地理・時間情報を加味した突発的・集中的な健康危機事象の発生を早期発見するための統計手法に関する研究

文献情報

文献番号
200738030A
報告書区分
総括
研究課題名
地理・時間情報を加味した突発的・集中的な健康危機事象の発生を早期発見するための統計手法に関する研究
課題番号
H19-健危-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 邦彦(国立保健医療科学院 技術評価部)
研究分担者(所属機関)
  • 丹後 俊郎(国立保健医療科学院 技術評価部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域健康危機管理研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康危機事象の発生をいち早く検出するためのサーベイランスにおいて集積性の検定という統計手法が利用できる。そこで本研究では我々の提案するflexible scan法をサーベイランスに適用するため時間変化を考慮した手法への拡張を行う。またその研究を通してより精度よく事象を同定できる統計的な手法の改良を検討し、さらに実際のサーベイランスへの適用について検討を行う。
研究方法
まず平面における集積性の検定手法flexible scan法をサーベイランスのために時間変化も考慮したものに拡張したflexible space-time scan法を提案し、米国のサーベイランスデータおよびシミュレーションデータを用いてSaTScanで用いられているcylindrical space-time scan法と精度の比較を行った。さらに北九州市内小学校の児童欠席数のデータに適用して実際のサーベイランスにおける解析のパイロットスタディを試み、その結果をもとに更なる方法の改良について検討を行った。
結果と考察
cylindrical scan法との比較においては、どちらの手法もほぼ同じような集積を検出していたが、一般にアウトブレークの最も初期段階では小さい地域での発生が考えられ、その意味においてはcylindrical scan法の検出力が多少高くなることが示された。しかし、一度起きてしまい広がってきたアウトブレークを同定するためには、flexible space-time scan法がその地域をうまく同定できる様子が、power distributionなどの評価法によって明らかにされた。また北九州小学校欠席数のサーベイランスに関しては、11月中旬以降に有意な集積を検出した。この結果は北九州市内の定点観測による感染性腸炎の結果とうまく符合しており、この方法によって異常が起きたときに、その時点とその地域を同時に同定できる本方法によるサーベインランス解析の有効性が示唆された。しかし上記の研究を通して、地域形状の自由度が増すと本来同定すべきでない地域を誤って同定してしまう傾向があるなどの新たな問題点があることがわかった。
結論
本研究でflexible space-time scan法による解析は行え、またその有効性も示された。しかし研究途中において明らかになった問題点はサーベイランスにとって大変重要な問題であり、これを解決するため更なる統計量の改良の検討が必要であり、理論的側面、実際的側面から様々な検討を行い、より適切な手法を提案することが重要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-14
更新日
-