ナノマテリアルの経皮毒性に関するトキシコキネティクスおよびトキシコプロテオミクス等の融合による有害性評価法・リスク予測法の開発

文献情報

文献番号
200736028A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルの経皮毒性に関するトキシコキネティクスおよびトキシコプロテオミクス等の融合による有害性評価法・リスク予測法の開発
課題番号
H19-化学-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
堤 康央(独立行政法人医薬基盤研究所 基盤的研究部・創薬プロテオミクスプロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 角田 慎一(独立行政法人医薬基盤研究所)
  • 鎌田 春彦(独立行政法人医薬基盤研究所)
  • 今澤 孝喜(独立行政法人医薬基盤研究所)
  • 中川 晋作(大阪大学大学院薬学研究科)
  • 八木 清仁(大阪大学大学院薬学研究科)
  • 吉岡 靖雄(大阪大学臨床医工学融合研究教育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
70,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国のナノマテリアル研究は、「開発・実用化」の点で世界を大きくリードしており、香粧品や医薬品の領域で多くのナノ製品が上市されている。一方でナノマテリアルのヒト健康への影響など、予測できない負の側面が懸念され始めており、安全性確保の観点から、ナノマテリアルの社会受容の促進に向けた取り組みが最重要視されてきている。そこで、本研究では、未だ明らかとなっていない“ナノマテリアルの物理化学的特性”と“皮膚中・体内挙動”、“経皮毒性”との連関解明を目指す。
研究方法
本研究では、既に香粧品に汎用されているナノシリカおよびその蛍光標識体を標準ナノマテリアルとして用い、①種々物性(サイズ、表面電荷、親水-疎水バランス)と経皮曝露後の皮膚内・体内(肝臓・脳)・細胞内挙動の連関をトキシコキネティクス解析すると共に、②これら組織(皮膚・肝臓・脳など)・細胞での安全性をトキシコプロテオミクス等によりin vivoおよびin vitro評価した。
結果と考察
ナノシリカは、ヒト皮膚角化(HaCaT)細胞に対し、濃度依存的に細胞傷害を惹起すること、また粒子サイズが小さいものほど(70 nm)、細胞内に取り込まれやすく、かつ細胞傷害活性が高いことが判明した。細胞内に取り込まれた1000 nmのナノシリカは、粒子周辺にリソソーム小胞の異常発達を認めたが、70 nmのナノシリカの場合、興味深いことに核小体内部に選択的集積していることが電顕観察により判明した。さらに、ヒト皮膚に類似した皮膚を持つブタを用いたin vivo透過性試験、短期・長期の毒性試験等を実施したところ、70 nmのナノシリカは角質層および生きた表皮を通過して、血中に移行する可能性が示唆された。また、ナノシリカをマウスの尾静脈から投与した場合、肝臓に速やかに集積すること、70 nmナノシリカが最も高い急性毒性を起こすことが示された。一方、細胞に対するトキシコプロテオミクス解析を試みたところ、ナノシリカのサイズにより異なるプロテオームの変動が認められた。
結論
表面未修飾のナノシリカを用い、サイズと動態、毒性との連関解明を、細胞レベル、実験動物レベル(マウス)、ヒトモデル(ブタ皮膚実験)で検討し、ナノマテリアルの特性評価法としての有用性を確認するとともに、70 nmのナノシリカが皮膚から血中、細胞内、さらには核内へ移行することを見出すなど、興味深い知見を数多く得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2008-05-07
更新日
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