)と連携して行うこととし、村山班では主に先天代謝異常症として小児(成人)患者レジストリーを構築した(J-MO Bank)。国立精神・神経医療研究センターにおけるミトコンドリア病患者レジストリーは、トランスレーショナル・メディカルセンターが実施している筋ジストロフィーの登録事業(Remudy)方式で、2019年10月に登録開始し、2021年3月までに10名の登録があった。
 レット症候群では、RTT患者データベースに登録されている165例の登録者のうち5年を経過した20例について、現況調査として再度登録用紙の提供を依頼した。その結果、15例の回答を得て解析を行なっている。QT延長症候群の検討のために、後方視的に18例のRTT患者の心電図検査結果を調査した。年齢は6-24歳(中央値13歳)、17例にMECP2遺伝子異常があり、1例は遺伝子検査未施行であった。QTc値は、361-435msec(平均値400msec、中央値398msec)で460msec以上のQT延長患者はいなかった。11件のRTTの遺伝子診断を行い、RTT診断基準合致9例はMECP2遺伝子に病的バリアントが同定された。RTT診断基準非合致2例は病的バリアントが同定されなかった。また、1例のFOXG1遺伝子異常と1例のCDKL5遺伝子異常の症例はRTT診断基準を満たさなかった。
現在まで保険収載となっている遺伝学的検査適用疾患とその基準を検討した。データ収集には、中央社会保険医療協議会資料等を参照した。また、各指定難病における遺伝学的検査の位置づけについては、難病情報センター(https://www.nanbyou.or.jp/)を、小児慢性特定疾病については小児慢性特定疾病情報センター(https://www.shouman.jp/)を参照した。

結論
 ミトコンドリア病では、当初計画通りに進んでいる。コロナ禍においてはアウトリーチ活動の施行が困難であった。
 レット症候群では、遺伝子データ、自然歴データを患者データベースに入れる活動が重要であると結論した。

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202011051Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,600,000円
(2)補助金確定額
15,588,000円
差引額 [(1)-(2)]
12,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,224,711円
人件費・謝金 4,057,144円
旅費 4,374円
その他 702,539円
間接経費 3,600,000円
合計 15,588,768円

備考

備考
自己資金として、768円を使っています。

公開日・更新日

公開日
2022-02-10
更新日
-