女性特有の疾病に対する健診等による介入効果の評価研究

文献情報

文献番号
202010002A
報告書区分
総括
研究課題名
女性特有の疾病に対する健診等による介入効果の評価研究
課題番号
19FB1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
大須賀 穣(国立大学法人東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 杉森 裕樹(大東文化大学 スポーツ・健康科学部健康科学科)
  • 五十嵐 中(横浜市立大学 医学群健康社会医学ユニット)
  • 吉村 典子(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター ロコモ予防学講座)
  • 平池 修(和田 修)(東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科)
  • 後藤 励(慶應義塾大学 大学院経営管理研究科)
  • 前田 恵理(秋田大学大学院医学系研究科衛生学・公衆衛生学講座)
  • 松崎 政代(大阪大学大学院 医学系研究科 保健学専攻)
  • 吉原 愛(伊藤病院)
  • 藤井 知行(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 女性の健康の包括的支援政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
9,300,000円
研究者交替、所属機関変更
なし

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、平成29年度に東京大学産婦人科学大須賀穣教授を班長として開始された「女性の健康の社会経済学的影響に関する研究事業(H29-女性-一般-001)」を発展させ、女性に頻度の多い疾患を多面的かつ医療経済学的に評価し、社会の健康支援体制を確立することを主たる目的としており、医療経済、臨床、疫学など幅広い視点から研究を遂行している。
研究方法
1.子宮内膜症治療における経口避妊薬・低用量エストロゲン-プロゲスチン治療の費用対効果評価を開始した。別途子宮内膜症患者の労働生産性に着目し、人的資本法を用いて治療介入の影響を試算した。卵巣感における健康状態の遷移モデルを作成し、費用対効果を検討した。
2.働く女性と健康に関するアンケート調査として効用値に換算可能なインデックス型QOL調査票としてEQ-5D-3Lを、月経不順の有無、月経随伴症状の詳細とともに調査した。
3.がん検診を受ける需要行動を明らかにするため、年代別に各100名ずつ、比較対象として男性を600名リクルートし、健康関連QOL、日本語版HLC(主観的健康統制感)、患者が健康に対してどのような信念体型をもっているかということ、受容行動調査項目、ヘルスリテラシーを問診した。
4.全国の一般国民パネルから無作為に抽出された25歳から44歳までの働く女性で定期的な産婦人科通院をしていない者(3000名)を対象にMDQによる月経症状の評価、SF-36によるQOL測定、WHO-HPQによる生産性損失の測定を実施し、受診勧奨介入をした。
5.大阪府の健診データとレセプトデータを活用し、40-50歳代の14,110人の女性を対象に、朝食欠食とうつ発症の関連を検討した。
6.一般住民を対象とした大規模住民コホートにおいて、10年後の同年代の女性の骨粗鬆症有病率を比較し、10年間で差がみられるかを検討した。
7.6のコホートにおいて、甲状腺機能項目の測定を実施した。
結果と考察
子宮内膜症は積極的な受診や治療を受けることによって、企業の立場から考えると年平均149,000円が実績を伴わない給与の支払抑制ができると推計され、重症度別ではそれぞれ「超重症」の場合は年平均約52万円、「重症」の場合は年平均約36万円、そして「中等症」の場合は年約12万円が抑制できると推計されたことから、子宮内膜症の費用対効果は企業にとっても十分割に合うものであることが考えられた。PMSに関しては、代表的月経随伴症状でありながらも働く女性においても受診勧奨後に受診したのは7%未満であったこと、症状が重い女性ほど受診する傾向があったこと、受診者では月経中・後の症状が追跡期間中に有意に改善し、追跡時点の月経後症状は未受診者より有意に軽かったことは、今後受診勧奨の方法さえ改善すればPMSについての大幅な経済効果の改善が認められる可能性が示唆される。今回のアンケートでは20~30歳代のほうが検診の必要性を認識することが多かった。不安やQOLでは、不安がある人ほど受診しない傾向があった。健康で活力がある人ほど検診の必要性を認識していた。40-50歳代女性を対象にした朝食欠食とうつ発症の関連を検討では、抗うつ剤を処方された3.13%において、朝食欠食者は16.39%であり、抗うつ薬処方ありには、朝食欠食(HR=1.31, p=0.0273)、睡眠不足(HR=1.50, p<0.001)との有意な関連が示されたことから、女性に頻度の多い、うつの効率的な拾い上げは労働効率の改善に繋がる可能性が示唆された。骨粗鬆症の有病率は、ベースライン調査時26.9%、10年後24.4%であり、全体として低下していたが有意ではなかった。しかし各年代別に比較したところ、70歳以上においては10年後のほうが有意に低下していることがわかった。女性の高齢者の骨粗鬆症は近年において低下していることがわかった。大規模住民コホート第3回調査の女性参加者において、甲状腺機能項目の測定を実施したところ、甲状腺機能亢進症がオッズ比4.1 95%CI 1.08-15.9)と関連を認めた。
結論
予防医学の視点から、より多くの女性の健康を向上させるためには、検診という存在を欠かすことはできない。検診受診率の向上を考える上で、質を担保した医療技術評価は今後ますます需要を増すであろうと推測され、本研究でQOLの変化を示すことは非常に重要で有益であると考えられる。これまでに検討が不十分であった子宮内膜症、月経困難症、更年期障害、PMSおよびPMDDに加え、女性の視点で特化した骨粗鬆症、甲状腺機能障害などに対し、本研究では新たな視点をもって検討していることから、ユニークな知見を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2022-05-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202010002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,000,000円
(2)補助金確定額
11,994,000円
差引額 [(1)-(2)]
6,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,979,947円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 4,314,719円
間接経費 2,700,000円
合計 11,994,666円

備考

備考
差額の666円は自己資金

公開日・更新日

公開日
2022-05-17
更新日
-