原発性高脂血症に関する調査研究

文献情報

文献番号
202011002A
報告書区分
総括
研究課題名
原発性高脂血症に関する調査研究
課題番号
H30-難治等(難)-一般-003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
斯波 真理子(独立行政法人国立循環器病研究センター 分子病態部)
研究分担者(所属機関)
  • 石橋 俊(自治医科大学 医学部 内科学講座 内分泌代謝学部門)
  • 横山 信治(中部大学大学 応用生物学部 生物機能開発研究所)
  • 島野 仁(筑波大学大学院人間総合科学研究科 内分泌代謝・糖尿病内科)
  • 横手 幸太郎(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
  • 武城 英明(東邦大学 医学部医学科臨床検査医学研究室(佐倉))
  • 山下 静也(地方独立行政法人りんくう総合医療センター)
  • 塚本 和久(帝京大学医学部内科学講座)
  • 林 登志雄(名古屋大学医学部附属病院 老年内科)
  • 池脇 克則(防衛医科大学校 抗加齢血管内科)
  • 後藤田 貴也(杏林大学 医学部)
  • 土橋 一重(山梨大学 大学院総合研究部小児科 )
  • 宮本 恵宏(国立研究開発法人国立循環器病研究センター オープンイノベーションセンター)
  • 竹上 未紗(国立循環器病研究センター 研究基盤開発センター 予防医学・疫学情報部)
  • 関島 良樹(国立大学法人 信州大学 学術研究院医学系)
  • 石垣 泰(岩手医科大学 医学部)
  • 岡崎 啓明(東京大学 医学部附属病院)
  • 野原 淳(石川県立中央病院 遺伝子診療科)
  • 小山 信吾(山形大学医学部)
  • 稲垣 恭子(日本医科大学 糖尿病・内分泌代謝内科)
  • 尾野 亘(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)
  • 小関 正博(大阪大学大学院医学系研究科循環器内科)
  • 代田 浩之(順天堂大学 医学部 循環器内科 )
  • 高橋 学(自治医科大学内科学講座内分泌代謝学部門)
  • 中村 公俊(熊本大学大学院生命科学研究部 小児科学講座)
  • 三井田 孝(順天堂大学大学院 医学研究科)
  • 川尻 剛照(金沢大学医薬保健研究域医学系循環器内科学)
  • 南野 哲男(香川大学医学部循環器・腎臓・脳卒中内科)
  • 岡崎 佐智子(冨田 佐智子)(東京大学 保健・健康推進本部)
  • 多田 隼人(金沢大学附属病院 循環器内科)
  • 和田 淳(国立大学法人岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 腎・免疫・内分泌代謝内科学)
  • 小倉 正恒(国立循環器病研究センター研究所 病態代謝部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
指定難病である家族性高コレステロール血症(FH)(ホモ接合体)、LCAT欠損症、シトステロール血症、タンジール病、原発性高カイロミクロン血症、脳腱黄色腫症、無βリポタンパク血症の7疾患は著明な脂質異常症や黄色腫の出現を契機に疑われるが、非専門家にとって正確な診断は困難である。そのため速やかな難病認定や治療の開始もできず、合併症の発症や生命予後の悪化を来たしている。そこで各疾患の担当責任者を決め、上記課題解決に向けた取組みを学会横断的オールジャパン体制で行う。
研究方法
難治性脂質異常症に対する診療体制の構築として非専門医が脂質難病患者に遭遇した場合に専門医に紹介できるシステムづくりや、紹介までの間に可能な検査、疾患の概要が手軽に理解できる日本語総説や患者への説明資料の作成と公開(班独自のホームページを開設)を行う。海外で脂質難病診療・研究に従事する医師・研究者に向けて各疾患の英語総説も執筆する。また診療の実際や予後の現状、危険因子などについて把握するとともに、その後前向きに患者を追跡することにより、難病患者におけるイベント発生率・死亡率を明らかにし、予後改善への貢献、診療ガイドラインの改訂につなげるために、前期班(班長:石橋俊)から継承したPROLIPID研究のレジストリシステムを7疾患すべてに拡充する。各疾患について、最新の文献や診療実態と照らし合わせて、診断基準や臨床調査個人票の改善案を策定し、次期の全面改定時期に備えて学会承認を得る。「難治性家族性高コレステロール血症患者会」と「高コレステロール血症患者の集い」を共催し、アンケート調査により難病患者のニーズを明確にする。原発性脂質異常症のうち成人指定難病と小児慢性特定疾病の該当疾患と分類法が大きく異なっていることによる問題点を明らかにし解決策を講じる。
結果と考察
