特発性大腿骨頭壊死症の医療水準及び患者QOL向上に資する大規模多施設研究

文献情報

文献番号
202011042A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性大腿骨頭壊死症の医療水準及び患者QOL向上に資する大規模多施設研究
課題番号
20FC1010
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
菅野 伸彦(大阪大学 大学院医学系研究科運動器医工学治療学)
研究分担者(所属機関)
  • 久保 俊一(京都地域医療学際研究所)
  • 馬渡 正明(佐賀大学医学部)
  • 山本 謙吾(東京医科大学 整形外科)
  • 帖佐 悦男(宮崎大学 医学部 感覚運動医学講座 整形外科学分野)
  • 須藤 啓広(三重大学大学院医学系研究科臨床医学系講座 運動器外科学・腫瘍集学治療学)
  • 田中 栄(東京大学医学部附属病院 整形外科)
  • 尾崎 誠(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 医療科学専攻展開医療科学講座 整形外科学)
  • 伊藤 浩(旭川医科大学 整形外科学講座)
  • 高木 理彰(山形大学医学部)
  • 松田 秀一(京都大学大学院医学研究科整形外科)
  • 秋山 治彦(岐阜大学医学研究科整形外科学)
  • 名越 智(札幌医科大学 生体工学・運動器治療開発講座)
  • 小林 千益(諏訪赤十字病院 整形外科)
  • 福島 若葉(公立大学法人大阪 大阪市立大学 大学院医学研究科公衆衛生学)
  • 稲葉 裕(横浜市立大学 附属病院)
  • 山本 卓明(福岡大学医学部整形外科)
  • 中島 康晴(九州大学大学院医学研究院整形外科)
  • 神野 哲也(獨協医科大学埼玉医療センター 整形外科)
  • 兼氏 歩(金沢医科大学 医学部)
  • 坂井 孝司(山口大学大学院医学系研究科 整形外科学)
  • 三島 初(筑波大学医学医療系 整形外科)
  • 加畑 多文(金沢大学附属病院リハビリテーション部)
  • 上杉 裕子(神戸大学大学院 保健学研究科 国際保健学領域)
  • 三木 秀宣(国立病院機構 大阪医療センター 整形外科)
  • 関 泰輔(名古屋大学 医学部 整形外科)
  • 仲宗根 哲(琉球大学医学部 附属病院 整形外科)
  • 高橋 大介(北海道大学病院 整形外科)
  • 安藤 渉(大阪大学大学院 医学系研究科 運動器医工学治療学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特発性大腿骨頭壊死症(ONFH)の発生機序は不明で治療は長期間に及ぶことが多い。好発年齢が青・壮年期と勤労世代であるが、股関節障害による歩行障害・生活機能低下、就労制限は社会経済学的に大きな損失となる。本疾患の疫学研究により病因病態・治療・就労状況を明らかにでき、対策を検討する上で重要である。本研究は、費用対効果の高い治療体系の確立と根治的な骨壊死再生治療開発の礎として、1)特発性大腿骨頭壊死症(ONFH)に対する疾患データベースである全国規模の定点モニタリング、人工物置換登録、臨床調査個人票による疫学調査とその解析 2)診断基準の検証と改訂 3)病型・病期分類に基づくQOL評価・就労調査 4)策定した診療ガイドラインの国内外への普及と改訂に向け残された課題の検討を目的とした。
研究方法
1) 大規模データベース(定点モニタリング、人工物置換登録調査、臨床調査個人票)を活用した疫学研究
 全国の研究分担者から収集される疫学データの大量・確実な取得の体制を整える。これまで45年にわたり継続してきた世界最大の新患・手術症例データベース(令和元年12月時点; 新患:5938症例、手術:5274症例)である定点モニタリングを継続して行い、令和3年度中旬以降には記述疫学特性の経年変化の解析・検討を行う。これまで20年以上継続してきた人工物置換術の登録監視システムによる調査を拡大・継続する。このデータを解析することで人工物置換術の長期成績を明らかとし、さらに、人工物の合併症と耐用性および危険因子を明らかにする。また、臨床調査個人票を利用したデータ集積システムを構築し、令和3年度以降には収集データによる疫学像と定点モニタリングの疫学像を比較検討し、多角的な患者像比較を行う。
2) 精度の高い診断基準の検証と標準化
 病期初期の診断状況、診断基準の問題点を明らかにし、早期の正確な診断項目(検査法・検査所見・診断法)の検証を行う。さらに、令和3年度以降においては、鑑別疾患の混入状況を調査し、疫学因子との対比し、診断基準の検証と標準化を行う。
3) 病型・病期分類に基づくQOL評価と就労状態評価
病期分類、病型分類の見直しに向け情報収集を行い、QOL評価(JHEQ, OHS, SF12) と画像評価に基づく病型・病期分類の妥当性を検証する。また、非手術例、手術例における就労状態の調査を行い、現在の病型・病期分類に基づいた就労状態との関連を評価する。
4) 診療ガイドラインの普及と検証
 2019年に発刊された診療ガイドラインを国内のみならず、ガイドラインの英文化を行い、一般整形外科医に対して世界に広く普及すると共にONFHに関する情報収集を行う。
結果と考察
ONFH定点モニタリングシステムに新患症例は2018~2020年の3年間に確定診断された449症例734関節、手術症例は2018~2020年の3年間に手術を施行された484症例552関節を分析対象とした。新患症例の確定診断時年齢(10歳毎)は、対象者全員では40~50歳代、男性では40歳代、女性では50歳代の割合が高かった。ステロイド全身投与歴「あり」と報告された者は276症例(61%)であり、投与対象疾患は全身性エリテマトーデス(SLE)が最多であった(33症例、12%)。しかし、SLEが突出して多いという状況ではなく、背景疾患の多様化が示唆された。手術症例の手術時年齢(10歳毎)は、対象者全員では50歳代、男性では50歳代、女性では60歳代の割合が高かった。術直前の病型はType C-2が多く(68%)、病期はStage 3Aと3Bが多かった(それぞれ34%と32%)。術式の内訳は、人工関節置換術が433関節(78%)と最も多く、骨切り術が82関節(15%)と続いた。
 THAと大腿骨骨切り(FO)術における術前後の経時的QOLの推移を調査した。THA群は対象者の年齢幅が大きいため年齢により2分し、49歳以下をyTHA群とし、50歳以上をoTHA群とした。yTHA群、oTHA 群、FO群とも術前から術後2年においてQOLは有意に改善していた。yTHA群は術前から術後6カ月でほとんどの項目が有意に改善していたのに対し、 oTHA群やFO群では術後1年で有意に改善している項目があり、その回復過程の違いが示された。
 令和元年10月に発刊された「特発性大腿骨頭壊死症の診療ガイドライン2019」を国際的にも普及するため、英文化を行い、令和3年1月にJournal of Orthopaedic Scienceに発表した。また、問題点を検証するため、班員から問題点等の意見を収取し、最新の関連した論文を整理し診療ガイドライン改訂に向けた準備を行った。
結論
ONFHの疾患特性変化を明らかとするために、今後も継続的調査が必要である。

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
2021-12-14

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
2022-01-24

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202011042Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,060,000円
(2)補助金確定額
8,060,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,063,472円
人件費・謝金 0円
旅費 1,134,750円
その他 2,001,778円
間接経費 1,860,000円
合計 8,060,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
2021-12-14