産業別・地域別における生活習慣病予防の社会経済的な影響に関する実証研究

文献情報

文献番号
202009022A
報告書区分
総括
研究課題名
産業別・地域別における生活習慣病予防の社会経済的な影響に関する実証研究
課題番号
19FA1013
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
野口 晴子(早稲田大学 政治経済学術院)
研究分担者(所属機関)
  • 朝日 透(早稲田大学 理工学術院)
  • 阿波谷 敏英(高知大学医学部)
  • 川村 顕(公立大学法人神奈川県立保健福祉大学 大学院ヘルスイノベーション研究科/ 早稲田大学 政治経済学術院(Joint Appointment))
  • 玉置 健一郎(早稲田大学 政治経済学術院)
  • 花岡 智恵(東洋大学 経済学部)
  • 富 蓉(フ ヨウ)(早稲田大学 商学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,692,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 川村顕 公立大学法人神奈川県立保健福祉大学・大学院ヘルスイノベーション研究科(令和元年9月1日~令和3年3月31日) →公立大学法人神奈川県立保健福祉大学・大学院ヘルスイノベーション研究科/早稲田大学・政治経済学術院(Joint Appointment)(令和3年4月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
超高齢社会に突入した我が国にとって、生活習慣病発症あるいは重症化の抑制は、住民のQOL向上や医療費抑制の観点から喫緊の課題であり、そのためには予防対策が不可欠である。しかし、既存研究では、(1)生活習慣の違いの類型化と予防対策の効果との関係、(2)生活習慣病の重症度と労働生産性との関係、について十分に研究されてきたとは言えない。そこで本研究では、以下の4つを研究課題として設定する。(1)業種別・地域別の生活習慣病の実態について分類・整理し、重症度の算出を試みる;(2)健診受診や特定保健指導が生活習慣病の発症・重症化抑制に(どの程度)寄与するか業種別・地域別に統計的検証を行う;(3)生活習慣病が就労に(どの程度)影響するか業種別・地域別に統計的検証を行う; (4)生活習慣病の発症・重症度が就労状況に与える影響をシミュレーションにより推計する。
研究方法
第1に、昨年度から検索期間を1年間延伸し、2000-2021年の直近21年間に、国際的学術誌に掲載された英文による論文の中から、産業、職業、及び、地理的な要因に重点を置いて、生活習慣病と労働生産性の関連性に関する定量的・定性的な検証を行った先行研究72件の論文について、著者・公刊雑誌・公刊年・分析対象国・分析に用いられたデータ・就労と健康に関する変数・分析手法・結果について要約・整理を行った。
第2に、令和元年度に予定していた全国規模の個票情報の収集・整備について、2019年6月5日以降、厚生労働省・政策統括官(統計・情報政策担当)へ二次利用申請を行ったが、利用データの規模が膨大に及び、2020年には新型コロナウイルス拡大感染の影響もあったが、令和2年10月5日付けで内諾を得て、令和3年2月末にデータを入手するに至った(承認番号:厚生労働省発政統1005第2号;承認日2020年10月5日)。本報告書では、データ入手から現在までの進捗状況について報告を行う。
結果と考察
『国民生活基礎調査』の個票データとe-Stat等より公開されている都道府県レベル医療資源・労働環境変数を突合し、医療資源・労働環境変数と健診受診行動の関係を分析した。結果、医療資源変数については、自治体に所属する常勤保健師数・医療施設数と健診受診行動は多くのグループにおいて統計的に有意な正の関係が観察された一方で、病床数と健診受診行動では統計的に有意な負の関係が観察された。労働環境変数については、労働時間の長さや労働相談の多さが健診受診行動と統計的に有意に負の関係を持つことが明らかになった。
次に、厚生労働省『中高年者縦断調査』の第1回(2005年)~第9回(2013年)の個票データを利用し、業務多忙の尺度として労働市場における需給の逼迫度を示す有効求人倍率を利用し、職種別有効求人倍率が二次健診の未受診に与える影響を分析する。労働市場における需給の逼迫度が二次健診の未受診に与える影響を分析した結果、職種別の有効求人倍率が高いほど、つまり人手不足感が高まり仕事が忙しくなるほど、要再検査と判定された後に二次健診を受けない傾向が示された。
最後に、生活習慣病の発症と密接に関連する要介護状況について、自治体の政策形成に資する基礎資料を提供することを目的とするアプリケーションの構築を開始した。研究方法は、統計ソフトRを用い、『介護給付費実態調査』(2006-2018)及び『人口動態調査(死亡票)』(2006-2018)を突合させ、地域(都道府県)ごとの介護サービス利用者基本属性、性別・要介護度別の介護サービス利用者生存曲線、介護サービス利用額時系列推移、サービスメニュー別の介護サービス利用額時系列推移、要介護度別のサービスメニューの組み合わせ利用状況の概況を可視化する。
結論
以上の結果から、地域における医療資源・労働環境変数と健診受診行動の関係は、加入している健康保険の種類や教育水準により異質性を持つことが明らかになった。したがって、健診受診を促す介入を行う場合にはターゲットを的確に抽出し、そのターゲットにあった介入を行うことが必要であろう。自治体向けアプリの開発については,今後,厚生労働省・老健局や厚生労働省・政策統括官(統計・情報政策担当)等関係各所との交渉・連携を図りながら,公開へ向けての道筋を探る.

公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202009022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,999,000円
(2)補助金確定額
9,999,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,839,566円
人件費・謝金 2,293,270円
旅費 0円
その他 1,559,164円
間接経費 2,307,000円
合計 9,999,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-05-06
更新日
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