班独自のホームページが令和元年7月に公開され、その後指定難病7疾患すべての日本語総説(一般医家向け)が公開された。疫学研究についてはFH患者及び原発性高カイロミクロン血症患者の現行レジストリ(PROLIPID)の登録を進め、担当する7つの指定難病についてレジストリ項目を決め、登録システムを構築し、国立循環器病研究センター倫理委員会の承認を得た。FHを除く6疾患の診断基準については疾患担当責任者が中心となり、改善案が作成され、班員全員による議論により完成したものが令和2年2月の日本動脈硬化学会理事会で学会承認を得、全体改訂の案内を受けて難病検討委員会に提出した。FHについては2022年の動脈硬化性疾患予防ガイドライン改訂に向けて班員を含む診断基準作成委員会が発足し、すでに会議が実施された。また原発性脂質異常症のうち成人指定難病と小児慢性特定疾病の該当疾患が異なるために移行期に行き場がなくなるアポリポタンパクA-I欠損症(新規指定難病候補)の診断基準を作成した。また他の指定難病・小児慢性特定疾病については移行期に問題が生じないことが班会議で確認された。難病の普及啓発については班員が多くの学会で疾患啓発を実施し、日本語総説を含む情報発信を積極的に実施した。担当7疾患の英語総説はすべて日本動脈硬化学会の公式英文誌であるJ Atheroscler Thromb誌にアクセプト・公開された。患者の不安軽減のために平成30年度と令和元年度に難治性家族性高コレステロール血症患者会と共催した「高コレステロール血症患者の集い」については令和2年度は新型コロナウイルス感染のため開催しなかった。今後Web開催の予定である。
結論
各疾患担当者の任命は、できる限り早期に正しい診断ができる難病の医療提供体制を整える。また班独自のHPによる積極的な情報発信、学会シンポジウム等での班員による積極的な疾患啓発とPROLIPIDの入り口の見える化は上記診療体制に全国の非専門医が容易にアプローチできる機会を与える。このことは難病患者診断率および受給者証取得者数の向上に寄与し、難病法の施策に直接的に反映する。英語総説の発表は脂質難病を治療している海外医師に貴重な情報を提供し、国際貢献および論文引用等、間接的な波及効果が期待できる。患者向けの療養上の注意点のまとめをHPで公開し、また患者会と連携して「患者の集い」(公開講座とグループワーク)を共催することにより、患者の不安を和らげ、QOLや予後を改善することも施策に直接的に関与する。「持続可能な社会保障制度の確立」という難病法の原則を維持しつつ、現行の診断基準・診療ガイドラインの蓋然性の評価や診断・治療に必須な未保険収載項目の洗い出し、小児慢性特定疾病と成人指定難病の間の齟齬に対する対応、移行期医療の課題の明確化と解決策の提示は、難病患者の予後改善に繋がるとともに今後の厚生労働行政の政策形成の過程に活用される可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202011002B
報告書区分
総合
研究課題名
原発性高脂血症に関する調査研究
課題番号
H30-難治等(難)-一般-003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
斯波 真理子(独立行政法人国立循環器病研究センター 分子病態部)
研究分担者(所属機関)
  • 石橋 俊(自治医科大学 医学部 内科学講座 内分泌代謝学部門)
  • 横山 信治(中部大学大学 応用生物学部 生物機能開発研究所)
  • 島野 仁(筑波大学大学院人間総合科学研究科 内分泌代謝・糖尿病内科)
  • 横手 幸太郎(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
  • 武城 英明(東邦大学 医学部医学科臨床検査医学研究室(佐倉))
  • 山下 静也(地方独立行政法人りんくう総合医療センター)
  • 塚本 和久(帝京大学医学部内科学講座)
  • 林 登志雄(名古屋大学医学部附属病院 老年内科)
  • 池脇 克則(防衛医科大学校 抗加齢血管内科)
  • 後藤田 貴也(杏林大学 医学部)
  • 土橋 一重(山梨大学 大学院総合研究部小児科 )
  • 宮本 恵宏(国立研究開発法人国立循環器病研究センター オープンイノベーションセンター)
  • 竹上 未紗(国立循環器病研究センター 研究基盤開発センター 予防医学・疫学情報部)
  • 関島 良樹(国立大学法人 信州大学 学術研究院医学系)
  • 石垣 泰(岩手医科大学 医学部)
  • 岡崎 啓明(東京大学 医学部附属病院)
  • 野原 淳(石川県立中央病院 遺伝診療科)
  • 小山 信吾(山形大学医学部)
  • 稲垣 恭子(日本医科大学 糖尿病・内分泌代謝内科)
  • 尾野 亘(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)
  • 小関 正博(大阪大学大学院医学系研究科循環器内科)
  • 代田 浩之(順天堂大学 医学部 循環器内科 )
  • 高橋 学(自治医科大学内科学講座内分泌代謝学部門)
  • 中村 公俊(熊本大学大学院生命科学研究部 小児科学講座)
  • 三井田 孝(順天堂大学大学院 医学研究科)
  • 川尻 剛照(金沢大学医薬保健研究域医学系循環器内科学)
  • 南野 哲男(香川大学医学部循環器・腎臓・脳卒中内科)
  • 岡崎 佐智子(冨田 佐智子)(東京大学 保健・健康推進本部)
  • 多田 隼人(金沢大学附属病院 循環器内科)
  • 和田 淳(国立大学法人岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 腎・免疫・内分泌代謝内科学)
  • 小倉 正恒(国立循環器病研究センター研究所 病態代謝部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
