糖尿病の実態把握と環境整備のための研究

文献情報

文献番号
202009044A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病の実態把握と環境整備のための研究
課題番号
20FA1016
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
山内 敏正(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 祐一郎(関西電力病院)
  • 菊池 透(埼玉医科大学病院 小児科)
  • 村田 敏規(信州大学 医学部)
  • 赤澤 宏(東京大学医学部附属病院)
  • 東 尚弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センターがん登録センター)
  • 後藤 温(公立大学法人 横浜市立大学 学術院 医学群 データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻)
  • 野田 龍也(公立大学法人 奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 田中 哲洋(東京大学 医学部腎臓・内分泌内科)
  • 大杉 満(国立国際医療研究センター糖尿病情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病は健康日本21(第二次)や医療計画においても重点疾患として扱われている、我が国の行政上も重要な疾患である。近年、電子化レセプトの悉皆情報である匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベース(NDB)等の大規模データの研究が進んでおり、糖尿病患者における糖尿病診療の質として検査の実施割合等が明らかになってきている。そこで本研究は、NDB等の各種調査を用いて日本全体における糖尿病及び合併症の更なる実態把握を行い、その重症化予防における課題を抽出し、解決策を検討する。また、患者へ調査を行うことで、医療受給者側としての患者の視点も包含した望ましい医療提供体制への課題の抽出と解決策を検討することを目的とする。本年度は1年目であり、以下の通り研究を進めた。
研究方法
本研究は、【糖尿病及び合併症の実態把握に関する研究】、【糖尿病患者からの視点に関する研究】の大きな2つのテーマにわけ、研究を推進した。
今年度は、全体班会議2回、日本糖尿病協会事務局との協議2回、その他研究班員間で月1回以上の打ち合わせなどを行い、議論を深めた。
結果と考察
【1. 糖尿病及び合併症の実態把握に関する研究】
(1)匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベースを用いた研究 
本研究班が取り組むNDB研究テーマ(医療の質、初回糖尿病薬処方の現状、重症低血糖、1型糖尿病、妊娠糖尿病、高齢者、がん等)について選定した。2014下半期~17年度に単剤の初回外来糖尿病薬処方(インスリンを除く)があった成人2型糖尿病患者は約110万人で、この期間の処方割合は、ビグアナイド薬が増加、DPP-4阻害薬が減少していた。また、認定教育施設の有無、都道府県間で処方実態が大きく違うことが明らかとなった。我が国における初回外来糖尿病薬の処方実態をNDBデータで算出しており、今後診療ガイドラインや診療手引き、医療連携のあり方など、糖尿病診療の質を向上する方策につながることが期待される。
(2)糖尿病に対する適切な医療提供体制や指標の検討 
厚生労働省健康局と協議し、第8次医療計画の糖尿病対策指標案について、本研究班で検討することとなった。今年度は、過去の糖尿病領域の医療計画糖尿病領域指標作成経緯や、糖尿病領域におけるクリニカルインディケーター等の調査を行い、来年度は修正デルファイ法にて具体的な指標案を検討することを計画した。厚生労働省健康局と協議し、第8次医療計画の糖尿病対策指標案について本研究班で検討することとなったため、本研究の成果は医療計画の議論への貢献が期待される。
【2. 糖尿病患者からの視点に関する研究】
(1)糖尿病患者における診療・療養体験の調査研究
過去の類似調査として、1型糖尿病患者に対する調査、脳卒中患者・家族の調査、がんの患者体験調査のデザインや調査票内容を精査した。まずは、日本糖尿病協会と協力して、少人数の糖尿病患者に半構造化インタビュー調査を行った後に、その結果を基にした質問票を作成し、糖尿病協会を通じて全国の患者会へアンケート調査を行う計画とした。糖尿病の診療・療養について、既存データではアプローチが困難な患者の主観的意見・生活の実態や困難について調査し課題を抽出することで、糖尿病患者における医療提供体制の見直しや、診療・療養の質の向上への貢献が期待される。
(2)1型糖尿病患者に関する研究
小児期発症の1型糖尿病患者に対する治療やQOLの実態を明らかにするため、インスリン治療研究会第5コホートに登録した1168名を対象に、糖尿病専門医の在籍施設別、地域別等で、治療状況、療養行動について解析した。その結果、専門医在籍施設は不在施設に比し、HbA1cが低く、CSII、カーボカウント等の使用頻度が高い傾向であった。全国を7つの地域に分けた場合のHbA1cに明らかな違いはなかった。地域別学校での療養行動の場所の検討では、近畿、中部で教室が多い傾向があり、その他の地域では保健室が多かった。1型糖尿病の検証については、小児1型糖尿病患者の治療の現状を明らかにすることで、社会、特に学校社会において小児期発症1型糖尿病に対する正確な理解と支援が広まるような対策に資する資料となることが期待される。
結論
本研究は、【糖尿病及び合併症の実態把握に関する研究】、【糖尿病患者からの視点に関する研究】の大きな2つのテーマに分け、研究を推進した。
本年度は、2型糖尿病患者に対する糖尿病薬初回処方の実態を明らかにし、その他の研究の今後の道筋を決定した。来年度以降も引き続き我が国の糖尿病対策の医療政策に資する成果を目指して研究を進める。

公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202009044Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,000,000円
(2)補助金確定額
10,873,000円
差引額 [(1)-(2)]
127,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,659,869円
人件費・謝金 162,825円
旅費 100,000円
その他 2,413,157円
間接経費 2,538,000円
合計 10,873,851円

備考

備考
851円は自己資金

公開日・更新日

公開日
2022-04-12
更新日
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