文献情報
文献番号
202009033A
報告書区分
総括
研究課題名
加熱式タバコの急性影響を評価する疫学実証研究
課題番号
20FA1005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
田淵 貴大(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター がん対策センター疫学統計部)
研究分担者(所属機関)
- 堀 愛(筑波大学 医学医療系)
- 財津 將嘉(獨協医科大学 医学部)
- 谷上 博信(大阪国際がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,465,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
先行研究は、加熱式タバコの主流煙にニコチンや発がん性物質が含まれていると報告し、日本の臨床現場からも加熱式タバコ使用に伴う急性好酸球性肺炎などのケースレポートが数件報告されている(Uchiyama 2018; Kamada 2016; Aokage 2019)。しかし、現時点ではまだ情報が少なく、加熱式タバコの能動喫煙及び受動喫煙による急性健康影響の実態は十分には把握されていない。そこで本研究では、加熱式タバコによる急性影響の実態把握を行うことを目的とし、加熱式タバコの能動喫煙及び受動喫煙の曝露および急性好酸球性肺炎等の急性症状・急性疾患との関連について、インターネット調査及び患者調査の2つの調査研究デザインを採用し、データ収集および分析を行った。
研究方法
(1)加熱式タバコ曝露及び健康状態に関するインターネット調査であるJapan“Society and New Tobacco” Internet Survey :JASTIS研究データを分析し、加熱式タバコの能動喫煙の割合を推計した。
(2)JASTIS研究2019年調査データを用いて、15〜73歳の8784人の回答者を分析した。
(3)JASTIS研究2021年調査に回答した15-80歳の男女23,142人を分析した。
(4)2020年8-10月に実施したインターネット調査(Japan “COVID-19 and Society” Internet Survey :JACSIS研究)における妊産婦調査データを分析した。
(5)大阪国際がんセンターの入院患者から情報収集するための調査票を作成・導入し、調査体制を確立し、調査をスタートした。また、獨協医科大学医学部公衆衛生学講座が主導する多施設周産期コホート研究「周産期合併症における遺伝・環境交互作用の解明のための前方視的研究」において、関連施設および産科病院にて加熱式タバコの情報収集の追加調査の説明を行い、ベースライン調査を開始した。さらに、関東労災病院泌尿器科の腎細胞がん患者の加熱式タバコ使用状況および病理検体の調査を開始した。今後、症例数を集積していく(5の課題については概要版での結果の記載は省略する)。
(2)JASTIS研究2019年調査データを用いて、15〜73歳の8784人の回答者を分析した。
(3)JASTIS研究2021年調査に回答した15-80歳の男女23,142人を分析した。
(4)2020年8-10月に実施したインターネット調査(Japan “COVID-19 and Society” Internet Survey :JACSIS研究)における妊産婦調査データを分析した。
(5)大阪国際がんセンターの入院患者から情報収集するための調査票を作成・導入し、調査体制を確立し、調査をスタートした。また、獨協医科大学医学部公衆衛生学講座が主導する多施設周産期コホート研究「周産期合併症における遺伝・環境交互作用の解明のための前方視的研究」において、関連施設および産科病院にて加熱式タバコの情報収集の追加調査の説明を行い、ベースライン調査を開始した。さらに、関東労災病院泌尿器科の腎細胞がん患者の加熱式タバコ使用状況および病理検体の調査を開始した。今後、症例数を集積していく(5の課題については概要版での結果の記載は省略する)。
結果と考察
(1)日本人成人における加熱式タバコ使用割合は、2015年0.2%から2019年11.3%と、急速に増加していた。(2)紙巻タバコの受動喫煙を経験したのは58.5%で、加熱式タバコの受動喫煙を経験したのは33.3%であった。このうち、紙巻タバコでは56.8%、加熱式タバコでは39.5%が、受動喫煙によって何らかの症状を経験していた。中でも、喘息発作と胸痛は、加熱式タバコの受動喫煙によって引き起こされた頻度(それぞれ10.9%と11.8%)が、紙巻タバコの受動喫煙によって引き起こされた頻度(それぞれ8.4%と9.9%)よりも高かった。(3)過去一ヶ月間に加熱式タバコによる受動喫煙を受けていたのは全体の23%、非喫煙者18,984人のうち13%であった。加熱式タバコの受動喫煙を受ける場所として職場が最多で、次いで家庭、車の中、の順であった。加熱式タバコの受動喫煙による何らかの症状(気分が悪くなる、のどや目が痛くなる、咳きこむ、頭痛等)がある割合は全体で16%、非喫煙者では10%であった。(4)産婦558名のうち、妊娠高血圧症候群と低出生体重児の発生割合はそれぞれ7.3%と10.0%で、加熱式タバコ喫煙歴ありの割合は11.7%であった。産婦において、妊娠高血圧症候群の発症割合は、加熱式タバコ喫煙歴ありの方が、加熱式タバコ喫煙歴なしよりも高かった(13.8% vs. 6.5%)。同様に、低出生体重児の発生割合も、加熱式タバコ喫煙歴ありの方が高かった(18.5% vs. 8.9%)。紙巻きタバコの喫煙歴で層別しても、同様の傾向が見られた。
結論
本研究は、たばこ規制・対策に関わる主要課題として近年急浮上してきた加熱式タバコ問題について、政策立案・提案につながるエビデンスの構築を目的としている。今年度は研究初年度であり、まだデータ収集途上のプロジェクトもあるが、加熱式タバコの急性健康影響を評価するために役立つ今後の研究成果が期待できる。
公開日・更新日
公開日
2022-04-12
更新日
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