文献情報
文献番号
199700420A
報告書区分
総括
研究課題名
熱媒体の人体影響とその治療法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
吉村 英敏(中村学園大学家政学部食物栄養学科教授)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 熱媒体人体影響調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
39,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1968年西日本一帯に発生したカネミ油症は、大量のPCB製品を混入したライスオイルの摂取が原因であった。その発症にはPCBよりも微量混在した多塩素化ジベンゾフラン(PCDF)が主役を果たしたと考えられている。一方、この数年来ダイオキシン類の環境汚染問題も国民の重大関心事となっており、その健康影響を考えるに当たっては、それと軌を一にする油症の知見が必須となる。このような背景において、本研究の第一目的は、当然治療法の確立ではあるが、日常の食生活におけるダイオキシン類の摂取状況の把握も必要である。さらにダイオキシン類による明確な被害者たる油症患者の病像を経年的に追跡し、その詳細を明らかにしておくべきである。またPCDF等の毒性発現機作に多面的にメスを入れ、ひいては治療法開発の端緒を見出すための基礎研究の推進も引き続き重要である。
研究方法
1)治療法の開発 現時点においてなお患者体内に残留するPCDF等の、小腸、および皮膚を介する排泄促進について、引き続き検討した。
2)病像の追跡と健康管理 油症患者に対する毎年の定期検診を慎重に実施すると共に、そのデータのコンピュータ入力を行った。また、わが国および台湾の油症患者の血中、皮脂中のダイオキシン類濃度の分析を行った。
3)基礎研究 ヒトおよびラット等によるPCB、PCDF並びにそれらの代謝物の毒性に関する多面的研究を実施した。
4)ダイオキシン問題 ダイオキシン類摂取の主たる経路である食品のうち、果実、野菜類についての汚染度を調査した。
2)病像の追跡と健康管理 油症患者に対する毎年の定期検診を慎重に実施すると共に、そのデータのコンピュータ入力を行った。また、わが国および台湾の油症患者の血中、皮脂中のダイオキシン類濃度の分析を行った。
3)基礎研究 ヒトおよびラット等によるPCB、PCDF並びにそれらの代謝物の毒性に関する多面的研究を実施した。
4)ダイオキシン問題 ダイオキシン類摂取の主たる経路である食品のうち、果実、野菜類についての汚染度を調査した。
結果と考察
結果=1)治療法の開発
一斉検診の結果は血中ダイオキシン類の若干の減少傾向が認められたが、排泄促進に関する新たな方法は開発されていない。 2)病像の追跡と健康管理
油症発生以来三十年を経過し、患者の皮膚科、眼科、歯科領域の諸症状には、一応の改善傾向が認められたが、慢性的障害の一つの可性として、免疫機能障害が考えられた。PCB等の摂取と肝ガン発生との関連性については引き続いての観察が必要と思われる。
3)基礎研究 PCB代謝物としての水酸化体やメチルスルホン体のPCB毒性発現への寄与の可能性が検討された。また、高毒性の2,3,4,3',4'ーpentachlorobiphenyl ( PenCB)を用い、ラット肝ミクロソームあるいはサイトソールで顕著に増減するタンパク質の同定とその特性が考察された。それらのタンパク質として、プレアルブミン、ストレス応答タンパク質HSP70およびHSP9、カルボニックアンヒドラーゼ、セレン結合性タパク質が明らかにされた。PCBは、1-ニトロピレン誘発マウス肺腫瘍のプロモーターとして作用することも示唆された。
4)ダイオキシン問題 油症原因物質たるPCBやPCDFは、現在、高毒性の環境汚染物質として注目されているダイオキシン類に他ならず、これらは主として食品を介して健常者の体内にも侵入している。今回、果実、野菜類について、これらの汚染実態の調査を実施した。その結果、緑色野菜(ほうれん草)で相対的に高い値0.29pgTEQ/gが検出され、その他では0.07pgTEQ/g以下の値であった。福岡県と東北地区におけるりんご、ほうれん草、小松菜、きゅうりについて比較するとほうれん草のTEQ値が前者で約6倍高かったが、その他では差は認められなかった。
