筋ジストロフィーの標準的医療普及のための調査研究

文献情報

文献番号
202011004A
報告書区分
総括
研究課題名
筋ジストロフィーの標準的医療普及のための調査研究
課題番号
H30-難治等(難)-一般-005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
松村 剛(国立病院機構大阪刀根山医療センター 脳神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 青木 正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 神経内科)
  • 石垣 景子(東京女子医科大学 小児科)
  • 石崎 雅俊(熊本再春荘病院 神経内科)
  • 尾方 克久(独立行政法人国立病院機構東埼玉病院)
  • 久留 聡(国立病院機構鈴鹿病院)
  • 小牧 宏文(国立精神・神経医療研究センター病院 小児神経科)
  • 砂田 芳秀(川崎医科大学 医学部神経内科学)
  • 高田 博仁(独立行政法人 国立病院機構 青森病院 診療部 神経内科)
  • 高橋 正紀(大阪大学大学院 医学系研究科 機能診断科学)
  • 谷口 雅彦(聖マリア病院)
  • 中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院 脳神経内科)
  • 中村 昭則(国立病院機構まつもと医療センター神経内科)
  • 西野 一三(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部)
  • 橋本 大哉(名古屋市立大学病院 臨床研究開発支援センター)
  • 花山 耕三(川崎医科大学リハビリテーション医学教室)
  • 松浦 徹(自治医科大学内科学講座神経内科学部門)
  • 諏訪園 秀吾(独立行政法人国立病院機構沖縄病院 脳・神経・筋疾患研究センター )
  • 吉浦 孝一郎(長崎大学 原爆後障害医療研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
諏訪園秀吾 2020年9月25日~ 沖縄型HALデータ収集 吉浦孝一郎 2020年9月25日~ 沖縄型遺伝学的解析

研究報告書(概要版)

