食品添加物の規格基準の国際的整合性に関する調査研究

文献情報

文献番号
199700416A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物の規格基準の国際的整合性に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
義平 邦利(東亜大学大学院)
研究分担者(所属機関)
  • 黒川雄二(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 山田隆(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 武田明治(日大生物資源科学部)
  • 俣野和夫(日本食品添加物協会)
  • 古屋賢治(日本香料工業会)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 食品衛生調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
9,010,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品衛生法の改正により天然添加物は、化学的合成添加物との区別が無くなり、同一レベルでの規格・基準を確立することが必要となった。また、それらは国際化社会に対応出来るものが求められている。そこで、天然添加物及び農薬の規格・基準化するための基礎的な資料を作成することを研究目的とした。
研究方法
規格・基準の作成のために必須な天然添加物の含有成分、その不純物を研究調査し、それらを明らかにした。問題ある天然添加物については市場調査を行い成分を確認した。これら資料をもとに試験法の作成に関する研究を行った。基原動植物から天然添加物を抽出した際に残留の恐れがある農薬については、安全性評価試験の範囲、実施方法等について調査・検討を行った。需要の大きい天然添加物については、食品中の天然添加物の試験法を確立した。一方、諸外国の食品添加物の規格・基準、試験法等について調査比較し、次いで試験法を検討し、規格・基準の資料とした。
結果と考察
1.天然添加物の含有成分等に関する調査研究。?本年度は、タ行からワ行までの116の既存添加物の原材料である基原動植物の含有成分について調査研究し、得られた成分は約1,400物質であった。?これらの各物質について化学名、別名、CAS.No、化学的分類、分子量、分子式、構造式、基原、製法、部位、性状、毒性、生理活性、誘導体、販売元、文献等について調査研究をした。?生理活性を有するものは174の化合物で、毒性を有すると報告されたものは169の化合物が存在した。
2.残留農薬の毒性試験ガイドラインに関する調査研究。?「毒性に関する試験成績を作成するに当たっての指針(案)」を作成した。?「毒性に関する試験成績を作成するに当たっての指針(案)の解説」を作成した。?「農薬の登録申請に係る毒性試験成績の取扱いについて(案)」を作成した。
3.天然添加物成分の規格作成。?公定書と国際規格では整合性がないアナート色素と水溶性アナートについて検討をした。?IR測定、UV-VIS測定、HPLC測定、Hg、Cd、Pbの検出等について検討を行った。?IRは、KBr法で測定が可能であった。?UV-VISは、ビキシンとノルビキシンの区別は困難で、TLC判定が必要であった。?Cdは、純度試験は必要ないと考えられた。?Pbは、汚染の程度から規格が必要と考えた。?Hgは、汚染の程度から純度試験が必要と考えた。
4.食品中の分析法。?食品中のベニバナ黄色素の分析法を検討した。スチレンジビニルベンゼン系のプレパックカートリッジカラム固相抽出法を用いることで食品中のベニバナ黄色素の分析は良好な結果を得た。?ブドウ果皮色素4社5の製品について検討を行ったところ、3社の製品については色価が大きく主要色素成分の比率に差がなく標品として使用が可能であった。?ベニバナ黄色素、クチナシ黄色素、ウコン色素、ノルビキシンの分析法の検討を行い、食品中からの分析法を確立した。
5.天然添加物の国際規格等。?EU国際規格及びFCC(IV)を翻訳し、比較検討を行った。?ミックストコフェロールは、HPLCの利用が可能であった。?β-カロテン及び抽出カロテン類の確認試験法カールプラス反応のクロロホルムの代わりにトルエンを溶媒として使用可であることが分かった。?トウガラシ色素及びマリーゴールド色素の薄層クロマトグラフィーの検討を行い、試験法を確立した。
6.食品香料の国際規格。?天然香料について国際規格と比較研究を行った。?食用香料として使用されている製油10品目(41点)を選定し研究した。?d-カルボン含量の測定法は「アルデヒド類及びケトン類含量第2法」の改良法で測定が可能であった。3級アルコールのリナロオールは、アルコール類含量定量法第1及び2法ではエステル化が困難であった。?有害金属、As、Pb、Cd、Hgを測定した。幾つかは有害金属を検出した。何れも数値が低く国際規格を大幅に下回っていた。?残留塩素系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタンを対象としてFCC法に準拠して分析した。いくつかは有害溶媒を検出した。FDAの規格よりも何れも数値が下回っていた。
考察としては、?規格・基準の作成のために必須な天然添加物の含有成分を基原植物・動物から調査したが、調査研究の精度を更に上げる必要がある。毒性及び生理活性を有する物質が存在した。複合成分からなる添加物は混入する恐れがあるので、純度試験が必要と考えた。?農薬については、「案」を作成したが、各方面の意見の徴集が必要である。?天然添加物の分析は、規格作成上必要であるので、より優れた試験法を確立する必要がある。?需要の大きい一部の天然添加物については、食品中の天然添加物の試験法を確立した。今後、更に範囲を広げていく必要がある。?添加物についてEU及びFCC?の規格について引続き検討を進めるとともに、有害溶媒等を非使用の普遍的な試験法の確立を検討する必要がある。?天然香料については、JECHFA等の規格外の香料や試験方等について詳しくを検討をする必要がある。
結論
既存添加物を始めとする天然添加物の調査・研究を行い、国際的に整合性とれた規格・基準化するために研究を行ってきたが、これまでに行ってきた研究結果から、天然添加物特有の全般的な問題としては、?我が国の天然添加物は数が多く、今回までの研究は主要な添加物の一部である、全ての添加物について調査研究を行うには長時間が必要である。?天然添加物の殆どをしめる抽出物等の複合成分からなる添加物について、規格基準及び安全性試験の基本的資料となる含有成分が明らかなものがごく限られてい。?主要諸外国には天然添加物が少なく、参考になるものが少ない。?特定の天然添加物以外は、研究が殆どされてないこと。?化学的合成添加物と異なり、化学的な取り扱いが困難であること。?標準品がないこと。 などが上げられ、引き続き検討が必要と思われる。

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