健康危機管理におけるクライシスコミュニケーションのあり方の検討

文献情報

文献番号
200737006A
報告書区分
総括
研究課題名
健康危機管理におけるクライシスコミュニケーションのあり方の検討
課題番号
H19-テロ-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 肇子(慶應義塾大学(商学部))
研究分担者(所属機関)
  • 釘原 直樹(大阪大学人間科学部)
  • 岡本 真一郎(愛知学院大学心身科学部)
  • 押谷 仁(東北大学医学部)
  • 西條 政幸(国立感染症研究所ウィルス第1部)
  • 堀口 逸子(順天堂大学医学部)
  • 釘原 直樹(大阪大学人間科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康危機管理・テロリズム対策システム研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
3,737,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康危機発生時に必要となるクライシスコミュニケーションのあり方について検討し、マニュアルを作成する。そのために、主に感染症の分野での事例を中心に、過去のクライシスコミュニケーションを行政対応と社会的影響の視点から分析し、あるべき情報提供に重要な要因を明らかにする。
研究方法
平成19年度の検討課題である過去の健康危機発生時の事例検討、マスメディアの影響分析を行った。また、マニュアルとその補助教材(シナリオ)も作成に着手した。これらの成果は、平成20年度のマニュアルの完成および公表につながるものである。
結果と考察
試作中のマニュアルに関しては、新型インフルエンザ発生以後のクライシスコミュニケーションを円滑に行うために、患者の個人情報の提供やワクチンの優先順位の問題など、事前に国民のコンセンサスの必要な課題についての情報提供のあり方と、疑い例患者の発生以後の2つの局面に分けて検討を行った。
新型インフルエンザの問題をどのように伝えるべきなのかを対象者別に(一般国民・医療関係者等)どのような情報を伝えるべきなのかという整理を行った。具体的には、コミュニケーションのチェックリストの試作や、伝えるべき内容(key message)の試作を行った。
 言語表現に関しては、実験の結果、間接形のメッセージの送り手のほうが好ましい印象を与え、また、メッセージの納得性に関しても、専門家の場合間接形の方が評価が高かった。間接形は丁寧な印象を与えるためと推測される。
 また、感染症発生時の社会的影響については、新聞記事の分析の結果、O157に関しては事故災害と同様に最初は個人や集団が攻撃対象となる傾向が見られ、また時間経過に従って国やシステムのような対象に拡散していくことが明らかになった。一方SARSに関しては周期的な変動が見られ、個人や集団から社会全体への攻撃対象の拡散現象は見出されなかった。このように感染症の場合は攻撃対象の変遷が事例によって異なることが明らかになった。
結論
 上記の個別の分担研究を総合し、さらにスウェーデン防衛大学危機管理センター(招聘研究者)の協力を得て、新型インフルエンザを事例として、クライシスコミュニケーションの問題に焦点を当てたチェックリストとシナリオを作成したことは意義があったと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-25
更新日
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