呼吸器系先天異常疾患の診療体制構築とデータベースおよび診療ガイドラインに基づいた医療水準向上に関する研究

文献情報

文献番号
202011049A
報告書区分
総括
研究課題名
呼吸器系先天異常疾患の診療体制構築とデータベースおよび診療ガイドラインに基づいた医療水準向上に関する研究
課題番号
20FC1017
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
臼井 規朗(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター 小児外科)
研究分担者(所属機関)
  • 永田 公二(九州大学 九州大学病院)
  • 早川 昌弘(国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学 医学部附属病院)
  • 奥山 宏臣(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 板倉 敦夫(順天堂大学 大学院医学研究科)
  • 照井 慶太(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
  • 甘利 昭一郎(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
  • 黒田 達夫(慶應義塾大学 医学部)
  • 広部 誠一(東京都立小児総合医療センター)
  • 渕本 康史(應義塾大学 医学部)
  • 松岡 健太郎(東京都立小児総合医療センター 検査科)
  • 野澤 久美子(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 放射線科)
  • 守本 倫子(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 感覚器・形態外科部 耳鼻咽喉科)
  • 前田 貢作(国立大学法人神戸大学 大学院医学研究科)
  • 肥沼 悟郎(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 器官病態系内科部呼吸器科)
  • 二藤 隆春(埼玉医科大学・総合医療センター 耳鼻咽喉科)
  • 藤野 明浩(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 臓器・運動器病態外科部外科)
  • 小関 道夫(国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学医学部附属病院)
  • 平林 健(国立大学法人 弘前大学 医学部附属病院)
  • 渡邉 航太(慶應義塾大学 医学部)
  • 中島 宏彰(国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学 医学部附属病院)
  • 小谷 俊明(聖隷佐倉市民病院 整形外科)
  • 鈴木 哲平(国立病院機構神戸医療センター リハビリテーション科)
  • 山口 徹(地方独立行政法人福岡市立病院機構福岡市立こども病院 整形・脊椎外科)
  • 佐藤 泰憲(千葉大学大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、呼吸器系の先天異常疾患である先天性横隔膜ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患、気道狭窄、頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症、肋骨異常を伴う先天性側弯症について、学会や研究会と連携しながら診療ガイドラインを整備し、長期的なフォローアップ体制を構築して小児から成人への移行期医療を支援するとともに、AMED研究班や難病拠点病院、患者会などと連携して研究を推進し、患者のQOL向上に資する適切な診療体制を構築することである。
研究方法
呼吸器系の先天異常疾患である5疾患は、研究の進捗程度がそれぞれ異なるため、疾患毎の責任者を中心に疾患グループに分かれて分科会を構成して研究活動を行った。先天性横隔膜ヘルニアについては、診療ガイドラインの改訂、症例登録制度を活用したエビデンスの創出、患者・家族会支援のためのアンケート調査を行った。先天性嚢胞性肺疾患については、診療ガイドラインの項目建てを作成してガイドライン第一稿に対する外部評価委員の評価を受けた。気道狭窄については、診療ガイドライン策定方法を見直して、新たにCQ文を策定し直した。頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症については、新たな臨床課題に対する症例調査を立案し、診療ガイドラインの改訂、シロリムス治験への協力を行った。肋骨異常を伴う先天性側弯症については、レジストリシステムを立ち上げて、症例登録やその解析を進めるとともに、診療ガイドラインのためのCQを作成した。
結果と考察
先天性横隔膜ヘルニアでは、診療ガイドライン改訂において産科領域の3つのCQを追加してSCOPEを確定した。現時点で文献の2次スクリーニングが完了した。症例登録システムには2020年3月現在までの1037例が登録された。これらを元に計7編の英文論文を執筆した。また、患者・家族会が5月に設立されたため、支援のためのアンケート調査を実施した。先天性嚢胞性肺疾患については、診療ガイドラインの第一稿を完成させ、外部評価委員からの評価に対して第一稿の修正作業を行った。気道狭窄については、「喉頭狭窄」「気管狭窄」について文献検索を行った。重複を除いて「喉頭狭窄」を1012件、「気管狭窄」を1257件を選定し、喉頭狭窄8個、気管狭窄9個のCQ文を確定した。頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症については、新たな重要臨床課題に対する3つの調査研究計画を立てた。また、診療ガイドライン改訂では4つのCQを担当した。また、国内で開発中のシロリムス顆粒剤の治験に協力した。肋骨異常を伴う先天性側弯症については、日本脊柱変形協会のレジストリーシステムを使用してレジストリシステムを立ち上げた。本システムに肋骨異常を伴う先天性側弯症321例の手術701件を登録した。これらのデータを用いて3編の英文論文を執筆した。また、診療ガイドラインのための21個のCQを確定した。
本研究では、呼吸器系の先天異常疾患として5つの疾患を対象としているが、これらはいずれも発症頻度の低い希少疾患である。かかる難治性希少疾患ではエビデンスレベルが高いRCT論文は極めて少なく、高いエビデンスレベルの論文を得ることは極めて困難である。そこで気道狭窄症に対する診療ガイドラインでは、EBMの考え方遵守をしつつも、現実的な診療の手引きとなるようCQの作成を行い、CQを解決することを目標にして文献検索を行った。また、希少疾患に関する診療ガイドラインでは、疾患概念や分類が未確立であるため、先天性嚢胞性肺疾患の外部評価委員から指摘があったように、異なる定義が存在する場合に学問的中立性をいかに担保するかを検討することが必要と考えられた。患者数が少ないことは患者・家族会との連携においても問題となるため、先天性横隔膜ヘルニア疾患グループでは、患者会に対するニーズ調査を実施した。一方、患者・家族から医師との繋がりを強く求められることもあり、頚部・胸部リンパ管腫疾患グループでは、ホームページ機能を拡充して、令和2年は新型コロナ感染のため中止となったものの、今後も引き続き市民公開シンポジウムを予定している。患者数が少ない難治性希少疾患では、患者のQOL向上に資する適切な診療体制を構築するため、今後とも患者の集約化や様々な工夫が必要と考えられた。
結論
本研究事業が対象とする呼吸器系の先天異常疾患、すなわち先天性横隔膜ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患、気道狭窄、頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症、肋骨異常を伴う先天性側弯症に対しては、今後さらなる症例の蓄積と科学的根拠を高めるための臨床研究の遂行によって、エビデンスレベルを高めるとともに、社会保障制度を充実させながら、患者・家族会との連携を図り、市民への啓蒙活動を継続しながら患者支援のための診療体制を確立することが重要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-07-28

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202011049Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,000,000円
(2)補助金確定額
12,446,000円
差引額 [(1)-(2)]
554,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,321,210円
人件費・謝金 872,642円
旅費 252,057円
その他 3,000,859円
間接経費 3,000,000円
合計 12,446,768円

備考

備考
自己資金768円

公開日・更新日

公開日
2022-02-08
更新日
-