文献情報
文献番号
199700432A
報告書区分
総括
研究課題名
農薬の低濃度暴露による影響に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
黒川 雄二(国立薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
- 白井智之(名古屋市立大学)
- 澤田純一(国立医薬品食品衛生研究所)
- 江崎孝三郎(大阪府立大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 残留農薬安全対策総合調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
25,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
残留農薬の安全性問題は,食品衛生の上で消費者の最も関心の高いかつ不安の大きい事項である.消費者の関心・不安に対処していくためには,食品衛生法に基づく規制の充実を図ることが第一であるが,その規制の科学的根拠となった安全性評価について,多方面から実施する必要がある.その目的に沿って,これまで評価の難しかった分解物・代謝物について調査研究を進めてきたところである.昨年度からは,特に農薬の低濃度曝露による影響を重視して,本研究班では,発がん性,変異原性,免疫毒性,神経毒性及び催奇形性等に関する以下の如き研究・調査を実施した。
研究方法
?(a)昨年度開発したmutMST欠損サルモネラ株および大腸菌のmutM欠損株を用いて,paraquat, diquatをはじめ各種の環境化学物質の変異原性を検索する.(b)ATP受容体のcDNAクローンをアフリカツメガエル卵母細胞あるいは哺乳動物細胞に発現させ,この実験系を用いて,内因性生理活性物質(セロトニンおよびアデノシン)のATP誘発反応制御作用のメカニズムを明らかにする。(C)JMPRの評価結果についてADIの基礎となったデータについてNO(A)EL、エンドポイント、不確実性係数の解析を行う。曝露レベルと、JMPRのADIを組み合わせた時に、得られる結論の不確実性について検討する。欧州連合で開発し、本年リリースされたリスク評価モデル、EUSESの検証を行う。(黒川主任研究者)。?動物はF344雄ラット6週令を用い、diethylnitrosamine (DEN)を200mg/kg,b.w.にて1回腹腔内投与する。その2週間後より、6週間にわたって農薬を種々の濃度で投与する。農薬の投与開始1週目に2/3の肝部分切除を行う。実験終了後肝に発生する前がん病変であるSGT-P陽性細胞巣を定量的に解析し、農薬の発がん性の評価をする。(白井分担研究者)。?アレルギーモデル系の検討。モルモットを卵白アルブミンにより感作し,ASA, PCA 又はアレルギー性結膜炎の惹起を行うモデル系を確立する.マウスを卵白アルブミンにより感作し,耳介の皮膚血管透過性の亢進をパラメータとする評価法を確立する.ラットを卵白アルブミンにより感作し,PCA, ASAの至適条件を検討する.培養細胞を用いる即時型アレルギーのインビトロモデルを作製する(澤田分担研究者).?低濃度暴露の影響の評価系の確立。種々のモデル系を利用して,低濃度の有機リン酸系農薬等の暴露の影響を検討する.発育鶏卵48時間の条件で、ビタミンA処置を行って現れる変化を観察する。処置は鶏卵に穴をあけ、媒体ゾルに補足させた剤を胚近くの膜上に置く。形態、mRNAレベルでの変化を探索する。卵での背景の農薬移行について外注してデータを得る(江崎分担研究者)。
結果と考察
?(a)上記菌株はt-butylhydroperoxide、phenazinemethosulfate、formaldehyde等に感受性を示したが、paraquat、diquatの変異原性は検出されなかった。酸化的DNA損傷の修復に関する遺伝子は他にも多数知られている、これらの変異株を作製しての改良を加えることが今後の検討課題である。(b)ATP受容体活性は生体内イオンZN2+や農作物中にも存在しうる環境汚染物質Cd2+などにより増強作用を受けることが明かとなった。これから実験的に予測する場合には、イオン濃度等への影響なども考慮し複眼的に検討しなければならない。(C)評価情報データベースと分析結果は、安全性安全性評価の信頼性を向上させる一助となりうるであろう。?ラット中期発がん性試験を用いて有機リン系農薬であるDichlorvos(DDVP)の肝の前がん病変発生に及ぼす影響を検討した結果発がん性に対しての影響は見られなかった。?ラットでは、アジュバンドとして、FACを用いた場合の法が能動性全身アナフィラキシー反応
、IgE交代価の上昇が顕著であった。また、有機リン系農薬フェニトロチオンのアレルギー促進活性は、マウスASA反応、in vitroの培養細胞を用いた研究からは、認められなかった。?鶏卵の発育に及ぼす孵卵条件の検討;白色レグホン種の発育鶏卵を用いて農薬の低濃度暴露の影響が検出できるか否かについて,エストロン投与による基礎的な検討を行った.48時間孵卵の条件で,1.0 および0.1ng/g 卵重の投与量で神経管の蛇行などの異常発生,0.01ng/g卵重の投与量で体節数の減少が見られた.10ppt レベルでのエストロゲン作用が検出できる可能性が示された.
、IgE交代価の上昇が顕著であった。また、有機リン系農薬フェニトロチオンのアレルギー促進活性は、マウスASA反応、in vitroの培養細胞を用いた研究からは、認められなかった。?鶏卵の発育に及ぼす孵卵条件の検討;白色レグホン種の発育鶏卵を用いて農薬の低濃度暴露の影響が検出できるか否かについて,エストロン投与による基礎的な検討を行った.48時間孵卵の条件で,1.0 および0.1ng/g 卵重の投与量で神経管の蛇行などの異常発生,0.01ng/g卵重の投与量で体節数の減少が見られた.10ppt レベルでのエストロゲン作用が検出できる可能性が示された.
結論
発がん性に関しては,ラット肝中期発がん性試験法により有機リン系農薬であるDichlorvos (DDVP)の肝の前がん病変発生に及ぼす影響を検討した.変異原性に関しては,農薬の paraquat, diquat などを含む活性酸素生成物質12種の変異原性を検索した.免疫毒性に関しては,アレルギーモデル系を作成し農薬の低濃度暴露の影響を検討した.神経毒性に関しては,神経系モデル細胞を用いて,複合農薬暴露と神経毒性の観点から検討した.催奇形性に関しては,農薬の低濃度暴露の影響が検出できるか否かについて,エストロン投与による基礎的な検討を行った.さらに,農薬の安全性評価における不確実性要因の解析の検討も行った.
公開日・更新日
公開日
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更新日
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