先天性骨髄不全症の登録システムの構築と診断基準・重症度分類・診断ガイドラインの確立に関する研究

文献情報

文献番号
202011023A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性骨髄不全症の登録システムの構築と診断基準・重症度分類・診断ガイドラインの確立に関する研究
課題番号
19FC1005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 悦朗(国立大学法人 弘前大学 大学院医学研究科地域医療学)
研究分担者(所属機関)
  • 張替 秀郎(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 矢部 普正(東海大学 医学部)
  • 真部 淳(北海道大学 大学院医学研究院)
  • 高橋 義行(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 菅野 仁(東京女子医科大学 医学部)
  • 高田 穣(京都大学 生命科学研究科)
  • 大賀 正一(九州大学 大学院医学研究院)
  • 照井 君典(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 古山 和道(岩手医科 医学部)
  • 多賀 崇(滋賀医科大学 医学部)
  • 小林 正夫(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 渡邉 健一郎(静岡県立こども病院 血液腫瘍科)
  • 金兼 弘和(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 山口 博樹(日本医科大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
11,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
主要な先天性骨髄不全症には、ダイアモンド・ブラックファン貧血(DBA)、ファンコニ貧血(FA)、遺伝性鉄芽球性貧血(SA)、先天性赤血球形成異常症(CDA)、シュワッハマン・ダイアモンド症候群(SDS)、先天性角化不全症(DC)、先天性好中球減少症(CN)の7疾患がある。平成26年度から発症数が少なく共通点の多いこれらの疾患の医療水準向上を効果的に進めるために、一つの研究班に統合し、厚労省難治性疾患政策研究班「先天性造血不全班」(伊藤班)として研究を推進してきた。平成30年度からは、CDAと鑑別が問題となる先天性溶血性貧血(CHA)も本研究班の対象に加えた。本研究では、先行班研究を発展させ、「先天性骨髄不全症のレジストリ」を確立し、より優れた「診断基準・重症度分類・診断ガイドライン」の作成を目指す。DBAなどではまだ半数で原因遺伝子が不明である。このため、これまでの研究を通じて確立した解析基盤を共有し、オミックス解析拠点(宮野班)、日本小児血液・がん学会の疾患登録事業や原発性免疫不全班とも連携し、正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行う。遺伝子診断を含めた中央診断を行い、正確な診断に基づいた疫学調査を行う。令和元年度は、難病プラットフォーム(AMED 松田班)を用いた「遺伝子診断の結果も含む精度の高い先天性骨髄不全症候群のレジストリ」の構築を進め、診療ガイドラインの小改訂を行った。令和2~3年度は、データ収集と観察研究を継続し、正確な先天性造血不全の実態把握を行い、より精度の高い疾患データベースの確立とエビデンスに基づいた診断基準、重症度分類と診療ガイドラインの改訂を行う。
研究方法
本研究申請では、発症数が少なく共通点の多い先天性骨髄不全症の医療水準の向上をより効果的に進めるために、一つの研究班に統合して研究を推進する。本研究班は、8つの疾患別研究拠点から構成され、各研究拠点(DBA(伊藤)、SA(張替)、FA(矢部・高田)、CDA(高橋・真部)、DC (高橋、山口)、SDS (渡邉)、SCN(小林)、CHA(菅野))は、疫学調査、臨床データおよび検体の収集、遺伝子診断のための既知の原因遺伝子解析とバイオマーカーなどの特殊検査を担当する。令和元年度は、難病プラットフォーム(AMED 松田班)を用いた「遺伝子診断の結果も含む精度の高い先天性造血不全症のレジストリ」の構築を進め、診療ガイドラインの小改訂を行った。なお、各疾患拠点間でのガイドラインの書式、トランジションなどの情報の共有が図られるように研究を推進した。令和2~3年度は、データ収集と観察研究を継続し、正確な先天性造血不全の実態把握を行い、より精度の高い疾患データベースの確立とエビデンスに基づいた診断基準、重症度分類と診療ガイドラインの改訂を行う。得られた最新の成果は、難病情報センターのホームページや書籍などを通じて国民に広く公表する。
結果と考察
各研究拠点は疫学調査、臨床データおよび検体の収集、既知の原因遺伝子解析とバイオマーカーなどの特殊検査を担当した。正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行った。本年度は、DBA患者(165名)の追跡調査を行い、7例で悪性腫瘍の合併が明らかとなった。FA類似の臨床症状を示し、その病態からFAの亜型とも考えられる新規の造血不全症ADH5/ALDH2欠損症(Aldehyde Degradation Deficiency症候群(ADD)と命名)を見出し、論文報告した(Mol Cell 2020, Blood 2021)。成人を含む日本人FA患者163例に対する造血細胞移植成績を解析した。5年生存率は病型別に再不貧、MDS、白血病でそれぞれ89%、71%、44%であった。MDS/白血病群における予後不良因子は、移植時18歳以上、ATG/ALGを用いない前処置、Grade II -IVの急性GVHDであった。15例に頭頸部、食道を中心とする二次がんの合併を認めた。本年度は、難病プラットフォーム(AMED 松田班)を用いた「先天性骨髄不全症候群のレジストリ」の構築を進め、京都大学医学部「医の倫理委員会」の中央倫理審査で承認され、全国の50以上の施設が参加するWeb登録システムが完成した。本研究成果は指定難病の運用に活用されると考えられる。
結論
正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行った。DBA患者(165名)の追跡調査を行い、7例で悪性腫瘍の合併が明らかとなった。FAの亜型とも考えられる新規骨髄不全症(ADD症候群)を見出し、論文報告した。本研究班で得られたデータをもとに、治療ガイドラインおよび重症度分類の小改訂を行った。さらに、難病プラットフォームを用いた「先天性骨髄不全症候群のレジストリ」の構築を進め、患者のWeb登録が可能となった。

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
2021-07-21

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202011023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,210,000円
(2)補助金確定額
15,210,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,305,148円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 3,414,121円
間接経費 3,510,000円
合計 15,229,269円

備考

備考
自己資金 19,268円
その他(利息)1円

公開日・更新日

公開日
2021-12-03
更新日
-