染色体微細欠失重複症候群の包括的診療体制の構築

文献情報

文献番号
202011010A
報告書区分
総括
研究課題名
染色体微細欠失重複症候群の包括的診療体制の構築
課題番号
H30-難治等(難)-一般-012
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
倉橋 浩樹(藤田医科大学 総合医科学研究所・分子遺伝学)
研究分担者(所属機関)
  • 大橋 博文(埼玉県立小児医療センター 遺伝科)
  • 黒澤 健司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
  • 山本 俊至(東京女子医科大学大学院医学研究科先端生命医科学専攻遺伝子医学分野(遺伝子医療センターゲノム診療科))
  • 涌井 敬子(信州大学 医学部 遺伝医学・予防医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,998,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究代表者を含む本研究班員はこれまで、厚労省難治性疾患克服研究事業の支援も受け、マイクロアレイ染色体検査で診断されるような多発奇形・発達遅滞の患者の診療をおこなう中で、個々の疾患の診断基準や重症度基準、診療ガイドライン作成を行ってきた。一部の代表的な疾患に関してはすでに先行研究班で臨床的実態調査がなされており、小児期の疾患の自然歴に関しては十分な情報が集まった。一方で、患者さんの多くは小児期の医療管理の充実化により疾患の予後が改善し長期生存が可能となっており、成人期治療へのトランジッションが重要となってきたが、これら稀少疾患の成人期の臨床情報は皆無に等しい。直面している患者さんやご家族は移行期や成人期の疾患の臨床情報を必要としており、また、小児期の患者さんのご家族も将来展望としての長期的な情報を欲している。そこで、本研究では代表的な5疾患に関して先行研究を継続する形で疫学的調査を行い、成人期患者の情報収集を行い、その対処法や合併症の予防法を標準化することを第一の目的とする。それと平行して、その他の染色体微細欠失・重複症候群に関しては、マイクロアレイ染色体検査が重要な診断ツールであるが、その保険診療に向けてその準備の一環として、一般の医療従事者に向けたマイクロアレイ染色体検査の診療ガイダンスの策定を行うことを第二の目的とする。
研究方法
代表的な5疾患に関しては、先行研究ですでに作成している患者レジストリーを利用して、患者情報を、とくに長期生存例の直近の情報を入手し、疫学的調査を行う。エマヌエル症候群(指定難病204)、5p欠失症候群(109)、スミスマゲニス症候群(202)、1p36欠失症候群(197)、4p欠失症候群(198)を担当する。集まった患者情報に基づいて、詳細な臨床情報の分析を行った。とくにエマヌエル症候群に関しては、オンライン・レジストリーシステムを構築する。地域ごとの小規模な患者会を開催する。また、オンライン家族会を開催し、地域ごとの患者会を結合する。それらを利用してとくに成人期の患者情報を集め分析する。その他の染色体微細欠失・重複症候群に関しては、研究代表者を含む各研究分担者が個々の施設でマイクロアレイ染色体検査、必要に応じてFISH解析にて診断を確定させる。マイクロアレイ染色体検査はこれらの疾患の診断に必須であり、保険診療化を目指すため、多くの診断経験を踏まえて、マイクロアレイ染色体検査の診療ガイダンスの策定を行う。
結果と考察
エマヌエル症候群については、患者の居住地と年齢がわかるような「友だちマップ」というオンライン・レジストリーシステムを構築し、研究代表者が運営するエマヌエル症候群の患者と家族の支援ウェブサイトの上で運用を開始した。最終的に16名が患者登録を行った。成人期の患者が3名登録した。次に、若年患者の家族が成人例の何を知りたいのかを事前に調査することとした。藤田医科大学病院・臨床遺伝科に来談した、全国から新規に診断されたエマヌエル症候群の患者が、面談もしくはオンライン遺伝カウンセリングの中で、成人期の患者の家族に何を聞きたいのか、質問リストを作成してもらった。次に、2018年度は福岡と仙台で数組の患者家族が集まる小規模な患者会を開催し、そこで成人期患者の情報や、小児期患者の家族が何を知りたがっているのかの情報を収集した。さらに、登録患者の近隣で同じ疾患の家族がお互いの存在を認識できるようにするための医療機関用の啓発ポスターを作成した。2年目、3年目は、オンライン会議システムを用いてオンライン家族会を開催した。第1回は5組、第2回は北は東北、南は九州に至る18組の患者さんとそのご家族が参加し、移動が困難である患者さん同士をつなぐことができた。t(11;22)転座にちなんで、11月22日をエマヌエル症候群の日とし、毎年その日にオンライン患者会を開催することとした。この家族会で、本事業に関してもアナウンスし、賛同が得られ、情報収集が可能となった。最終的には、成人患者に対するアンケート調査において成人期の情報を集めるために、成人例に焦点を当てた質問表が完成した。
結論
本研究では、染色体微細欠失重複症候群の成人期移行を見据えた診療ガイドラインの確立を目的として、国内の多施設共同研究により、代表的な5疾患に関して、とくにエマヌエル症候群についてオンライン患者レジストリー・システム、地域ごとの小規模患者会、それらをつなぐ全国オンライン家族会による国内成人患者の実態調査の準備を行った。COVID-19が収束に向かえば、地域ごとの小規模患者会と全国オンライン家族会のハイブリッドシステムが動きだし、医療サイドの対応と平行して、患者の家族が自ら対応して行ける体制の構築と全国標準化が期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202011010B
報告書区分
総合
研究課題名
染色体微細欠失重複症候群の包括的診療体制の構築
課題番号
H30-難治等(難)-一般-012
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
