文献情報
文献番号
202011013A
報告書区分
総括
研究課題名
自己免疫性出血症治療の「均てん化」のための実態調査と「総合的」診療指針の作成
課題番号
H30-難治等(難)-一般-015
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
一瀬 白帝(山形大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 今田 恒夫(山形大学 大学院医学系研究科)
- 惣宇利 正善(山形大学 大学院医学系研究科)
- 尾崎 司(山形大学 大学院医学系研究科)
- 横山 智哉子(山形大学 大学院理工学研究科)
- 和田 英夫(三重大学大学院 医学系研究科)
- 朝倉 英策(金沢大学 附属病院)
- 橋口 照人(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
- 小川 孔幸(群馬大学 大学院医学系研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
「後天性出血症」は誰でも罹患する可能性がある疾病であり、これまでは希少であったが、超高齢社会となった我が国では次第に症例数が増加している。特に「自己免疫性出血症」は難治性疾患であるため、本研究では、本症に含まれる各疾患の症例を確定診断して実態を解明し、診断基準、重症度分類、診療ガイドライン等を作成、確立、改定することが主な目的であり、その治療の均てん化を可能にする。
研究方法
1) AiF13D
a. AiF13D治療指針作成の基礎資料として、止血療法/抗体根絶療法、治療効果/寛解判定等の追跡調査を実施
b. AMED事業で開発したイムノクロマトグラフィ法による抗F13自己抗体検出迅速検査を試用し、確定診断した結果を蓄積
c. 国際共同研究でF13Bサブユニット濃度を決定した国際標準血漿を用いて、精度管理を実施
2) AiF8D
a. 合成基質法によるF8活性、抗原量、抗F8自己抗体を測定することにより症例の病勢、病態などを解析
b. F8インヒビターが陰性化しても抗F8自己抗体量が高いと再燃する症例があるので、寛解判定基準の修正を検討
3) AiVWFD
a. 後天性VWF症候群と混同され易いAiVWFD疑い症例の調査、研究的精密検査によりデータを蓄積し、現行の診断基準を検証
b. 精度管理のため、複数の測定システムを用いて抗VWF自己抗体の検出感度、特異性を検討
4) AiF5D
a. 本疾患の極めて多彩な症状と検査所見、病態との関連を解析
b. F5インヒビターと抗F5自己抗体を測定し、非中和抗体の検出が診断と治療効果判定に有用か否か検討
5) AiF10D
a. AiF10D診断基準案を周知し、本疾患の実態を調査
b. F10インヒビターと抗F10自己抗体検査を実施し、非中和抗体の検出が診断と治療効果判定に有用か検証
c. 本疾患に類似したALアミロイドーシスにおける凝血学的検査結果について調査し、その鑑別診断法を提唱
a. AiF13D治療指針作成の基礎資料として、止血療法/抗体根絶療法、治療効果/寛解判定等の追跡調査を実施
b. AMED事業で開発したイムノクロマトグラフィ法による抗F13自己抗体検出迅速検査を試用し、確定診断した結果を蓄積
c. 国際共同研究でF13Bサブユニット濃度を決定した国際標準血漿を用いて、精度管理を実施
2) AiF8D
a. 合成基質法によるF8活性、抗原量、抗F8自己抗体を測定することにより症例の病勢、病態などを解析
b. F8インヒビターが陰性化しても抗F8自己抗体量が高いと再燃する症例があるので、寛解判定基準の修正を検討
3) AiVWFD
a. 後天性VWF症候群と混同され易いAiVWFD疑い症例の調査、研究的精密検査によりデータを蓄積し、現行の診断基準を検証
b. 精度管理のため、複数の測定システムを用いて抗VWF自己抗体の検出感度、特異性を検討
4) AiF5D
a. 本疾患の極めて多彩な症状と検査所見、病態との関連を解析
b. F5インヒビターと抗F5自己抗体を測定し、非中和抗体の検出が診断と治療効果判定に有用か否か検討
5) AiF10D
a. AiF10D診断基準案を周知し、本疾患の実態を調査
b. F10インヒビターと抗F10自己抗体検査を実施し、非中和抗体の検出が診断と治療効果判定に有用か検証
c. 本疾患に類似したALアミロイドーシスにおける凝血学的検査結果について調査し、その鑑別診断法を提唱
結果と考察
今年度も本症の各疾患の診断基準、重症度分類、診療指針を作成・確立・検証・改定しつつ、3年を掛けて「難病プラットフォーム(難プラ)」の症例情報登録レジストリを完成し、運用を開始した。今後も維持・拡充して、本症の半永久的な研究基盤として大いに活用する予定である。