考察=ダイオキシン類の環境問題が大きな社会問題になるにつれ、今後も環境汚染物質としてのダイオキシン類も含めた広い観点からの研究推進が切望される。
一斉検診の結果は血中ダイオキシン類の若干の減少傾向が認められたが、排泄促進に関する新たな方法は開発されていない。 2)病像の追跡と健康管理
油症発生以来三十年を経過し、患者の皮膚科、眼科、歯科領域の諸症状には、一応の改善傾向が認められたが、慢性的障害の一つの可性として、免疫機能障害が考えられた。PCB等の摂取と肝ガン発生との関連性については引き続いての観察が必要と思われる。
3)基礎研究 PCB代謝物としての水酸化体やメチルスルホン体のPCB毒性発現への寄与の可能性が検討された。また、高毒性の2,3,4,3',4'ーpentachlorobiphenyl ( PenCB)を用い、ラット肝ミクロソームあるいはサイトソールで顕著に増減するタンパク質の同定とその特性が考察された。それらのタンパク質として、プレアルブミン、ストレス応答タンパク質HSP70およびHSP9、カルボニックアンヒドラーゼ、セレン結合性タパク質が明らかにされた。PCBは、1-ニトロピレン誘発マウス肺腫瘍のプロモーターとして作用することも示唆された。
4)ダイオキシン問題 油症原因物質たるPCBやPCDFは、現在、高毒性の環境汚染物質として注目されているダイオキシン類に他ならず、これらは主として食品を介して健常者の体内にも侵入している。今回、果実、野菜類について、これらの汚染実態の調査を実施した。その結果、緑色野菜(ほうれん草)で相対的に高い値0.29pgTEQ/gが検出され、その他では0.07pgTEQ/g以下の値であった。福岡県と東北地区におけるりんご、ほうれん草、小松菜、きゅうりについて比較するとほうれん草のTEQ値が前者で約6倍高かったが、その他では差は認められなかった。
考察=ダイオキシン類の環境問題が大きな社会問題になるにつれ、今後も環境汚染物質としてのダイオキシン類も含めた広い観点からの研究推進が切望される。
結論
1)台湾油症患者について皮脂中、および、血中のPCB、ダイオキシン類の分析を行い、これらの皮脂中濃度は、血中濃度に比例する事が確認されたが、皮脂を介しての排泄促進法については未だ成功していない。
2)油症発生以来三十年を経過し、その症状はかなり改善されたが、依然として高度の障害を有する患者も認められ、また慢性的障害の一つとしての免疫機能障害の可能性も示唆された。油症と肝ガンの関連性については、引き続いての観察が必要である。 3)2,3,4,3',4'ーPenCB投与ラット肝ミクロソームあるいはサイトソールで、その濃度が顕著に増減する四種のタンパク質が同定され、特性が考察された。
4)果実、野菜類におけるダイオキシン類の汚染度が測定され、ほうれん草で相対的に高い0.29pgTEQ/gの値が得られ、他の作物は0.07pgTEQ/gであった。福岡県ほうれん草のみ、その濃度が東北地区のそれの約六倍を示した。
2)油症発生以来三十年を経過し、その症状はかなり改善されたが、依然として高度の障害を有する患者も認められ、また慢性的障害の一つとしての免疫機能障害の可能性も示唆された。油症と肝ガンの関連性については、引き続いての観察が必要である。 3)2,3,4,3',4'ーPenCB投与ラット肝ミクロソームあるいはサイトソールで、その濃度が顕著に増減する四種のタンパク質が同定され、特性が考察された。
4)果実、野菜類におけるダイオキシン類の汚染度が測定され、ほうれん草で相対的に高い0.29pgTEQ/gの値が得られ、他の作物は0.07pgTEQ/gであった。福岡県ほうれん草のみ、その濃度が東北地区のそれの約六倍を示した。
公開日・更新日
公開日
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