特発性造血障害に関する調査研究

文献情報

文献番号
202011050A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性造血障害に関する調査研究
課題番号
20FC1018
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
三谷 絹子(獨協医科大学 医学部 内科学(血液・腫瘍)講座)
研究分担者(所属機関)
  • 金倉 譲(住友病院)
  • 中尾 眞二(金沢大学大学院医学系研究科細胞移植学)
  • 石田 文宏(信州大学 医学部)
  • 赤司 浩一(国立大学法人九州大学 医学研究院)
  • 宮崎 泰司(国立大学法人長崎大学 原爆後障害医療研究所原爆・ヒバクシャ医療部門血液内科学研究分野(原研内科))
  • 高折 晃史(京都大学 医学研究科)
  • 黒川 峰夫(東京大学 医学部附属病院 血液・腫瘍内科)
  • 鈴木 隆浩(自治医科大学医学部 内科学講座血液学部門)
  • 神田 善伸(自治医科大学 医学部)
  • 真部 淳(国立大学法人 北海道大学大学院 医学研究院 小児科学教室)
  • 張替 秀郎(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 太田 晶子(埼玉医科大学医学部公衆衛生学)
  • 東條 有伸(東京大学 医科学研究所 先端医療研究センター 分子療法分野)
  • 井上 義一(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター, 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では再生不良性貧血、赤芽球癆、溶血性貧血、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄線維症及びランゲルハンス細胞組織球症を対象として、疫学・病因・病態・診断・治療・予後などの幅広い領域にわたって全国規模の調査研究を推進する。そのために各疾患において症例登録システムを充実させ患者の実態把握を行い、本邦の実態に即した治療法の開発・最適化に努める。さらに、京都大学 小川誠司教授と協力して、特発性造血障害疾患に対するゲノム解析研究を推進している。得られた知見は、診断基準の策定や「診療の参照ガイド」の改訂作業を通じて、広く臨床の場で利用できるようにする。
研究方法
再生不良性貧血: HLAクラスIアレル欠失(HLA(-))白血球の有無別に予後調査を行った。赤芽球癆:後天性慢性赤芽球癆の予後改善を目的として、前向き観察研究を継続した。 溶血性貧血:発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の遺伝子診断のための系統的な解析システムを構築した。MDS:再生不良性貧血とMDSの臨床像と治療成績の把握を目的とした前方視的症例登録・追跡調査研究とセントラルレビューを継続した。 また、低リスクMDSの治療方法の選択や予後についての現状把握のために、アンケートによる二次全国調査を実施した。骨髄線維症:前向き観察研究を継続した。ランゲルハンス細胞組織球症:日本血液学会認定研修施設を対象として、二次調査を実施した。
結果と考察
再生不良性貧血:中央値で51か月の観察期間中、HLA(-)白血球が検出された127例の中でMDS/AMLに進展した例は1例も見なかった。これに対して、HLA(-)白血球陰性の418例では17例がMDS/AMLに移行していた。赤芽球癆:令和2年11月に予後調査を実施した。現在調査票を回収し、結果を解析中である。溶血性貧血:現在までに5例の解析を行い、全例にPIGA遺伝子変異を認めた。PIGA遺伝子変異を複数認め、オリゴクローナルに存在している症例を確認した。 MDS:前方視的症例登録・追跡調査研究とセントラルレビューでは、登録症例数は400例を超え、このうち骨髄芽球が5 %未満の症例については末梢血標本及び骨髄標本のセントラルレビューを行っている。また、登録された症例について、毎年追跡調査を実施している。本年度は、本データベースの難病プラットフォームへの移行を進めるとともに、本研究を検体集積及び遺伝子診断研究も包含した研究へと発展させる準備を行なった。低リスクMDSに対する全国二次アンケート調査では、全国24施設から調査票(1065症例)を回収し、現在も調査票の回収・集計中である。骨髄線維症:17年間で782例の臨床情報を集積した。生存期間の中央値は4.0年で、3年生存率は60%である。主な死因は、感染症及び白血病への移行であった。国際的な予後スコアリングシステムであるDIPSS-Plus (Dynamic International Prognostic Scoring System for PMF-Plus)は、わが国の症例においても予後不良群の抽出が可能で、予後指標として有用であった。ランゲルハンス細胞組織球症:27施設より二次調査票を回収した104例中該当する89例について解析した結果、死亡6例(原病死3例)、性別は男性優位(61%)、発症時年齢はAYA世代47%、病型は多臓器型56%、単一臓器多発性(主に多発骨型)16%、病変部位の頻度は骨50%、肺30%、下垂体20%、リンパ節18%、皮膚15%、肝臓9%の順であった。
結論
再生不良性貧血:HLA(-)白血球は免疫抑制療法に対する反応良好因子であるだけでなく、予後良好因子であると考えられた。赤芽球癆:症例調査票の回収を継続し、生存例については予後調査を行う予定である。溶血性貧血:PNHの責任遺伝子解析スクリーニングシステムを構築した。引き続き症例を蓄積し、新規遺伝子変異の関与の解析とPNHの病態解明に努める。 MDS:前方視的症例登録・追跡調査研究とセントラルレビューでは、難病プラットフォームへのデータ・研究の移行が進められている。低リスクMDSに対する全国二次調査は継続中である。骨髄線維症:わが国の原発性骨髄線維症780例の臨床情報を集積した。国際予後スコアリングシステムのDIPSS-Plusは、わが国の原発性骨髄線維症の予後予測に有用である。ランゲルハンス細胞組織球症:全国調査の結果貴重な臨床データが収集された。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2023-07-20

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202011050Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,200,000円
(2)補助金確定額
11,858,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,342,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,634,138円
人件費・謝金 499,780円
旅費 0円
その他 2,524,783円
間接経費 2,200,000円
合計 11,858,701円

備考

備考
自己資金 701円

公開日・更新日

公開日
2022-02-03
更新日
-