患者公的支援の「公平性」という点からAiF10Dを新たな対象疾患として重視し、全国調査した。2020年12月末にAiF10D診断基準を改訂・提出して指定難病288に新たに追加申請し、AiF13DとAiF5Dの診断基準改訂案を提出したことが特筆される。AiF10Dが指定難病288-5として承認されれば、現時点では我が国でまだ3例、海外でも23例しか報告されていない本疾患症例がより多く発見されるようになり、その実態が明らかにされると期待される。AiF13DとAiF5Dについては、診断基準のスクリーニング検査をより増やす条項を追加して、「ほぼ確定診断」の要件を緩和する方向での改訂を提案した。これらの提案が指定難病検討委員会で承認されれば、医療機関を受診した本疾患のより多くの症例が公的医療費助成を申請することが容易になり、認定によって救済される症例が増加すると期待される。
その他の主な成果としては、症例相談と全国アンケート調査の結果、登録症例を蓄積したこと、研究班ホームページを維持・更新して広報活動に活用したこと、AiF13Dの統一特別委託検査のデータを国際専門誌に発表して凝固・線溶系の異常と1:1混合試験の有用性を証明し、凝固・線溶系の異常を指摘したこと、AiF10DやAiF5Dの国内外の報告症例をレビュー論文としてまとめて、症例の症候や病態を明らかにしたこと、等が挙げられる。
なお、全国調査については2019年度から定期調査を2段階に分け、先ず往復はがきを郵送して新症例有りと回答した主治医のみに次にメールで症例登録を依頼している。その結果、回収率と報告症例数が増加したので、今後も「2段階方式」で調査を実施してその効果を検証し、更なる改善策を検討する予定である。
2019年2月末から研究班ホームページを開設し、種々の通知を掲示したり、各種の文書をダウンロードできるようにリンクしたりしている。今後も、これを充実させて非専門医への本研究事業や本症の診断方法、医療費助成申請等の紹介、周知にも活用したい。
患者公的支援の「公平性」という点からAiF10Dを新たな対象疾患として重視し、全国調査した。2020年12月末にAiF10D診断基準を改訂・提出して指定難病288に新たに追加申請し、AiF13DとAiF5Dの診断基準改訂案を提出したことが特筆される。AiF10Dが指定難病288-5として承認されれば、現時点では我が国でまだ3例、海外でも23例しか報告されていない本疾患症例がより多く発見されるようになり、その実態が明らかにされると期待される。AiF13DとAiF5Dについては、診断基準のスクリーニング検査をより増やす条項を追加して、「ほぼ確定診断」の要件を緩和する方向での改訂を提案した。これらの提案が指定難病検討委員会で承認されれば、医療機関を受診した本疾患のより多くの症例が公的医療費助成を申請することが容易になり、認定によって救済される症例が増加すると期待される。
その他の主な成果としては、症例相談と全国アンケート調査の結果、登録症例を蓄積したこと、研究班ホームページを維持・更新して広報活動に活用したこと、AiF13Dの統一特別委託検査のデータを国際専門誌に発表して凝固・線溶系の異常と1:1混合試験の有用性を証明し、凝固・線溶系の異常を指摘したこと、AiF10DやAiF5Dの国内外の報告症例をレビュー論文としてまとめて、症例の症候や病態を明らかにしたこと、等が挙げられる。
なお、全国調査については2019年度から定期調査を2段階に分け、先ず往復はがきを郵送して新症例有りと回答した主治医のみに次にメールで症例登録を依頼している。その結果、回収率と報告症例数が増加したので、今後も「2段階方式」で調査を実施してその効果を検証し、更なる改善策を検討する予定である。
2019年2月末から研究班ホームページを開設し、種々の通知を掲示したり、各種の文書をダウンロードできるようにリンクしたりしている。今後も、これを充実させて非専門医への本研究事業や本症の診断方法、医療費助成申請等の紹介、周知にも活用したい。
結論
今年度は、3年間にわたる研究の主たる目標である難プラレジストリの運用を開始し、本研究の目的である新しい診断基準案の作成と現行の診断基準の改訂案を作成して提案することができた。今後も調査研究を継続してこの研究基盤を維持・拡充し、全ての指定難病288 の症例が「公平に支援」され、その診療が「均てん化」されるように努力したい。
公開日・更新日
公開日
2021-07-01
更新日
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