脳卒中及び循環器疾患における治療と仕事の両立支援の手法の開発

文献情報

文献番号
202009039A
報告書区分
総括
研究課題名
脳卒中及び循環器疾患における治療と仕事の両立支援の手法の開発
課題番号
20FA1011
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
佐伯 覚(産業医科大学 医学部 リハビリテーション医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 立石 清一郎(産業医科大学 保健センター)
  • 荻ノ沢 泰司(産業医科大学 第2内科学)
  • 松嶋 康之(産業医科大学 医学部 リハビリテーション医学講座)
  • 越智 光宏(産業医科大学 医学部 リハビリテーション医学講座)
  • 加藤 徳明(産業医科大学 医学部 リハビリテーション医学講座)
  • 伊藤 英明(産業医科大学 医学部 リハビリテーション医学講座)
  • 蜂須賀 明子(産業医科大学 医学部 リハビリテーション医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
6,160,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳卒中及び循環器疾患の急性期医療の近年の大きな進歩があったが、その効果を社会参加、とりわけ就労復帰につなげ長期的に継続するには、回復期以降の体制整備も極めて重要である。高齢化が進んでいるわが国では、今後脳卒中及び循環器疾患患者の増加が予想されており、本領域患者に対する包括的な両立支援システム確立は極めて重要である。本研究では、脳卒中及び循環器疾患の両立支援の手法確立を目指すことを目的に、研究期間において以下の3研究を実施した。
研究方法
1.わが国における脳卒中及び循環器疾患の復職の現状
2.急性期・回復期・維持期の各病期に応じた医療の現場における両立支援手法の確立
3.脳卒中及び循環器疾患における両立支援ツールの作成
結果と考察
 わが国における脳卒中及び循環器病の復職の現状と課題を整理した。就労世代の脳卒中患者は高齢脳卒中患者とは異なり、特別なリハビリテーションニーズを有している。その点を考慮したリハビリテーションプログラムや連携など多くの支援が必要である。脳卒中患者の非就労による経済的損失は、間接費用の55%に相当する。現行の復職率が15%向上すれば、間接費用においては約30%の損失の軽減が得られ、直接費用においても傷病手当金や障害年金など約3千億円の支出減となる。復職率向上による医療経済的効果は極めて大きい。循環器疾患を抱える就労者の治療と就労の両立には業務起因性の病状悪化や治療に伴う業務制限など循環器疾患特有の問題を解決する必要がある。復職に関して取り扱う循環器臨床ガイドラインが増えていた。心臓リハビリテーションは復職において有効と考えられるが、継続性に課題がある。復職の様体は個別性が高く、困難例においては主治医と事業所とのコミュニケーションが重要であるが、未だ連携が十分に行われているとは言えない。両立支援において、患者の職種や業務内容を評価し、適切な復職をするために助言をすることが望ましい。
 院内システムの整備において、今後の課題として以下の3点に要約できる:①「治療と仕事の両立支援」に関して、全国へのさらなる広報・啓発が必要である。②就労支援の相談内容について相談・介入のレベルは様々(情報提供や、 職場との文章のやり取り、 職場担当者に来院を願う、 職場訪問するなど)であるため、 相談の区分や介入の基準作りが必要である。③急性期の場合は直ちに両立支援対象者としての依頼がない場合が多いため、 脳卒中の入院から両立支援に関するスクリーニングができる体制が不可欠である。脳卒中就労支援においては個別性が高く、情報を一元化して両立支援のスクリーニングが実施できるシステム構築が必要である。 また、脳卒中や循環器疾患においては、院内に留まらず院外を含めた連携やサポートが必要であり、そのためにも院外の医療機関や関係施設との連携が不可欠である。新型コロナ感染症流行下においては、院外の連携が大きく損なわれる事態となったが、オンライン面談などを通じた新たな連携の方法で対応できる可能性が、本研究結果より示唆された。今後オンライン診療の拡充に合わせて、院外のオンライン連携を促進することにより、復職に難渋する患者を地域でサポートできるようになる。
 患者・家族向けの情報リーフレット 「仕事と脳卒中治療の両立お役立ちノート」および「仕事と循環器疾患治療の両立お役立ちノート」を作成し、厚生労働省、公益社団法人日本脳卒中協会、産業医科大学などのホームページで公開し、無料ダウンロードできるようにした。本ノートは患者や家族に働きかけ、彼らの社会参加を促すなど行動変容につながるツールとして活用され、脳卒中や循環器病患者の就労者数増加や復職率向上に寄与すると考えられる。
結論
折しも研究期間中は新型コロナ感染症の流行もあり、現行の医療システムの機能不全を招いた。既に、高齢者を中心とした脳卒中や循環器病の現行の医療システムは硬直化しており、就労世代の社会復帰~両立支援の仕組みを取りこんだ新たなシステムの構築が必要である。

公開日・更新日

公開日
2022-05-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-05-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202009039C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国における脳卒中及び循環器病の復職の現状と課題を整理した。
臨床的観点からの成果
急性期・回復期・維持期の各病期に応じた医療の現場における両立支援手法として、院内システム、院外システムで利用できる方法をまとめた。
ガイドライン等の開発
患者・家族向けの情報リーフレット 「仕事と脳卒中治療の両立お役立ちノート」および「仕事と循環器疾患治療の両立お役立ちノート」を作成した。
その他行政的観点からの成果
上記お役立ちノートは患者や家族に働きかけ、彼らの社会参加を促すなど行動変容につながるツールとして活用され、脳卒中や循環器病患者の就労者数増加や復職率向上に寄与すると考えられる。
その他のインパクト
上記お役立ちノートに関しては、患者・家族からの注目度も高く、厚生労働省、公益社団法人日本脳卒中協会、産業医科大学などのホームページで公開し、無料ダウンロードできるようにした。また、2023年度、東京都保健医療局作成のwebサイト「とうきょう脳卒中・心臓病ガイド」にも掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
治療と仕事の両立お役立ちノート

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-05-16
更新日
2024-05-27

収支報告書

文献番号
202009039Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
7,146,000円
差引額 [(1)-(2)]
854,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,641,333円
人件費・謝金 1,470,578円
旅費 255,310円
その他 939,440円
間接経費 1,840,000円
合計 7,146,661円

備考

備考
物品費支出が増え、支出合計が661円オーバーしたため、超過分は自己資金支払いとしています。

公開日・更新日

公開日
2022-05-06
更新日
-