心房細動アブレーション治療の標準化・適正化のための全例登録調査研究

文献情報

文献番号
202009025A
報告書区分
総括
研究課題名
心房細動アブレーション治療の標準化・適正化のための全例登録調査研究
課題番号
19FA1016
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
山根 禎一(東京慈恵会医科大学 医学部 循環器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 宮本 恵宏(国立研究開発法人国立循環器病研究センター オープンイノベーションセンター)
  • 草野 研吾(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
  • 井上 耕一(国立病院機構大阪医療センター循環器内科)
  • 中尾 葉子(国立循環器病研究センター OIC 循環器病統合情報センター レジストリ推進室)
  • 竹上 未紗(国立循環器病研究センター 研究基盤開発センター 予防医学・疫学情報部)
  • 橋本 英樹(東京大学 大学院医学系研究科 公共健康医学専攻保健社会行動学分野)
  • 姉崎 久敬(国立循環器病研究センター 循環器病統合情報センター)
  • 森脇 健介(立命館大学 総合科学技術研究機構)
  • 野上 昭彦(筑波大学 医学医療系循環器内科)
  • 夛田 浩(福井大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
J-ABレジストリデータを用いて我が国におけるAFアブレーションの実態把握、脳梗塞や心不全に対する有効性、さらには費用対効果を明らかにするとともに、その適応や適切性基準を作成しガイドライン策定のエビデンスを構築することを目標とする。
研究方法
以下の4つのパートに分けて研究を進行する。
①J-AB登録データを用いた我が国のAFアブレーションを取り巻く現状把握、②AFアブレーション医療の質を向上させるためのエビデンスの評価(Quality Indicator (QI) 解析、③AFアブレーションアウトカムとQOL評価を用いた費用対効果の分析、④次期ガイドライン草案の策定。
結果と考察
① 2021年3月末までに485施設からの症例登録があり、総登録件数は246,152件であった。1年後フォローアップの追跡割合は、2018年実施症例で86%、2019年で89%であった。追跡できたAF症例のうち死亡は0.6%であり、発作性AFより持続/永続性AFにて死亡が多かった(0.4% vs 0.8%)。また再発は、AF全体では17%で、発作性AFより持続/永続性AFにて再発を多く認めた(13% vs 23%)。2019年12月までの手術施行患者のうち、初回アブレーションに絞り、急性期合併症に関する詳細な検討を行った。分析対象者は、85,358件であり、平均年齢は67歳、75歳以上が24.4%、男性の割合は70%であった。14%に心疾患の合併を認めた。3.1%に急性期合併症を認め、高周波通電アブレーション(RFCA)群、バルーンアブレーションを実施された群に比し、RFCAとバルーンを両方実施された患者群で最も合併症の頻度が高かった。また、高齢、低体格指数、心疾患は急性期合併症発症に有意な正の関連を認めた。
② 文献を中心とした検討では、特にCAAFの適応、効果や安全性に影響しうる手技上の特徴、患者特性、そして施設特性などを中心に検索を行った。手技としてはcryoballoonとradiofrequency ablationとの比較試験が近年相次いで報告され、両者の成績や合併症などに差がないとの結果でほぼ一致していた。患者特性としては心不全の有無、慢性心房細動などについての検討があり、特に心不全を合併する場合は心機能が比較的保たれている場合において死亡率を有意に低下させる効果が見られたものの、非心不全・重度心不全患者では死亡率への影響は見られていない。施設特性について検討した研究が昨年発表され、いわゆるoutcome-volume関係を示す結果が発表されており、わが国においても同様の検討を行う必要があると思われた。
③ JMDC claim database(レセプトデータベース)を用いた統計解析の結果以下の結果が得られた。1) 心房細動発生当月の平均医療費は、184.7万円であり、以降は毎月10万円程度に収束する。2) アブレーションありの平均医療費は、224.1万円であり、なしの場合は、55.3万円と推定された。3)心房細動経験者の死亡前の医療費は、死亡月の3か月前から上昇し、合計平均は、295.8万円と推定された。
④ J-ABデータの解析から、高齢者でアブレーションリスクが上昇すること、心不全(基礎心疾患)の存在が合併症リスクを上昇と関連していることが示されたが、そのオッズ比で1.5程度であり、多くの症例では上記の予後改善のメリットの方が大きいこと、バルーンと高周波両方のアブレーションシステムを用いた症例では合併症率が有意に高かったことから安全性確保のためにもバルーンアブレーションに適した症例と治療戦略の選択が重要であることを示唆していると考えられた。
結論
現在のAFアブレーションの問題点および次期ガイドラインで修正してゆくべきポイントが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2022-05-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-05-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202009025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,800,000円
(2)補助金確定額
7,151,000円
差引額 [(1)-(2)]
649,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,481,598円
人件費・謝金 1,379,654円
旅費 0円
その他 1,490,160円
間接経費 1,800,000円
合計 7,151,412円

備考

備考
自己資金412円

公開日・更新日

公開日
2022-05-06
更新日
-