メタボローム解析およびバイオマーカーを用いた化学物質の有害性評価手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200736025A
報告書区分
総括
研究課題名
メタボローム解析およびバイオマーカーを用いた化学物質の有害性評価手法の開発に関する研究
課題番号
H19-化学-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
曽我 朋義(慶應義塾大学環境情報学部先端生命科学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
化学物質は人類に多くの恩恵を提供するが、一部は生命体に予期せぬ被害をもたらす。体内に取り込まれた化学物質の多くは肝臓で解毒的に代謝され、易溶性の代謝物となって排泄される。しかし、数万種類ともいわれる化学物質およびそれらの代謝物の毒性を確認できる評価手法は未だ確立されておらず、そのリスク評価システムの早急な構築が望まれる。本研究では、化学物質そのものか生体内で代謝されて生じた物質が酸化活性毒性を持つことを一度に探索する評価システムを開発する。
研究方法
研究代表者らは親電子物質(酸化活性毒性)を解毒する際に肝臓のグルタチオンが枯渇したことを示すバイオマーカーオフタルミン酸を発見した。本研究では、マウスの腹腔内に各種の化学物質を注入し、キャピラリー電気泳動-質量分析計(CE-MS)法で肝臓や血中のオフタルミン酸の濃度を測定する。化学物質の投与によりオフタルミン酸の濃度が急増すれば、グルタチオンの枯渇を示し、投与物質あるいはその代謝物が酸化活性物質であることを示す。本法を酸化活性の有無が判明している種々の化学物質に適用し、正しく酸化活性を測定できるか検討する。酸化活性の有無とオフタルミン酸の測定結果に高い相関関係があれば、本法は簡便に化学物質の酸化活性を測定できるシステムであることを示す。
結果と考察
本年度の研究により、化学物質およびその生体内の代謝物が酸化活性物質であることを示すペプチドバイオマーカーを新たに14個発見した。また化学物質や代謝で生じた化合物が親電子物質である場合に、これらのペプチド類の生合成されるメカニズムや代謝経路を特定した。
発見したペプチドやオフタルミン酸バイオマーカーによる酸化活性毒性(親電子物質)の探索法を各種化学物質に応用した。化学物質自体が酸化活性を持つDiethylmaleate(DEM)、Sulforaphaneおよび生体内で代謝されて酸化活性を持つAAPを生理食塩水(Saline)に溶解してマウスへの腹腔内投与すると、 予想通り1時間後に肝臓内の複数のペプチドバイオマーカー類が有意に増加することを確認した。
結論
本年度の研究で、グルタチオンの枯渇を示すバイオマーカーをメタボローム測定を用いて測定し、親電子物質を探索する示すバイオマーカーの変動を測定する手法は、それ自身あるいは生体内で生じた代謝物が酸化活性毒性を持つ化学物質を探索する有望なシステムであることが確認された。平成20年度以降は、この方法論を疎水性の化学物質に適応できるように開発を進める。

公開日・更新日

公開日
2008-05-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200736025C

成果

専門的・学術的観点からの成果
親電子物質は生体高分子と反応し毒性を発揮することが知られている。本研究は、化学物質そのものが親電子物質であることや、生体内で代謝されて生じた物質が親電子物質であることを示すgluペプチド類を十数個を発見し、これらのgluペプチド類がグルタチオンと同じ酵素で生合成されることも解明した。化学物質をマウスに投与後してバイオマーカーを測定し、化学物質が親電子物質であるか評価するシステムを開発した。
臨床的観点からの成果
現在、B型、C型等のウイルス性の肝炎については抗体検査キットにより簡便に診断できる方法が確立されているが、薬剤性肝炎に関しては、診断法が存在しない。本研究手法で開発を行っているのgamma-gluペプチド類バイオマーカーを用いた親電子物質の探索法の有用性がヒトでも確認されば、gamma-gluペプチド類バイオマーカーを抗原として薬剤性肝炎の抗体検査キットを開発することが可能になる
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
この研究のさきがけとなった生体内で代謝されて生じた親電子物質を示すバイオマーカーの発見は2006年4月18日付け朝日新聞夕刊の全国版で大きく報道された。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-