もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)における難病の医療水準の向上や患者のQOL向上に資する研究

文献情報

文献番号
202011047A
報告書区分
総括
研究課題名
もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)における難病の医療水準の向上や患者のQOL向上に資する研究
課題番号
20FC1015
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
宮本 享(国立大学法人京都大学 医学研究科 脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 冨永 悌二(東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座神経外科学分野)
  • 黒田 敏(富山大学 大学院医学薬学研究部(医学))
  • 高橋 淳(近畿大学医学部)
  • 高木 康志(徳島大学大学院医歯薬学研究部)
  • 岩間 亨(岐阜大学 脳神経外科)
  • 数又 研(北海道大学北海道大学病院脳神経外科)
  • 片岡 大治(国立循環器病研究センター 脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,923,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)における難病の医療水準の向上やQOL向上に資する研究」は、[1]診断基準・重症度基準の改訂、[2]もやもや病認定の地域格差是正、[3]診療実態把握、[4]病態解明を主な目的とする。また、本研究班を構成する研究者により、現在、複数の多施設共同臨床研究が実施されている。令和2年度は、3年計画の初年目に当たり、[1]診断基準の改訂、[2]AMEDと連携した、構造化電子カルテ情報自動抽出アプリケーションを用いた疾患レジストリ構築の準備、[3]臨床上重要性が高い事項に対する科学的根拠創出を目指した多施設共同研究の取りまとめと支援を目的とした。
研究方法
もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)の診断、治療に関する政策研究課題を達成するため、重点課題と複数の多施設共同研究支援を効率的に実施、総括するために、2度の班員全体会議を開催した。そのほかに、各作業グループを組織し、その活動を総括支援した。
結果と考察
[1]診断基準の改訂
これまでの診断基準は2015年に改訂されたものであり、その後の知見の積み重ねにより現状にそぐわない部分が生じたため、改訂した。主な改定点は、「片側例」の明記・「類もやもや病」の整理・MRI診断基準の改訂、の3点である。本改訂版診断基準は、日本脳卒中の外科学会・日本脳卒中学会・日本脳神経外科学会の関連3学会より承認を受けた。

[2]構造化電子カルテ情報自動抽出アプリケーションを用いた疾患レジストリ構築
あらゆる年齢層・発症様式の患者での診療実態と長期治療成績を明らかにするためには、多施設におけるリアルワールドデータ(RWD)の集約が必要であるが、電子カルテベンダーの異なる多施設からのRWD集約は、医療現場の負担が大きく実現困難であった。そこで、京都大学腫瘍内科学武藤教授が開発したCyberOncology®システムを応用し、電子カルテ上の構造化データを電子カルテベンダーによらず自動抽出することで、医療現場負担の少ないもやもや病レジストリ構築を計画・準備した。本研究計画は令和3年度AMED難治性疾患実用化研究事業に採択され、令和3年度より実施予定である。

[3]臨床上重要性が高い事項に対する科学的根拠創出を目指した多施設共同研究の取りまとめと支援
1. 無症候性もやもや病の新たな多施設共同研究(AMORE)
脱落例(7例)を除く102例の5年間の経過観察を完遂し、18例で22回の脳血管イベントが発生した。その内訳は脳卒中7例(脳出血6例、TIA→脳梗塞1例)、TIA 10例13イベント、病期進行2例であった。画像判定会議の後、結果解析予定である。
2. もやもや病における高次脳機能障害に関する検討COSMO-JAPAN study
高次脳機能障害を有する36例の解析により、前頭葉内側面に有意なIMZ-SPECT集積低下が認められ、高次脳機能障害例の放射線学的特徴が明らかになった。
3.片側性もやもや病の進行と遺伝的要因に関する患者登録研究 (SUPRA Japan Registry)
RNF213遺伝子のR4810K変異が、片側もやもや病の両側進展の独立危険因子であることが示され、RNF213遺伝子の臨床的重要性が示された。
4.脈絡叢型側副路を有するもやもや病の多施設共同登録研究(Moyamoya P-ChoC Registry)
近年、脈絡叢型側副路(choroidal anastomosis)が出血ハイリスク血管として注目されつつある。本研究はchoroidal anastomosisを有する非出血もやもや病症例の予後と治療方針の解明を目的とする観察研究であり、現在20例24半球の登録がなされている。
5. 60歳以上の高齢発症もやもや病に関する多施設共同調査(MODEST)
高齢者のもやもや病患者(60歳以上)の自然歴、治療合併症を検討するMODEST研究は現在患者登録・経過観察を継続しているが、8例でフォローアップ中にエンドポイント(脳出血が4例、脳梗塞が3例、副次的評価項目における死亡が1例)を認めた。
結論
もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)における難病の医療水準の向上やQOL向上に資する研究の研究成果について総括した。関連学会やAMEDとの連携を行いながら、もやもや病の病態解明や診療エビデンス構築を推進するとともに、各研究から得られた成果を政策研究に反映させることを目指す。

公開日・更新日

公開日
2021-07-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202011047Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,999,000円
(2)補助金確定額
8,999,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,010,992円
人件費・謝金 0円
旅費 32,920円
その他 1,880,327円
間接経費 2,076,000円
合計 9,000,239円

備考

備考
自己資金より1239円を支出したため

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-12-07