市民によるAED等の一次救命処置のさらなる普及と検証体制構築の促進及び二次救命処置の適切な普及に向けた研究

文献情報

文献番号
202009042A
報告書区分
総括
研究課題名
市民によるAED等の一次救命処置のさらなる普及と検証体制構築の促進及び二次救命処置の適切な普及に向けた研究
課題番号
20FA1014
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 哲也(帝京大学医学部 救急医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 丸川 征四郎(吹田徳洲会病院)
  • 畑中 哲生(救急振興財団 救急救命九州研修所)
  • 石見 拓(京都大学 保健管理センター)
  • 田邉 晴山(財団法人救急振興財団救急救命東京研修所 )
  • 森村 尚登(東京大学大学院医学系研究科 外科学専攻 生体管理医学講座 救急科学分野)
  • 黒田 泰弘(香川大学 医学部)
  • 中原 慎二(帝京大学医学部 救急医学講座)
  • 太田 邦雄(金沢大学医薬保健研究域医学系)
  • 西山 知佳(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 臨床看護学講座 クリティカルケア看護学分野)
  • 玉城 聡(帝京短期大学 専攻科 臨床工学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,230,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成16年の市民によるAED使用の認可以降、市中で利用可能なAED(PAD)の設置が広がり、時期を同じくしてBLSの普及もみられた。しかし救急蘇生統計によると、市民により心停止の時点が目撃された際のBLS実施やAED使用の割合は高いとは言えず、救命講習の内容改善、MC体制における検証などの課題がある。またBLSに続いて医療機関等で行われるALSについても各地域での普及は一律ではなく、またその充足状況を測る指標もない状況にある。
そこで本研究では、基礎データとしてのAED販売・設置台数把握に関する調査、内部情報を含む市民による使用事例の検証に関する検討、心理的阻害因子をふまえた教育プログラムに関する検討、心停止発生通知システムの実地調査における検討、小児・乳児における院外心停止の調査、ALSに関する検討の一環としてECPR多施設登録データからの実地医療における検証と教育プログラム構築に向けた検討を実施した。
研究方法
AEDの普及状況に係わる調査では、製造販売業者の協力のもと当年度のAED販売台数(PAD・医療機関・消防機関別)、把握されている廃棄台数の取りまとめを継続し、耐用年数をふまえた設置台数の推計を行った。
内部情報を含めた市民によるAED使用事例の検証に関する検討では、障壁の把握のため製造販売業者へのアンケート調査を実施した。また現在市販に向け検討がされているオートショックAEDに関する検証体制につき検討した。加えて一部の製造販売業者より内部情報提供の機会を得て、その解析により適切なAED使用とCPRの状況について客観的な把握を試みた。
心理的阻害因子をふまえた教育プログラムに関する検討として、法律等により学校教育においてCPRやAEDの教育が必須項目と位置づけられている国や地域での教育の実施状況につき、文献および海外専門家からの情報収集にて調査を行った。
心停止発生通知システムの実地調査における検討では、モデル地域で継続されている実運用を通じて検討を進めた。
児童生徒の院外心停止について、小児循環器修練施設等を対象の全国調査を継続するとともに、詳細な二次調査のための登録システムの準備を進めた。
ALSに関する検討においてはECPRの実地医療における検証において多施設登録データの解析を進めた。
結果と考察
AEDの普及状況に係わる調査では、2020年12月現在わが国の累計販売台数はおよそ128万台で、うちPADが84%を占めた。2020年の新規販売台数ではPADは10万台弱であった。設置台数の把握には販売台数から廃棄台数、耐用期間を勘案しての推定が必要となる。AEDは薬事法上の高度管理医療機器及び特定保守管理医療機器であり、わが国全体でより正確に設置台数を把握できる体制構築が望まれる。
内部情報を含めた市民によるAED使用事例の検証に関する検討では、個人情報保護、依頼ごとに目的や項目が異なることによる対応の煩雑化、公正競争規約に関連して費用負担や労務負担などが課題であった。一部の製造販売業者より提供を受けた内部情報の解析では、AEDが通電可能となってから電気ショックまでの所要時間が中央値7秒、自動心電図解析中及び電気ショック施行時に胸骨圧迫の中断がされていない事象につき確認された。
心理的阻害因子をふまえた教育プログラムに関する検討では、法律等により学校教育においてCPRやAEDの教育が必須とされている国や地域でも実施状況にはばらつきがあり、教員が法律等を把握してない場合も多いとする報告があった。
心停止発生通知システムの実地調査における検討では、モデル地域のうち一都市では感染症拡大の影響により運用停止しているが、別都市において、非心停止事例ながら登録ボランティアが救急車よりも早く到着しAEDを装着した事例が得られた。
学校管理下の心停止の発生状況の把握においては、2015〜19年に小中高校生心原性院外心停止152例が集積され、発生状況、場所、現場での対応など詳細な二次調査のための登録システムを構築した。
ALSに関する検討においてはECPRの多施設登録データの解析が進行中であるとともに、教育プログラムの構築に向け検討を進めている。
結論
以上の研究結果より、市中におけるAEDの設置台数と稼動状況の正確な把握、AED使用事例の検証における内部情報の活用から機器および教育プログラムの改善への提言、心理的バリアをふまえた教育プログラムの改善、心停止発生通知システムの活用によるAED実施の行動促進と迅速化、児童生徒の院外心停止症例集積による把握と対応方針の構築、ECPR等のALSの適応や転帰改善因子の解明と教育の充実などを通じ、医療計画における救急医療体制のアウトカム指標である心原性院外心停止の転帰をより一層改善させることができるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2022-10-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202009042Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,499,000円
(2)補助金確定額
4,161,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,338,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 306,504円
人件費・謝金 1,237,590円
旅費 74,410円
その他 1,273,940円
間接経費 1,269,000円
合計 4,161,444円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-10-18
更新日
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