骨粗鬆症の予防及び検診提供体制の整備のための研究

文献情報

文献番号
202009023A
報告書区分
総括
研究課題名
骨粗鬆症の予防及び検診提供体制の整備のための研究
課題番号
19FA1014
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
田中 栄(東京大学医学部附属病院 整形外科)
研究分担者(所属機関)
  • 曽根 照喜(川崎医科大学 放射線医学(核医学))
  • 藤原 佐枝子(安田女子大学 薬学部)
  • 萩野 浩(鳥取大学医学部)
  • 上西 一弘(女子栄養大学 栄養生理学研究室)
  • 小川 純人(東京大学 医学部附属病院)
  • 吉村 典子(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨粗鬆症が多くの高齢者の生活の質(QOL)を低下させる一因となっていることは明らかである。従って、骨粗鬆症の予防は人生100 年時代に向かうわが国にとって、科学的根拠に基づいた有効な予防方法の普及啓発及び早期発見に向けた骨粗鬆症対策の実施が必要とされている。しかし骨粗鬆症やその前段階の骨量減少の段階では対象者はほとんど無症状であり医療機関に受診することは少ないため、骨粗鬆症の早期発見には地域住民を対象とした検診が必要となる。しかしながら骨粗鬆症検診実施率は全国平均で5.0%と極めて低く、地域差も大きい上に、骨粗鬆症検診の手法や対象者の年齢、実施間隔も統一されておらず、それらの効果も明らかではない。
これらの実情を踏まえ、本研究では、科学的根拠に基づいた骨粗鬆症の予防方法および検診手法について検討し、エビデンスに基づく持続可能で効果的な骨粗鬆症検診体制を構築し、今後の骨粗鬆症対策の推進に資する成果を得ることを目的とした。
研究方法
研究代表者の田中の総括のもと、整形外科、老年病内科、リハビリテーション、核医学、栄養、疫学、公衆衛生の各専門家が参加し、骨粗鬆症予防に関する文献の検証、検診実施率が高い自治体の訪問調査、一般住民を対象とするコホート研究の追跡調査を実施した。
結果と考察
放射線診療の専門家である曽根らのグループは、文献的考察から、骨粗鬆症における骨量測定のgold standardは腰椎や大腿骨近位部のDXAで、末梢骨の骨量測定を骨粗鬆症検診で用いる場合には、腰椎や大腿骨近位部の骨密度低下を効率良く検出できる値をカットオフ値とすることが適切との結論を得た。保険診療ベースでの利用状況から推定すると、2019年の時点で我が国の骨粗鬆症診療における骨量測定の約半数が末梢骨測定と推定された。
骨粗鬆症予防および検診の専門家である藤原らのグループは、公表されている骨粗鬆症検診のデータを用いて、検診実施率、検診受診率、要精検者の結果の割合(精密検査の結果、未受診率、未把握率)を、節目年齢別、県別に求めた。表されている骨粗鬆症検診のデータを集計した結果、検診実施率は低く、検診後の未把握率は半数に上り、自治体の骨粗鬆症検診に対する優先順位の低さが伺えた。さらに、検診受診率は低く、特に40歳代、50歳代は低く、検診対象者にとっても、骨粗鬆症検診に対する関心の低いことが示された。今後、有効な骨粗鬆症検診を構築するためには、自治体および検診対象者に意義を認識してもらう対策を講じる必要があると考えられる。その1つとして、年代層別に検診の目的を「骨粗鬆症の予防」と「骨折の予防」をわけ、目的をより明確にして、検診の意義を伝えるような工夫や検診方法の選択も必要と考えられた。 
整形外科学の専門家である萩野らのグループは骨粗鬆症検診の現場で活用できるように、対象者の骨密度増加と転倒予防を期待できる運動プログラムを検討した。筋力増強訓練に関してメタアナリシスを実施した。その結果、転倒予防効果に加え、筋力増強訓練には骨密度増加効果があることが示唆された。
 栄養学の専門家である上西らのグループは、主に若年成人を対象とした「骨粗鬆症の予防」を目的としたものと、中年以降、特に高齢者を対象とした「骨粗鬆症、骨折の予防」を目的としたものに分けて、2種類のパンフレットを作成した。 
老年病学の専門家である小川らのグループは、システマティックレビュー前段階で必要となる文献検索を中心に進めた。FRAX®に基づく英国在住の地域住民スクリーニングの効果については、FRAX®を用いたスクリーニングを行うランダム化対照試験によって、その後5年間の高齢女性における大腿骨近位部骨折発症率減少が認められた。 
骨粗鬆症の疫学研究の専門家である吉村らのグループは研究代表者の田中と協力して、2005年から和歌山県の2地域(山村、漁村)で実施している骨粗鬆症検診の13年間の蓄積されたデータから、2005-7年に実施した骨粗鬆症検診と、2015-16年に実施した骨粗鬆症検診の結果のデータリンケージを実施し、10年間の骨粗鬆症の有病率の比較解析用データセットを作成した。その結果、骨粗鬆症の有病率は、この10年間でみると70歳以上の高齢女性において有意に低下していることがわかった。
本研究の最終目標である効果的な骨粗鬆症検診体制の提言とその実施マニュアルの作成に向けて研究を進めることができた。
結論
効果的な骨粗鬆症検診体制の策定に向けて、骨密度測定部位や対象年齢などについて有益な知見を得ることができた。さらに検診後指導向けの運動プログラム、栄養パンフレットも作成し得た。これらの結果を総合して、最終報告では、科学的根拠に基づいた持続可能で効果的な骨粗鬆症検診体制の提案を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2022-11-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-06-11
更新日
2022-11-22

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202009023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,995,000円
(2)補助金確定額
7,995,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,292,215円
人件費・謝金 1,065,029円
旅費 0円
その他 3,793,364円
間接経費 1,845,000円
合計 7,995,608円

備考

備考
自己資金608円

公開日・更新日

公開日
2022-05-06
更新日
-