倉橋 浩樹(藤田医科大学 総合医科学研究所・分子遺伝学)
研究分担者(所属機関)
  • 大橋 博文(埼玉県立小児医療センター 遺伝科)
  • 黒澤 健司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
  • 山本 俊至(東京女子医科大学大学院医学研究科先端生命医科学専攻遺伝子医学分野(遺伝子医療センターゲノム診療科))
  • 涌井 敬子(信州大学 医学部 遺伝医学・予防医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究代表者を含む本研究班員はこれまで、厚労省難治性疾患克服研究事業の支援も受け、マイクロアレイ染色体検査で診断されるような多発奇形・発達遅滞の患者の診療をおこなう中で、個々の疾患の診断基準や重症度基準、診療ガイドライン作成を行ってきた。一部の代表的な疾患に関してはすでに先行研究班で臨床的実態調査がなされており、小児期の疾患の自然歴に関しては十分な情報が集まった。一方で、患者さんの多くは小児期の医療管理の充実化により疾患の予後が改善し長期生存が可能となっており、成人期治療へのトランジッションが重要となってきたが、これら稀少疾患の成人期の臨床情報は皆無に等しい。直面している患者さんやご家族は移行期や成人期の疾患の臨床情報を必要としており、また、小児期の患者さんのご家族も将来展望としての長期的な情報を欲している。そこで、本研究では代表的な5疾患に関して先行研究を継続する形で疫学的調査を行い、成人期患者の情報収集を行い、その対処法や合併症の予防法を標準化することを第一の目的とする。それと平行して、その他の染色体微細欠失・重複症候群に関しては、マイクロアレイ染色体検査が重要な診断ツールであるが、その保険診療に向けてその準備の一環として、一般の医療従事者に向けたマイクロアレイ染色体検査の診療ガイダンスの策定を行うことを第二の目的とする。
研究方法
代表的な5疾患に関しては、先行研究ですでに作成している患者レジストリーを利用して、患者情報を、とくに長期生存例の直近の情報を入手し、疫学的調査を行う。エマヌエル症候群(指定難病204)、5p欠失症候群(109)、スミスマゲニス症候群(202)、1p36欠失症候群(197)、4p欠失症候群(198)を担当する。集まった患者情報に基づいて、詳細な臨床情報の分析を行った。とくにエマヌエル症候群に関しては、オンライン・レジストリーシステムを構築する。地域ごとの小規模な患者会を開催する。また、オンライン家族会を開催し、地域ごとの患者会を結合する。それらを利用してとくに成人期の患者情報を集め分析する。その他の染色体微細欠失・重複症候群に関しては、研究代表者を含む各研究分担者が個々の施設でマイクロアレイ染色体検査、必要に応じてFISH解析にて診断を確定させる。マイクロアレイ染色体検査はこれらの疾患の診断に必須であり、保険診療化を目指すため、多くの診断経験を踏まえて、マイクロアレイ染色体検査の診療ガイダンスの策定を行う。
結果と考察
エマヌエル症候群については、患者の居住地と年齢がわかるような「友だちマップ」というオンライン・レジストリーシステムを構築し、研究代表者が運営するエマヌエル症候群の患者と家族の支援ウェブサイトの上で運用を開始した。最終的に16名が患者登録を行った。成人期の患者が3名登録した。次に、若年患者の家族が成人例の何を知りたいのかを事前に調査することとした。藤田医科大学病院・臨床遺伝科に来談した、全国から新規に診断されたエマヌエル症候群の患者が、面談もしくはオンライン遺伝カウンセリングの中で、成人期の患者の家族に何を聞きたいのか、質問リストを作成してもらった。次に、2018年度は福岡と仙台で数組の患者家族が集まる小規模な患者会を開催し、そこで成人期患者の情報や、小児期患者の家族が何を知りたがっているのかの情報を収集した。さらに、登録患者の近隣で同じ疾患の家族がお互いの存在を認識できるようにするための医療機関用の啓発ポスターを作成した。2年目、3年目は、オンライン会議システムを用いてオンライン家族会を開催した。第1回は5組、第2回は北は東北、南は九州に至る18組の患者さんとそのご家族が参加し、移動が困難である患者さん同士をつなぐことができた。t(11;22)転座にちなんで、11月22日をエマヌエル症候群の日とし、毎年その日にオンライン患者会を開催することとした。この家族会で、本事業に関してもアナウンスし、賛同が得られ、情報収集が可能となった。最終的には、成人患者に対するアンケート調査において成人期の情報を集めるために、成人例に焦点を当てた質問表が完成した。
結論
本研究では、染色体微細欠失重複症候群の成人期移行を見据えた診療ガイドラインの確立を目的として、国内の多施設共同研究により、代表的な5疾患に関して、とくにエマヌエル症候群についてオンライン患者レジストリー・システム、地域ごとの小規模患者会、それらをつなぐ全国オンライン家族会による国内成人患者の実態調査の準備を行った。COVID-19が収束に向かえば、地域ごとの小規模患者会と全国オンライン家族会のハイブリッドシステムが動きだし、医療サイドの対応と平行して、患者の家族が自ら対応して行ける体制の構築と全国標準化が期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202011010C

収支報告書

文献番号
202011010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,197,000円
(2)補助金確定額
5,197,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,030,603円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 967,397円
間接経費 1,199,000円
合計 5,197,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-12-07
更新日
-