指定難病である家族性高コレステロール血症(FH)(ホモ接合体)、LCAT欠損症、シトステロール血症、タンジール病、原発性高カイロミクロン血症、脳腱黄色腫症、無βリポタンパク血症の7疾患は著明な脂質異常症や黄色腫の出現を契機に疑われるが、非専門家にとって正確な診断は困難である。そのため速やかな難病認定や治療の開始もできず、合併症の発症や生命予後の悪化を来たしている。そこで各疾患の担当責任者を決め、上記課題解決に向けた取組みを学会横断的オールジャパン体制で行う。
研究方法
難治性脂質異常症に対する診療体制の構築として非専門医が脂質難病患者に遭遇した場合に専門医に紹介できるシステムづくりや、紹介までの間に可能な検査、疾患の概要が手軽に理解できる日本語総説や患者への説明資料の作成と公開(班独自のホームページ開設)を行う。海外で脂質難病診療・研究に従事する医師・研究者に向けて各疾患の英語総説も執筆する。また診療の実際や予後の現状、危険因子などについて把握するとともに、その後前向きに追跡することにより、難病患者におけるイベント発生率・死亡率を明らかにし、予後改善への貢献、診療ガイドラインの改訂につなげるために、前期班(班長:石橋俊)から継承したPROLIPID研究のレジストリシステムを7疾患すべてに拡充する。各疾患について、最新の文献や診療実態と照らし合わせて、診断基準や臨床調査個人票の改善案を策定し、次期の全面改定時期に備えて学会承認を得る。「難治性家族性高コレステロール血症患者会」と「高コレステロール血症患者の集い」を共催し、アンケート調査により難病患者のニーズを明確にする。原発性脂質異常症のうち成人指定難病と小児慢性特定疾病の該当疾患と分類法が大きく異なっていることによる問題点を明らかにし解決策を講じる。
結果と考察
班独自のホームページが令和元年7月に公開され、その後指定難病7疾患すべての日本語総説(一般医家向け)が公開された。疫学研究についてはFH患者及び原発性高カイロミクロン血症患者の現行レジストリ(PROLIPID)の登録を進め、担当する7つの指定難病についてレジストリ項目を決め、登録システムを構築し、国立循環器病研究センター倫理委員会の承認を得た。FHを除く6疾患の診断基準については疾患担当責任者が中心となり、改善案が作成され、班員全員による議論により完成したものが令和2年2月の日本動脈硬化学会理事会で学会承認を得、全体改訂の案内を受けて難病検討委員会に提出した。FHについては2022年の動脈硬化性疾患予防ガイドライン改訂に向けて班員を含む診断基準作成委員会が発足し、すでに会議が実施された。また原発性脂質異常症のうち成人指定難病と小児慢性特定疾病の該当疾患が異なるために移行期に行き場がなくなるアポリポタンパクA-I欠損症(新規指定難病候補)の診断基準を作成した。また他の指定難病・小児慢性特定疾病については移行期に問題が生じないことが班会議で確認された。難病の普及啓発については班員が多くの学会で疾患啓発を実施し、日本語総説を含む情報発信を積極的に実施した。担当7疾患の英語総説はすべて日本動脈硬化学会の公式英文誌であるJ Atheroscler Thromb誌にアクセプト・公開された。患者の不安軽減のために平成30年度と令和元年度に難治性家族性高コレステロール血症患者会と共催した「高コレステロール血症患者の集い」については令和2年度は新型コロナウイルス感染のため開催しなかった。今後Web開催の予定である。
結論
各疾患担当者の任命は、できる限り早期に正しい診断ができる難病の医療提供体制を整える。また班独自のHPによる積極的な情報発信、学会シンポジウム等での班員による積極的な疾患啓発とPROLIPIDの入り口の見える化は上記診療体制に全国の非専門医が容易にアプローチできる機会を与える。このことは難病患者診断率および受給者証取得者数の向上に寄与し、難病法の施策に直接的に反映する。英語総説の発表は脂質難病を治療している海外医師に貴重な情報を提供し、国際貢献および論文引用等、間接的な波及効果が期待できる。患者向けの療養上の注意点のまとめをHPで公開し、また患者会と連携して「患者の集い」(公開講座とグループワーク)を共催することにより、患者の不安を和らげ、QOLや予後を改善することも施策に直接的に関与する。「持続可能な社会保障制度の確立」という難病法の原則を維持しつつ、現行の診断基準・診療ガイドラインの蓋然性の評価や診断・治療に必須な未保険収載項目の洗い出し、小児慢性特定疾病と成人指定難病の間の齟齬に対する対応、移行期医療の課題の明確化と解決策の提示は、難病患者の予後改善に繋がるとともに今後の厚生労働行政の政策形成の過程に活用される可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202011002C

収支報告書

文献番号
202011002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,000,000円
(2)補助金確定額
12,946,000円
差引額 [(1)-(2)]
54,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,137,801円
人件費・謝金 2,122,089円
旅費 54,520円
その他 3,632,513円
間接経費 3,000,000円
合計 12,946,923円

備考

備考
自己資金923円

公開日・更新日

公開日
2022-01-20
更新日
-