大規模災害時における避難所等での適切な食事の提供に関する研究

文献情報

文献番号
202009029A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模災害時における避難所等での適切な食事の提供に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20FA2001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
須藤 紀子(お茶の水女子大学 基幹研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 笠岡 宜代(坪山 宜代)(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 国際栄養情報センター)
  • 島田 郁子(高知県立大学 健康栄養学部)
  • 佐藤 慶一(専修大学 ネットワーク情報学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまで、避難所で提供される食事の量の少なさや栄養の偏りが災害関連死につながっていることが指摘されてきた。食事の量と質を担保するための基準として、厚生労働省は「避難所における栄養の参照量」を発表した。
食事摂取基準2020年版の公表に伴い、新しい知見に基づいた値をもとに新たな参照量を検討する必要がある。今回は災害が発生してから被災県に合わせたものを発表するのではなく、すべての都道府県に適用できるよう、人口特性ごとに数パターン提示し、平常時からの備蓄計画にも役立てられるようにする観点からの検討も必要である。
また、公表するだけでは浸透しない実情をふまえ、新たな栄養の参照量の活用支援ツールも開発することを目的とした。
研究方法
研究①②の聞き取り調査
被災地からの聞き取りは、県庁、県型保健所、市型保健所、市町村栄養士を対象にZoomで実施した。
研究②のオンラインアンケート調査
研修会に参加した自治体職員を対象にオンラインアンケート調査を実施し、313名から回答を得た(回収率68.3%)。
結果と考察
研究①「避難所における栄養の参照量」の改定
聞き取り調査から得られた改定のポイントは以下のとおりであった。
・国からの通知は、防災担当者に食事改善を促す推進力となるため、被災自治体の人口構成に合わせた参照量は発災後1週間以内に文書で発出する。
・避難所では、個々人の摂取量調査は難しく、提供量の把握しかできないため、評価用の参照量を策定しても、厳密な食事評価はできない。また、これまでのように2種類あっても使い分けされていなかった現状をふまえ、食事計画用の1種類のみにし、食事評価にはDRIを使用する。
・栄養素等の種類は、栄養計算や参照量を満たす食事を提供しなければならない現場の負担を考え、エネルギー、たんぱく質、ビタミンB1, B2, Cに食塩相当量を加えるだけにとどめる。現場で必要だと判断された栄養素は、DRIの値を用いて、現状でも独自に計算されている。
・現行の食事計画用の参照量の値は、不足を予防する観点から、RDAを基に策定されている。新しい参照量においても、エネルギーとたんぱく質は現行の計画用参照量と同様にRDAを用いる。しかし、参照量を満たすのが困難なビタミン類は、推定平均必要量(EAR)であっても欠乏症を予防する最小必要量を上回っているため、EARを用いる。避難所ではしっかり食べることが重要であるため、減塩による食欲減退を考慮し、食塩相当量は食事摂取基準の目標量(男7.5、女6.5 g/日未満)ではなく、健康日本21(第二次)の目標値である8 g/日未満とする。
・現行の月単位ではなく、より短いスパンでの参照量を示す。日本公衆衛生協会発行のガイドラインにあるフェーズ0-2(フェーズ0:発災後24時間以内、1:72時間以内、2:避難所対策が中心の時期)に必要な栄養素をフェーズ毎に示すとともに、それらを供給できる食品の例を示す。
・年齢階級別の参照量が食事計画に使用されるとしたら、個別対応のときである。調理はできないため、各年齢階級の参照量を満たす支援物資の組み合わせを、乳幼児や高齢者などのライフステージ別特性に配慮しながら示す(1食分と1日分)。
・現行の高血圧以外の病態への対応は、各疾病ガイドラインによる。
・備蓄用の参照量については、日本の全人口を対象にした基本形のほか、全ての自治体が平常時から人口特性に合ったものを選べるように、数パターン提示する。
・全ての栄養士が目にする食事摂取基準の「活用に関する事項」で避難所食事調査のポイントも含め、参照量の活用についてふれる。被災や災害支援の経験を有しない栄養士にも周知し、養成課程での教育を推進するため、参照量がどのように作成されていて、どのフェーズでどのように活用し、そのためにはどういう準備が必要かということまで示したマニュアルも作成する。
研究②「大規模災害時に備えた栄養に配慮した食料備蓄量の算出のための簡易シミュレーター」の改良
オンラインアンケートでは、自治体職員の74.4%(233名)がシミュレーターの存在を知っていた。そのうちの36.6%(85名)はシミュレーターを使用したことがあり、そのうちの74.1%(63名)が今後も自治体の備蓄の計画や評価に使用したいと回答していた。
結論
聞き取り調査からは、日本の縦割り行政が栄養に配慮した食料備蓄をするための行政栄養士の活用を阻んでいる様子が伺えた。炭水化物中心で量が少ない現在の自治体の備蓄では、シミュレーターの判定結果は常に「×」になってしまい、改善に結びつかない。防災担当者に副食も備蓄することの栄養学的意義を理解してもらうために、参照量を満たす具体的な食品の組み合わせ例を示すこと、栄養価の代わりに食品や人数を使って視覚化することが提案された。

公開日・更新日

公開日
2024-10-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202009029Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,100,000円
(2)補助金確定額
8,417,000円
差引額 [(1)-(2)]
683,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,447,273円
人件費・謝金 628,523円
旅費 0円
その他 3,241,204円
間接経費 2,100,000円
合計 8,417,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-05-06
更新日
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