研究目的
関連諸機関と連携し、全国で標準的医療と円滑な移行医療を実践するために必要な調査・研究、アウトリーチ活動を行う。COVID-19パンデミックにおいて、神経筋疾患患者への情報提供と、実態調査を行う。
研究方法
①ガイドライン作成支援・患者向け資料作成:筋強直性ジストロフィーの遺伝医療について、臨床遺伝専門医を対象に調査した。出生前・着床前診断の実施状況を確認する目的で、全国遺伝子医療部門連絡会議参加施設に調査を行った。患者対象調査における先天型・小児型の回答を解析した。「筋強直性ジストロフィー診療ガイドライン2020」を基に、患者向けの資料を作成した。
②診断手順改訂:ジストロフィノパチーについて診断手順を改訂した。 
③COVID-19実態調査、情報提供:筋ジストロフィーに有用な情報を提供した。呼吸ケアを要する神経筋疾患患者がCOVID-19に罹患した場合の感染防御対策について、国立病院機構でまとめたものをHPに掲載した。筋ジストロフィー患者がCOVID-19で受けた影響について、2020年5月11日よりWeb調査を開始した。
④介護者健康問題調査:介護者の健康問題と変異保有者の発症リスクを明らかにする目的で調査を実施した。
⑤ロボットスーツHALの長期使用効果データ収集:神経筋8疾患は神経変性疾患班(中島班)と協力してデータ収集中。沖縄型では遺伝学的解析も実施した。
⑥顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー主観的臨床評価指標(FSHDHI)日本語版作成・評価:疾患特異的な主観的臨床評価指標のFSHDHIの日本語版作成・評価を実施した。
⑦患者登録効率的運用と新規疾患登録、医療支援・アウトリーチ活動:2020年9月に顔面肩甲上腕型の患者登録を開始した。HPを通じた情報提供や、webを活用した顔面肩甲上腕型登録説明会、CNS障害研究会セミナーを実施した。
結果と考察
①ガイドライン作成支援・患者向け資料作成:臨床遺伝専門医対象調査では、生殖医療に積極的意見が多く、男性患者も出生前・着床前診断の対象とする回答が多かった。全国遺伝子医療部門連絡会議参加施設で男性患者に出生前・着床前診断を実施した施設は無かったが、積極的意見が消極的意見を上回った。患者対象調査でも成人女性患者の1/4が不妊治療を受けており、生殖医療が本症の重要課題であることが明らかとなった。先天型では周産期異常や精神運動発達遅滞が多く、小児型では指の動きにくさ、易疲労が多かった。情報提供・支援は十分だと感じていなかった。患者向け資料は、「知っておきたい筋強直性ジストロフィー -患者さん、ご家族、支援者のための手引き-」の書名で刊行した。疾病理解・受療行動の改善に寄与することを期待する。
②診断手順改訂:ジストロフィノパチーでは、2016年にシークエンス検査が保険適用になったため、筋生検に優先してシークエンスを行う形にした。診断までの時間短縮、侵襲的検査の回避、進行例の診断機会増加が期待される。
③COVID-19実態調査、情報提供:国内外学会等の情報を順次掲HPに掲載し、一部は和訳も行った。COVID-19実態調査では、2020年7月末までの542名の回答を中間解析した。受診控えが3割程度見られ、受診頻度が高いほど受診維持が困難で電話再診が多かった。社会的に供給破綻したマスクや消毒剤、手袋に加え、ガウンや予防衣、眼防護具も2割程度で供給不足を生じていた。呼吸ケアでは、呼吸器点検が予定通りに行われない、マスクやカニューレを変更した・交換頻度を減らしたなどが見られた。訪問サービスは6割以上で維持されていたが、患者都合で変更・中止した例が多かった。通所サービスは、3割程度しか維持されていなかった。ほとんどの患者が外出を控え、歩行例の過半数がリハビリテーションを削減しており、運動量減少が機能低下や疼痛をもたらしていた。重症例の3割程度が介護負担増加を訴え、精神的不調の割合も高かった。
④介護者健康問題調査:遺伝学的に確認されたcarrierは、介護負担を強く訴え、血清CK・BNP値上昇の割合も高かった。介護者・carrierの健康管理の重要性が確認された。
⑤ロボットスーツHALの長期使用効果データ収集:神経筋8疾患は、171例が登録され、データ収集中である。沖縄型では発症者5名全員に既報告のTFG遺伝子c.854C>T変異を確認した。
⑥FSHDHI日本語版作成・評価:Rochester大学と試用評価の解析を行い、妥当性評価を実施する予定である。
⑦患者登録効率的運用と新規疾患登録、医療支援・アウトリーチ活動:関連機関とも連携し情報発信や患者登録の推進、臨床研究への登録活用などを行っている。
結論
本研究により、地域を単位とした筋ジストロフィーの標準的医療提供体制の構築が促進されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-03-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202011004B
報告書区分
総合
研究課題名
筋ジストロフィーの標準的医療普及のための調査研究
課題番号
H30-難治等(難)-一般-005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
松村 剛(国立病院機構大阪刀根山医療センター 脳神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 青木 正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 神経内科)
  • 石垣 景子(東京女子医科大学 小児科)
  • 石崎 雅俊(熊本再春荘病院 神経内科)
  • 尾方 克久(独立行政法人国立病院機構東埼玉病院)
  • 久留 聡(国立病院機構鈴鹿病院)
  • 小牧 宏文(国立精神・神経医療研究センター病院 小児神経科)
  • 砂田 芳秀(川崎医科大学 医学部神経内科学)
  • 諏訪園 秀吾(独立行政法人国立病院機構沖縄病院 脳・神経・筋疾患研究センター )
  • 高田 博仁(独立行政法人 国立病院機構 青森病院 診療部 神経内科)
  • 高橋 正紀(大阪大学大学院 医学系研究科 機能診断科学)
  • 谷口 雅彦(聖マリア病院)
  • 中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院 脳神経内科)
  • 中村 昭則(国立病院機構まつもと医療センター神経内科)
  • 西野 一三(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部)
  • 橋本 大哉(名古屋市立大学病院 臨床研究開発支援センター)
  • 花山 耕三(川崎医科大学リハビリテーション医学教室)
  • 松浦 徹(自治医科大学内科学講座神経内科学部門)
  • 吉浦 孝一郎(長崎大学 原爆後障害医療研究所)
  • 米本 直裕(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神薬理研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
米本直裕 2018/4/1-2018/6/30 異動のため 橋本大哉 2018/7/1-2021/3/31 米本先生の代員 谷口雅彦 201812/1-2021/3/31 沖縄型評価のため 諏訪園秀吾 2020/9/25-2021/3/31 沖縄型評価のため 吉浦孝一郎 2020/9/25-2021/3/31 沖縄型遺伝学的解析のため

研究報告書(概要版)

