中性脂肪蓄積心筋血管症の診療体制の構築

文献情報

文献番号
202011040A
報告書区分
総括
研究課題名
中性脂肪蓄積心筋血管症の診療体制の構築
課題番号
20FC1008
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
平野 賢一(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 天野 哲也(学校法人愛知医科大学 医学部)
  • 安斉 俊久(国立大学法人北海道大学 大学院医学研究院)
  • 池田 善彦(国立研究開発法人国立循環器病研究センター病院 病理部)
  • 磯 博康(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 井手 友美(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
  • 伊藤 智範(学校法人岩手医科大学 大学院医学研究科)
  • 稲葉 亨(京都府公立大学法人京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 奥村 貴裕(国立大学法人 東海国立大学機構 名古屋大学医学部附属病院)
  • 梶波 康二(学校法人金沢医科大学 医学部)
  • 小澤 純二(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 小林 邦久(学校法人福岡大学 筑紫病院)
  • 坂田 泰彦(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 臨床研究開発部)
  • 杉村 宏一郎(学校法人国際医療福祉大学 医学部)
  • 長澤 康行(学校法人兵庫医科大学 医学部)
  • 羽尾 裕之(学校法人日本大学 医学部)
  • 東 将浩(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 職員研修部)
  • 藤本 進一郎(学校法人順天堂大学 大学院医学研究科)
  • 宮内 秀行(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
  • 吉田 博(学校法人慈恵大学東京慈恵会医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
2,308,000円
研究者交替、所属機関変更
・研究分担者交替 島田和典(令和2年4月1日~令和2年9月30日) →藤本進一郎(令和2年10月1日以降) ・所属機関異動 研究分担者 坂田泰彦 東北大学(令和2年4月1日~令和2年12月31日) →国立循環器病研究センター(令和3年1月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)は、研究代表者が所属機関附属病院の重症心不全患者より発見した新規疾患概念である(Hirano K, et al. N Engl J Med. 2008)。細胞内の中性脂肪(TG)分解障害の結果、心筋細胞・血管平滑筋細胞・多型核白血球にTGが蓄積し、治療抵抗性の心不全・狭心症等を呈する。2009年-2014年は厚生労働省、2015-2018年は日本医療研究開発機構難治性疾患実用化研究事業として病態解明、診断法・治療法の開発が行われてきた。研究班では大阪大学で把握した25例のデータをもとに診断基準、重症度スコアを開発、診断の手引きを公開してきた。その後全国の施設でTGCVの診断がなされるようになってきた。また、TGCVの治療薬の開発も行い多施設共同プラセボ対照ランダム化比較試験を含む3度の医師主導治験、臨床研究を成功させProof of conceptを得た。開発した治療薬CNT-01は、2020年6月、厚生労働省より先駆け審査医薬品指定品目となった。現在、国内製薬企業がPivotal治験を実施する準備をしている。またTGCV患者会が立ち上がり、早期の指定難病化を求めている。これらの状況を踏まえ、本研究では、診断基準・重症度分類の策定、診断の手引きの策定、これまで構築してきた研究ネットワークをさらに発展させ、本症の診療体制を全国規模で構築することを目的とする。2年間の研究期間の各年度の目標は、初年度が診断基準、重症度スコア、診断手引きの検証、改訂、次年度が各地域に拠点を設けTGCV外来を立ち上げ診療体制を構築する。
研究方法
診断基準委員会(小林、坂田、池田、宮内、長澤、島田、中嶋、小澤、羽尾、天野、吉田)、重症度分類委員会(井手、中野、宮内、梶波、藤本)を組織して診断基準2020、重症度分類を策定した。定めた診断基準をもとに全国の分担研究者、研究協力者,に症例数、生死等について調査を依頼した。
(倫理面への配慮)各研究機関における倫理委員会の承認を得た。
結果と考察
1.診断基準2020
必須項目3個、大項目3個、参考所見2個からならTGCV診断基準2020を定め、Ann Nucl Cardiol誌に発表した。
1) 必須項目
i) 心筋BMIPPシンチグラフィにおける洗い出し率の低下 10%未満
ii) 心筋生検における心筋細胞内脂肪蓄積
iii) 心臓CT、MRスペクトロスコピーによる心筋脂肪蓄積
2) 大項目
i) 左室駆出率 40%未満
ii) びまん性冠動脈硬化
iii) 典型的Jordans異常
3) 参考所見
i) 糖尿病
ii) 血液透析
確定診断 Definite: 必須項目少なくとの1項目と大項目少なくとも1項目を満たす。
疑診 Probable: 必須項目を少なくとも1項目を満たす。
2.鑑別診断
1)心不全・冠動脈疾患を呈する循環器疾患
肥大型心筋症、拡張型心筋症、拡張相肥大型心筋症、不整脈源性右室心筋症。
以下の心筋疾患等、特に蓄積性代謝疾患との鑑別が必要である。
①アルコール性心疾患②神経・筋疾患に伴う心筋疾患③栄養性心疾患④代謝性疾患に伴う心筋疾患(Fabry病、Pompe病、Danon病、ミトコンドリア病、CD36欠損症など)⑤カルニチン欠乏症(薬剤性或いは透析関連)⑥糖尿病性心筋症⑦心外膜脂肪の蓄積
2)Jordans異常を呈する他の疾患
Neutral lipid storage disease with ichthyosis(NLSD-I)
カルニチンパルミトイルアシルトランスフェラーゼ欠損症
Neutral lipid storage disease with myopathy(NLSD-M)
3.重症度分類
軽症、中等症、重症の3段階からなる重症度分類を定めた。
4.症例数、生死等の調査
2020年12月現在、全国27施設から得られた情報では累積診断数は、336例、内58例が既に死亡してる。診断時の平均年齢は64才、死亡時の平均年齢は67才であった。
5.成果報告冊子2020年度版
TGCV成果報告冊子2020年度版を作成し、全国1000以上の施設に配布して啓発活動を行った。
6.考察
2012年から5年間実施したTGCVとのその類縁疾患に関する国際レジストリ調査において、TGCV患者の心症状の出現は、平均55才である。TGCV患者会からの情報では平均療養期間は10年である。上述の調査では、診断時平均は64才であり、死亡時平均は、67才であった。すなわち、TGCVにおいても他の希少難病と同様、診断遅延の問題があり、診断後は数年で死の転帰に至っている。本症のさらなる啓発、治療法開発とともに指定難病化による患者救済が必要であると判断する。
結論
TGCVは成人発症の重篤な心臓難病である。

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
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公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
2022-03-24

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202011040Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
3,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 76,285円
人件費・謝金 1,273,394円
旅費 32,480円
その他 925,841円
間接経費 692,000円
合計 3,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-12-09
更新日
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