健康危機発生時の地方衛生研究所における調査及び検査体制の現状把握と検査等の精度管理の体制に関する調査研究

文献情報

文献番号
200738005A
報告書区分
総括
研究課題名
健康危機発生時の地方衛生研究所における調査及び検査体制の現状把握と検査等の精度管理の体制に関する調査研究
課題番号
H17-健康-一般-016
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
田中 智之(堺市衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 敏嗣(神戸市環境保健研究所)
  • 小倉 肇(岡山県環境保健センター)
  • 今井 俊介(市立奈良病院病理科)
  • 井端 泰彦(京都府保健環境研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域健康危機管理研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地方衛生研究所(地衛研)は、健康危機発生時に第一線で原因究明等に関与する最も重要な研究機関の一つである。健康危機に対して、地衛研の検査体制能力を微生物部門、理化学部門の両面から現状把握を行い、将来構築すべき健康危機管理体制に資する資料とすることを研究目的とした。
研究方法
(1) 天然痘ウイルスの免疫学的迅速・簡便診断法の開発と健康危機管理構築
(2) バイオテロ等健康危機発生時の電子顕微鏡的ウイルス検査の精度管理
(3) 化学物質モデルにおける多検体(多成分)迅速、一斉検査の精度管理等に関する研究
(4) 我が国での健康危機管理体制時の検査精度管理(GLP等)の検討
(5) 健康危機管理プロジェクトの組織化と近畿地研ブロックでの連携構築
結果と考察
1)蛍光抗体法による痘瘡ウイルス診断模擬訓練では、三分の二の地衛研が診断、対応出来る事が分かった。
2)電子顕微鏡によるウイルス情報の収集、同定の研修による精度管理正解率は年々向上した。電子顕微鏡は未知のウイルス性疾患から病原体の検出・診断に有効な方法である。
3) GC/MS, ICP/MS, LC/MSなどの研修から、未知化学物質の検出・同定の対応、技術能力の向上に成果をあげ今後も大きく貢献できる
4)ポジティブリスト(PL)制度により、食品衛生検査が増加し、農薬等の検査項目数は増加している。分析機器の老朽化、機器の不足、需用費の不足、担当職員の不足等の問題点がある。行政当局への予算の拡充、分析法の充実・確立等が要望される。
5) 健康危機発生時の「健康危機管理・対応要領」の作成には、「保健所への支援に関する項目」を明記した。模擬訓練から情報の一元管理、検査の優先順位の決定・指示等の機能を所管する委員会が必要である。
結論
・痘瘡ウイルスによる健康危機発生時には、全国地衛研の67%で病原体診断の可能性が認められた。
・イムノクロマト法による痘瘡ウイルス検出法が構築された。
・健康危機管理発生時に対応できる電子顕微鏡による病原ウイルス検出技術が研修により向上した。
・ケミカルテロを含めた未知化学物質の検出技術や対応能力が、実習、研修を重ねることにより向上した。
・残留農薬等のポジティブ制度の制定に伴い、検査品目数の増加、GLP、SOPの見直しする地衛研が増加し  た。
・分析機器の老朽化、対応職員の減少、農薬標準品の確保等に多くの課題が見られた。
・健康危機管理のモデル要領の作成を試み、普遍的な要領に発展させ、保健所の支援項目を追加した。

