多系統蛋白質症(MSP)患者の全国実態調査と診療体制構築に関する研究

文献情報

文献番号
202011038A
報告書区分
総括
研究課題名
多系統蛋白質症(MSP)患者の全国実態調査と診療体制構築に関する研究
課題番号
20FC1006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
山下 賢(熊本大学大学院生命科学研究部 脳神経内科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 青木 正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 神経内科)
  • 勝野 雅央(名古屋大学 大学院医学系研究科 神経内科)
  • 高橋 祐二(国立精神・神経医療研究センター・病院・神経内科)
  • 橋本 淳(国立病院機構 大阪南医療センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
2,310,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「骨パジェット病および前頭側頭型認知症を伴う封入体ミオパチー」は、骨格筋や骨、中枢神経障害を示す疾患として認識されてきた。しかし本疾患はそれらの症候に留まらず、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や末梢神経障害、パーキンソニズムなど多彩な神経症状も呈することから、2013年に多系統蛋白質症(multisystem proteinopathy: MSP)と称する疾患概念が提唱された。しかしMSPの疾患概念は国際的なコンセンサスに至っておらず、診断基準も策定されていないため、典型的症候に乏しい症例では診断に苦慮する。近年の分子遺伝学の進歩によってMSPの原因遺伝子(VCPやhnRNPA2B1、hnRNPA1、SQSTM1、MATR3)が同定され、治療を目指した病態研究が進展しているが、一方で正確な診断に基づく疫学や自然歴の情報を得ることが難しく、新規治療法を確立するために必要な臨床研究の実施が困難である。平成29〜30年度厚労省難治性疾患等政策研究事業「多系統蛋白質症(MSP)の疾患概念確立および診断基準作成、診療体制構築に関する研究」班において、我々は本邦におけるMSPの実態を解明する調査研究目的の臨床診断基準を策定した。
 本研究の目的は、学会承認を通して確定された診断基準に基づいて全国規模の疫学調査によりMSP患者の実態把握を行うとともに、適切な診断と治療の周知を目的とする「MSP診療の手引き」を作成することである。最終的には関連学会、医療従事者、患者および国民への啓発を通して、本疾患概念の国際的コンセンサスの獲得と指定難病への登録を目指す。
研究方法
1) 全国疫学調査によるMSP患者の実態把握
 診断カテゴリーでDefiniteあるいはProbable、Possibleに該当する症例の有無について、現在診療中および過去に診療した症例を含めて一次アンケート調査を郵送にて実施する。「有」と返信した神経内科専門医に対して、分担研究者と議論した調査項目(家族歴、合併症、筋生検、遺伝子診断結果、初発症状、中枢・末梢神経および骨格筋・骨症状の有無および発病年齢、現在のADL、呼吸や嚥下状態等)に関する二次アンケート調査を実施する。同意の得られた症例についてはデータベース化し、MSP患者レジストリとして経時的な変化を追跡調査する。
 調査内容の妥当性を検証した上で、これらの解析を通じて、本疾患の疫学・自然歴を解明し、臨床試験の基盤として指定難病データベースの運用に必要な臨床パラメーターを同定する。
2)「MSP診療の手引き」の作成
 良質かつ適切なMSP診療の確保のためには、診療ガイドラインによる診療の標準化が重要である。その前段階として、令和2年度に研究代表者(山下)および分担者(青木、勝野、髙橋、橋本)により本疾患の疫学や症状、診断、治療、病態研究、社会支援等に関する知見を収集・分析する。令和3年度に全国実態調査の解析結果を踏まえて、「MSP診療の手引き」の各項目を執筆する。編集後に日本神経学会での承認を得た上で発行、ウェブサイト掲載を進める。関連学会、医療従事者、患者および国民への啓発を通して、本疾患概念の国際的コンセンサスを得る。
3) MSP診療提供体制の構築と病態研究の基盤整備
 本疾患の診断には、筋病理や高次脳機能評価、画像解析などの臨床評価と共に、遺伝子解析が極めて重要である。令和2〜3年度に青木および勝野は次世代シークエンサーによるエクソームシークエンスを実施し、MSPが疑われる患者に対して効率的な遺伝学的診断体制を提供するとともに、症候の多様性や重症度・進行度に寄与する遺伝学的要因の解明や新規の原因遺伝子の同定を目指す。山下および青木、勝野、髙橋、橋本は筋病理や電気生理、画像診断等の専門的臨床診断体制を提供すると同時に、本患者由来のゲノム、筋生検組織、筋芽細胞、不死化リンパ球などの生体試料の収集を進め、本疾患のバイオバンクの拡充を行い、症例に基づいた病態研究の基盤整備を行う。将来的には各施設が保有する生体試料とリンクするレポジトリの構築へ展開する。
結果と考察
疫学調査の方法と項目について検討を重ねた上で、本邦におけるMSPの実態解明調査の一次および二次調査項目を確定した。さらに、MSPの病態を再現するマウスを用いた治療研究や、MSP症例の臨床病理学的解析、骨パジェット病患者でのリセドロネート高用量連日投与開始後の長期臨床像などの病態研究が進められた。
結論
本邦におけるMSPの実態を解明する調査研究目的の一次および二次調査項目を確定した。令和3年度中に全国規模の実態調査を行い、MSP患者の現状を把握する。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202011038Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
2,995,000円
差引額 [(1)-(2)]
5,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,764,169円
人件費・謝金 345,728円
旅費 0円
その他 195,222円
間接経費 690,000円
合計 2,995,119円

備考

備考
119円自己資金

公開日・更新日

公開日
2022-01-18
更新日
-