抗菌剤入りポリカーボネート樹脂の安全性確保に関する調査研究

文献情報

文献番号
199700418A
報告書区分
総括
研究課題名
抗菌剤入りポリカーボネート樹脂の安全性確保に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
藤井 正美(神戸学院大学)
研究分担者(所属機関)
  • 河村葉子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 馬場二夫(大阪市環境科学研究所)
  • 山田耕平(ポリオレフィン衛生協議会)
  • 渡辺悠二(東京都衛生研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 食品衛生調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1997年9月、東京都において、ポリカーボネート樹脂の食品容器から食品衛生法で定める規格の一つ、「材質中遊離ビスフェノールA:500ppm」の基準を越える960ppmの製品が見つけられ、調査してみると抗菌剤が添加さらた同樹脂製品に限定されていた。ビスフェノールAはいわゆる環境ホルモン成分の一つであったことから、この材質中基準値超過のニュースは学校給食用食器に影響を与えるなど、社会的に少なからざる不安感を与えた。プラスチックに添加剤を加えたとき、樹脂本来の材質に影響を与え、材質構成成分の異常遊離を起こす事例は過去例を見ない。本研究は、プラスチックと添加剤との相互作用、そして新たな安全性評価のためにも、本事例をテーマとして、かかる現象がなぜ生じたのか、そのメカニズム等を検討するため行うこととなった。
研究方法
通例、プラスチック材質中の遊離成分は未重合体としてモノマーの2-3量体、添加剤成分が発見される。今事例では重合成分のモノマーが多量検出されたことからまた、添加抗菌剤の抗菌性能がTiO2と同様発生期の酸素によるとの文献から、金属酸化物の添加が、一たん重合した素材を破壊している可能性が考えられた。それゆえポリカーボネートポリマーに金属酸化物を加え樹脂化し(ペレット)、そして成型化(プラスチック)の工程を実際通りにして作り、それらを検体として材質中ビスフェノールAを測定することとした。金属酸化物はTiO2,ZnO,MgO,Fe2O3,SiO2,Al2O3およびT社製抗菌剤Nである。
結果と考察
プラスチックはモノマーの重合体であるポリマーに添加剤を加えた加熱成型化したものである。熱可塑性ポリマーにあっては、所要の添加物を通例粉末状下均等に混合し、200~350℃に熱し、射出ブロー成型、チューブブロー成型などでビン(プラスチック)などが作られている。試験はペレットと切片状のプラスチック両者について、それぞれに各金属酸化物を単独または酸化防止剤と組み合わせ、原則として0,0.5,1,1.5および2%の段階的量を添加した。ペレットに加えられたZnO,抗菌剤Nの遊離は0%,30.4,0.5%300,1%609,2%1044各遊離ビスフェノールAの遊離を示したが大約ペレットの例と同様またはより少ないデータであった。ある種の金属酸化物は光または加熱により活性酸素を放出することが知られている。実際上抗菌磁器タイルにTiO2が使われており、抗菌剤Nは銀とジルコニュームと酸化亜鉛60%のセラミックとされている。ZnOは酸化還元型の触媒としても作られている。一方SiO2,Al2O3は安定な酸化物として知られている。ポリカーボネート樹脂(ペレット)成型時の280℃の加熱でZnO,TiO2又は抗菌剤Nは強く酸化剤として作用したと考えられる。TiO2+ZnOの2対1混合金属酸化物の遊離量はZnOとTiO2の実験値から得られる計算値と一致したことが裏付けとなる。ペレットを再加熱して作るプラスチックではペレットより遊離ビスフェノールAの量は少なかった。この理由はプラスチック成型温度を280℃,310℃,340℃と昇温とするとき、遊離ビスフェノールAの減少傾向が見られたことから再加熱で揮発性のビスフェノールAが蒸散したのではと考えられた。
結論
本来プラスチック添加剤は、高分子ポリマーたる重合体(樹脂)に何ら影響を与えないものとして、添加剤は添加剤として個別に安全性が評価され、ほぼ自由にプラスチックに添加されてきた。ポリカーボネートと抗菌剤添加の材質中遊離成分の増加は新しい発見であり、その化学的解明は今後の衛生基準作成上検討事項の一つとなろう。一方ポリカーボネート製プラスチックの規格値オーバーのビスフェノールA遊離原因は減
少的に解明された。結果より規格内の製品をメーカーは制作できる技術的指標が得られた。

公開日・更新日

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研究報告書(紙媒体)