公開日・更新日

公開日
2008-05-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200738005B
報告書区分
総合
研究課題名
健康危機発生時の地方衛生研究所における調査及び検査体制の現状把握と検査等の精度管理の体制に関する調査研究
課題番号
H17-健康-一般-016
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
田中 智之(堺市衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 小倉 肇(岡山県環境保健センター所長)
  • 田中 敏嗣(神戸市環境保健研究所長)
  • 今井 俊介(市立奈良病院・病理部長   )
  • 井端 泰彦 (京都府保健環境研究所長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域健康危機管理研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
バイオテロによる健康危機管理対応として、ウイルス同定模擬訓練、電子顕微鏡によるウイルス検査精度の向上を図った。
化学物質による健康危機では、危機時の対応力の高度化、迅速で精度の高い分析能力、多成分迅速一斉検査技術力の向上、連携の強化、情報の共有化等を目的とした。
分析・特定の根幹をなす精度管理では、残留農薬等検査の問題点等及び現状把握等を行った。
模擬訓練を通して健康危機発生時に不可欠なモデル要領案を検証・修正し作成を試みた。
研究方法
痘瘡ウイルスと同属のワクシニアウイルス感染細胞を直接蛍光抗体法で判定した。
電顕によるウイルス検出は固定ウイルスを用い、検鏡・判定、評価した。
有機化学物質の迅速分析・同定にはChemofind 2008システム、有害金属類ではICP-MSを用いた。食物添加のシアンとヒ素の検出は簡易検査キットによった。
PL制度実施3カ月後と1年後でGLPのアンケート調査を行った。
モデル要領案に対する意見・修正、未知物質の検査訓練、既知物質で検査協力を再確認しつつ要領案を充実させた。
結果と考察
蛍光抗体法の正答率は60%であった。
電顕による検出成績は成18年度に比べワクシニアウイルス51.6%から74.1%に、インフルエンザウイルス74.2%から92.6%に向上した。
Chemofind 2008による同定試験は優れた成績であった。ICP-MSによる同定システムの研修では円滑な機器使用が確認できた。簡易検査キットはスクリーニングとして有用であった。
農薬等の検査品目は 80.0%の地衛研で101品目以上実施し前年度より増加した。PL制導入後、SOPを改訂した地研が88.0%にみられた。問題点は分析機器の不足・老朽化、需用費不足、担当職員の不足、一律基準値の問題視等であった。行政当局への予算拡充の要望が高い。
模擬訓練を通し、健康危機管理委員会の設置、検体受付の円滑化・検査の優先順位、各種マニュアルの整備、要領案に保健所への支援項目を追加した。
結論
痘瘡ウイルス健康危機模擬訓練では、地衛研の84%が対応できた。
電顕によるウイルス検査の精度管理では、研修による検査能力が向上した。 
未知化学物質同定の研修から化学テロ対象の有機化学物質、金属類等に健康危機管理対応能力の大幅な向上の足がかりが作れた。
PL制施行に伴う備品の新規購入、需用費の増加、SOPの見直し等、地衛研の積極的対応が伺えた反面、機器類の老朽化、機器・需用費の絶対不足、担当職員の老齢化・不足等半数以上で問題が山積している。
要領案は継続した訓練を通して検証・修正することが重要である。 

公開日・更新日

公開日
2008-05-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200738005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ハイオテロを想定して、天然痘ウイルスの簡易診断法の開発、電子顕微鏡によるウイルス検索・判定を通じた模擬訓練を行い、全国地方衛生研究所に健康危機対応能力の向上や意識向上をさせた。その上で、健康危機の原因となるウイルス、化学物質検査の精度管理の実態を把握しつつ、モデル要領を訓練を通じて実効性の検証・問題点の修正をしつつ作成し、健康危機発生時の連携構築の向上に向けた足がかりを高めた。
臨床的観点からの成果
輸入天然痘ウイルスやサル痘では、典型的な丘疹の診察では臨床的診断はそれほど困難ではないといわれている。しかし、同病の病期や非典型例では鑑別診断は重要で、そのためにはウイルス学的診断が必須である。化学物質による健康被害においても、皮膚症状、吐気・嘔吐、頭痛、痙攣、縮瞳等からでは正確な物質同定は不可能である。本研究で構築された簡易診断法あるいは多成分一斉迅速検査は鑑別診断、原因物質特定診断としてきわめて重要で臨床医に寄与するところは大である。
ガイドライン等の開発
天然痘ウイルス、サル痘ウイルスの検査診断、電子顕微鏡による病原ウイルスの判定のマニュアルは作成されたが、ガイドラインの作成にはいたっていない。また、化学物質による健康被害の原因物質特定においても、マニュアル、あるいは要領の作成を行ったが、ガイドラインの作成にはいたっていない。
その他行政的観点からの成果
ウイルスによる健康被害、化学物質による健康被害を想定した模擬訓練の実施から、マニュアルの策定、要領の策定が出来た。さらに、健康危機発生時の連携について、問題意識の確認、検査・情報等の密な連携構築が確認できた。特に近畿ブロック内では、連携の向上が得られた。
その他のインパクト
健康危機発生時の検査体制の充実を図るための精度管理の強化が検討でき、今後の取り組みに大きな影響を与えた。マイナスのインパクトとなるが、模擬訓練では、伝統ある衛生研究所においても正解、正当が得られず、検査体制の見直し、研修会の増加等による取り組みの改善が見られた。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
2件
1. Microbiol. Immunol.2005, 49(3), 219-225 2. J. Med. Microbiol. 2007 79, 1219-1228
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
天然痘ウイルスの免疫学的迅速・簡便診断法の確立と健康危機管理構築. 第66回日本公衆衛生学会総会 バイオテロ等健康危機発生時の電子顕微鏡的ウイルス検査の精度管理 第23回中国四国ウイルス研究会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-11-24
更新日
-