研究目的
関連諸機関と連携し、全国で標準的医療と円滑な移行医療を実践するために必要な調査・研究、アウトリーチ活動を行う。COVID-19パンデミックにおいて、神経筋疾患患者への情報提供と、実態調査を行う。
研究方法
①ガイドライン作成支援・患者向け資料作成:日本神経学会による筋強直性ジストロフィー診療ガイドライン作成に協力し、患者対象調査、神経内科・小児神経専門医対象調査を実施。ガイドライン作成中に遺伝医療についての調査の必要性を感じたため、臨床遺伝専門医対象調査、全国遺伝子医療部門連絡会議参加施設対象調査を実施した。ガイドラインを基に患者向け資料を作成した。「デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン2014」の効果評価、改訂の基礎資料とする目的で、患者対象、神経内科・小児神経専門医対象、臨床遺伝専門医対象のガイドライン発刊後調査を実施、発刊前調査と比較検討した。
②診断手引き作成・改訂:遺伝学的多様性・臨床的多様性から診断が困難な、先天性筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィー(2型)について、「筋ジストロフィーの病型診断を進めるための手引き」を作成した。ジストロフィノパチーについて診断手順を改訂した。
③COVID-19実態調査、情報提供:筋ジストロフィーに有用な情報を提供した。呼吸ケアを要する神経筋疾患患者がCOVID-19に罹患した場合の感染防御対策について、国立病院機構でまとめたものをHPに掲載した。筋ジストロフィー患者がCOVID-19で受けた影響について、2020年5月11日よりWeb調査を開始した。
④介護者健康問題調査:介護者の健康問題と変異保有者の発症リスクを明らかにする目的で調査を実施した。
⑤ロボットスーツHAL®の長期使用効果データ収集:神経筋8疾患は神経変性疾患班(中島班)と協力してデータ収集中。沖縄型では単関節型の評価に加え、遺伝学的解析も実施した。
⑥顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー主観的臨床評価指標(FSHDHI)日本語版作成・評価:疾患特異的な主観的臨床評価指標のFSHDHIの日本語版作成・評価を実施した。
⑦患者登録効率的運用と新規疾患登録、医療支援・アウトリーチ活動:患者登録の効率的運用を目指して登録・臨床研究ネットワーク事務局の統合、患者登録システムの再構築等を実施した。新しい登録システムで顔面肩甲上腕型の登録を開始した。研究班HPは前期班で作成した一般向けドメイン(https://mdcst.jp)に加え、医師用ドメイン(https://doctors.mdcst.jp/)を追加した。HPを通じた情報提供や、市民公開講座・セミナーを実施。2020年はCOVID-19の影響を受け、webセミナーを行った。
結果と考察
①ガイドライン作成支援・患者向け資料作成:筋強直性ジストロフィー患者対象、専門医対象調査では、本症の医療課題を明らかにしガイドライン作成にも反映させた。遺伝医療調査では生殖医療が重要課題であることが明らかとなった。デュシェンヌ型ガイドライン後調査では、ガイドラインが利用されていること、ガイドラインが推奨する医療の実施割合が増加していることが確認された。
②診断手引き作成・改訂:診断手引きの作成・改訂により、治療可能な疾患を見落とさず、非侵襲的かつ効率的な診断が行えることを期待する。
③COVID-19実態調査、情報提供:国内外学会等の情報を順次掲HPに掲載し、一部は和訳も行った。COVID-19実態調査では、2020年7月末までの542名の回答を中間解析した。COVID-19による供給不足、感染対策が筋ジストロフィー患者の医療・生活・健康に様々な影響を与えていることが明らかとなった。
④介護者健康問題調査:遺伝学的に確認されたcarrierは、介護負担を強く訴え、血清CK・BNP値上昇の割合も高かった。介護者・carrierの健康管理の重要性が確認された。
⑤ロボットスーツHAL®の長期使用効果データ収集:神経筋8疾患は、171例が登録され、データ収集中である。沖縄型では単関節型HAL®の上肢機能への有効性が示唆されたと共に、発症者5名全員に既報告のTFG遺伝子c.854C>T変異を確認した。
⑥FSHDHI日本語版作成・評価:Rochester大学と試用評価の解析を行い、妥当性評価を実施する予定である。
⑦患者登録効率的運用と新規疾患登録、医療支援・アウトリーチ活動:関連機関とも連携し情報発信や患者登録の推進、臨床研究への登録活用などを行っている。
結論
本研究により、地域を単位とした筋ジストロフィーの標準的医療提供体制の構築が促進されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202011004C

収支報告書

文献番号
202011004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
18,000,000円
(2)補助金確定額
17,920,000円
差引額 [(1)-(2)]
80,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,010,577円
人件費・謝金 2,073,865円
旅費 722,451円
その他 6,113,686円
間接経費 2,000,000円
合計 17,920,579円

備考

備考
自己資金578円 その他(利息)1円

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
2022-01-20