食品添加物摂取量推定法の開発に関する調査研究

文献情報

文献番号
199700417A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物摂取量推定法の開発に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
米谷 民雄(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 石綿肇(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 伊藤誉志男(武庫川女子大学)
  • 藤井正美(神戸学院大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 食品衛生調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
9,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の食生活文化の変化により、加工食品を含め種々の食品が市販されている。それら食品の製造・加工等においては食品添加物が使用されることから、食品添加物の使用量が増加していることも考えられる。そのため、日本人の食品添加物摂取量の実態を把握しておくことは、食品衛生行政上極めて重要なことである。そこで本調査研究では、まず化学的合成添加物について、3種の方法により摂取量を推定することを目的とした。1番目はマーケットバスケット方式を用いる方法、2番目は都道府県の衛生研究所や保健所等で実施された食品添加物検査の分析結果から推定する方法、3番目は食品添加物生産流通調査から推定する方法である。これらの方法を用いて1日摂取量を推定するとともに、それらの方法の妥当性についても検討する。一方、天然添加物が既存添加物として認知されたこともあり、今後、その摂取量を把握しておく必要性が増すと考えられる。しかし、天然添加物は多成分の混合系であるため、摂取量推定法を開発するためには、あらかじめ、その成分について調査しておくことが必要である。そこで、現在広く使用されているカロテノイド系天然着色料について、どのような色素成分が含まれているかを調査することにした。
研究方法
1番目のマーケットバスケット方式を用いる1日摂取量調査については、昭和55年度より現在まで実態調査研究を行ってきたところである。北海道から沖縄までの12の研究機関の協力を得、市販食品(主として加工食品)について食品添加物含有量を測定し、摂取量を推定してきた。今年度は、その取りまとめを実施した。現在、我が国で指定されている食品添加物を、天然には存在しないA群と、天然にも存在するB群に区分し、調査結果をまとめた。
2番目の方法に関しては、全国都道府県の衛生研究所や保健所等では、年間10万件を超える食品添加物の検査が行われている。その膨大な検査結果を基に食品添加物の摂取量の分析を行った。まず、コンピューター解析のためのソフトの変更と検査結果の食品別分類を行った。また、必要に応じて検出限界などの、分析法の確認を行った。さらに、国民栄養調査による食品摂取量を用いて日本人の1人一日当たりの食品添加物摂取量を算出した。
3番目の食品添加物生産流通調査から推定する方法では、食品添加物製造・輸入業者名簿に基づき、これら業者に食品添加物の出荷実需の調査表を送り、指定年度の数値を記入してもらった。調査票を回収し、コンピューター入力して集成表を作成した上で、専門家グループにより内容及び問題点を検討した。一方、成分が混合系である天然添加物については、現在広く使用されているカロテノイド系天然着色料8品目を入手し、それらについて、HPLC、LC/APCI-MS、NMR等の分析手法を駆使して、色素成分の構造を検討した。
結果と考察
1番目のマーケットバスケット方式を用いる方法については、これまで継続的に解析を実施してきた食品添加物摂取量調査の結果を、総合的に1つにまとめることができた。この方法に基づいた昨年度までの成果については、多くの学術論文としてすでに専門誌に掲載されている。これらの論文に掲載された摂取量の数値は、国内のみならず、海外においても日本人の摂取量として引用されており、当該厚生科学研究は高く評価されている。2番目の都道府県衛生研究所や保健所等で行われた行政検査の結果から摂取量を推定する方法では、今年度は、1996年度に行われた16品目の行政検査の結果を整理し、かつ、デヒドロ酢酸について仮集計した結果、1人一日当たりの摂取量を0.0396 mgと算出した。この方法に基づいて推定された摂取量については、最近掲載された3論文が研究報告書に添付してある。3番目の食品添加物の生産流通量から推定する方法では、今年度は第5回調査の2年目に当たり、350 箇所からの回答を集計し、問題点について整理し、検討を行った。以上の3法により得られた各食品添加物の摂取量をADIと比較する事により、安全について評価を行うことができると考えられる。なお、これら3法にはそれぞれ一長一短があるため、今後も3法を併用し、互いの短所を補う形で、調査を継続すべきと考えられた。一方、天然添加物の成分分析においては、カロテノイド系着色料8品目につき同一条件で色素成分の分析を行うとともに、最近上市されたヘマトコッカス藻色素とファフィア色素について詳しい成分研究を行い、色素成分の構造を立体構造まで含めて、完全に決定することができた。
結論
本調査研究において食品添加物摂取量推定法として採用した方法には、いずれも一長一短がある。そのため、これら3法のうち、どれかを選択するのではなく、今後も3法を併用し、お互いの短所を補うようにして、摂取量調査を継続することが必要と考えられる。天然添加物については、平成7年度に生産流通調査による予備調査が行われたきりである。来年度以降、なるべく早い時期に、何らかの調査が行われることが望まれる。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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