軟骨炎症性疾患の診断と治療体系の確立

文献情報

文献番号
202011041A
報告書区分
総括
研究課題名
軟骨炎症性疾患の診断と治療体系の確立
課題番号
20FC1009
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 登(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 竹内 勤(慶應義塾大学 医学部)
  • 天野 宏一(埼玉医科大学 医学部)
  • 宮村 知也(独立行政法人国立病院機構 九州医療センター)
  • 村上 孝作(京都大学医学部附属病院)
  • 東 直人(兵庫医科大学 医学部 )
  • 田中 良哉(産業医科大学 医学部)
  • 船内 正憲(近畿大学 医学部)
  • 武井 正美(日本大学 医学部)
  • 佐藤 正人(東海大学 医学部)
  • 森田 貴義(大阪大学医学部附属病院)
  • 峯下 昌道(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 川畑 仁人(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 仁木 久照(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 遊道 和雄(聖マリアンナ医科大学 大学院医学研究科)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 清水 潤(聖マリアンナ医科大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
軟骨炎症性疾患は希少性ゆえに本邦における疫学臨床情報は不十分であり、治療指針も作成されていない。多くの診療科が関わるため、臨床医の認知度も低く診断されない症例も多い。RPでは臓器病変を持つ患者は予後不良であり診断、治療法の標準化と広報は急務である。本研究は軟骨炎症性疾患における診断・治療のガイドラインを作成することを第一の目的とする。
平成21年度に実施した第1回全国疫学調査のデータをもとに、我々はRP重症度分類(案)の構築を試み、H27-31年度の日本リウマチ学会で公表した。加えて本邦の呼吸器合併症、中枢神経合併症、循環器合併症、血液疾患合併症の現状を解析して我々の重症度分類(案)の有用性を確認した。さらに我々は同データより耳介軟骨炎と気道軟骨炎が独立して存在する、すなわち共存しにくいことを発見した。耳介軟骨炎には中枢神経障害、気道軟骨炎には心血管疾患を多く合併していた。
これらの研究結果をもとに我々は、RP患者の現状の推移をみるため令和元年度に2回目のRP全国疫学調査を実施した。約10年間の変化を観察することとなるが、最終的に190名のデータを集計・解析することができた。
さらに、その他の軟骨炎症性疾患として希少性の高いティーツェ症候群と離断性骨軟骨炎を選択し、これらの本邦での臨床像を明らかにすることを目的として、RP疫学調査に合わせて初めての全国疫学調査を行った。
研究方法
i)  第2回RP全国疫学調査の実施
令和元年度に、全国の主要5,118施設に第1回疫学調査と同じ第1次調査用紙を郵送することで、第2回全国疫学調査を開始した。
第2次調査用紙(第1回全国疫学調査と同じ)は377施設に郵送し、回収した。
ii)  厚生労働省からの指定難病患者データ(臨床調査個人票データ)の提供
平成27年に施行された「難病の患者に対する医療等に関する法律」によって、難病患者のデータベースを構築し、それを有効活用する体制を整備することが開始された
それを受けて、令和2年度に厚生労働省より指定難病患者データが配布された。疫学調査同様の解析を実施した。
iii)  Tietze症候群と離断性骨軟骨炎の疫学調査
第1次調査は、RP全国疫学調査に合わせて実施された。第2次調査用紙はTietze症候群においては全国138施設へ、離断性骨軟骨炎は258施設に郵送した。
結果と考察
i) 第2回RP全国疫学調査の実施
第2回RP全国疫学調査では、190名のRP患者のデータを解析することが可能であった。患者背景においては、第2回疫学調査の罹病期間が第1回調査に比較して有意に長いことが判明したが、その他の所見は認められなかった。侵襲臓器では、気道、皮膚、神経の侵襲頻度が有意差をもって低下していることが判明した。逆に、有意差は認められないものの、耳介、関節、心血管等は増加傾向にあった。気道合併症は予後に直結するため、死亡率を比較すると有意差をもって減少していることが判明した。
治療においては、有意差をもって、免疫抑制剤および抗体医薬品の使用頻度が上昇していた。個別には、メソトレキサート、カルシニューリン阻害剤、インフリキシマブの使用頻度の上昇に有意差がみられる。逆に外科的処置の施行頻度が、有意に減少していた。
適時適切な加療が、予後の改善に連結しているものと推察している。
ii)  厚生労働省からの指定難病患者データ(臨床調査個人票データ)の提供
359例の情報を収集し、現在解析中である。こちらも、第1回全国疫学調査との比較では、患者背景において罹病期間が有意差をもって臨床調査個人票データの方が短いという結果であったが、全般的には双方の患者背景は類似していることが判明した。母集団の重複が推察される。解析を継続する。
iii) Tietze症候群と離断性骨軟骨炎の疫学調査
iii)-1 Tietze症候群
現在までに、22例のデータを解析した。平均発症年齢は40.6才で、男女比は0.57:1であった。50%の症例にMRIが施行されていて、肋軟骨移行部の浮腫・炎症像が確認されている。ほぼ全例にNSAIDsが処方されていたが、2例にステロイド剤、1例にプレガバリンが投与されていた。
iii)-2 離断性骨軟骨炎
現在までに、29例のデータを解析した。平均発症年齢は24.9才で、男女比は1.8:1。8割の症例は保存的に治療が行われていた。外科的には、3例に骨穿孔術、1例に骨軟骨移植術、1例に人工関節置換術(大腿骨)が施行されていた。
今回の調査にて、RP以上に希少な疾患群であることが判明した。さらに、その中の一部ということになるが、重症例が存在している。研究の継続が必要であると考察する。
結論
さらに解析を進め、軟骨炎症性3疾患の早期の診断・治療ガイドラインの確立を目指す。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2022-04-18

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202011041Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,680,000円
(2)補助金確定額
4,680,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,291,647円
人件費・謝金 961,011円
旅費 0円
その他 347,342円
間接経費 1,080,000円
合計 4,680,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-12-03
更新日
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