自治体におけるロコモティブシンドローム対策の体制整備:臨床情報・筋肉超音波の人工知能評価を用いた効果的な予防・介入方法の実証

文献情報

文献番号
202009016A
報告書区分
総括
研究課題名
自治体におけるロコモティブシンドローム対策の体制整備:臨床情報・筋肉超音波の人工知能評価を用いた効果的な予防・介入方法の実証
課題番号
19FA1007
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
岡 敬之(東京大学 医学部附属病院 22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松平 浩(東京大学 医学部附属病院)
  • 吉村 典子(東京大学医学部附属病院)
  • 橋爪 洋(和歌山県立医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,100,000円
研究者交替、所属機関変更
該当せず

研究報告書(概要版)

研究目的
身体のみならず精神・社会的な側面を包含する広範な概念であるフレイル(2014年日本老年学会)に対し、ロコモは運動器(身体)の脆弱化が、「ロコモ関連疾患」(変形性関節症、骨粗鬆症、脊柱管狭窄症など)や、「加齢による運動器機能不全」(筋力、持久力、運動速度、巧緻性、深部感覚の低下)により引き起こされた病態で、「ロコモ関連疾患」の診断と治療に関しては、既に豊富なエビデンスが構築されており、これらを対策に利用することが出来る。しかしながら「運動機能不全」に関しては、代表的なサルコペニア(筋量減少)でさえ、欧米では1989年に提唱されながらも(Am J Clin Nutr. 1989; 50:1231–1233)、アジアでの診断アルゴリズム(AWGS;Asian working group for sarcopenia)が確立したのは2014年であるなど、本邦における研究の歴史は浅く、今後のエビデンスの蓄積が望まれる。
申請者は、NEDOの世代人工知能技術分野において、医用画像モダリィティとして唯一非侵襲である超音波を用いた筋肉評価によりサルコペニアばかりでなく、筋力も判定可能なシステムを開発した実績(筋肉加齢変化の人工知能評価:2019年2月特許出願)を持つ。
自治体(和歌山県)のフィールドを利用して「医療・行政が連携した総合的なロコモ対策」モデルを構築することを目的とする。
研究方法
筋肉機能不全(筋力減少やサルコペニア)は、2005, 2008, 2012, 2015年分に関して評価が完了しており、これらのデータを人工知能で解析した結果、日常生活における不良姿勢(視診)と片脚立位時間が筋肉機能不全の発生や進行の危険因子である可能性が示唆された。この結果と文献レビューに基づいた考察により、介入研究における教育資材を開発した。2019年11月と2020年2月に自治体で講演会を開催、地域住民に本研究の意義に関して説明を行い、公共施設で実施される健康教室を母体に介入を行う母体を整えた。しかしながら2020/4/7に緊急事態宣言が発出され、5/31まで緊急事態措置が講じられていたため、自治体での健康増進に関わる活動が再開したのが2020年7月よりであった。このため介入研究も7月より開始し、ベースライン調査には54名が参加した。このうち52名が 教材+個別指導群:26名、教材指導群:26名に割り付けられた。介入期間は6か月間(2021年1月まで)とした。頻回な参集が難しい状況となってきたため、上記介入研究の他に従来の住民自主サークルでの活動をベースに、本研究で開発した資材を使用して効果を推定する解析も追加することとなり、2021年7月より3か月間で実施予定である。
近距離での接触を最小限にするため、資材をリモートで提供する環境構築にも着手し、2020年9月28日にZoomによるオンライン指導も開始した。
結果と考察
 教材+個別指導群と教材指導群のフォローアップは、それぞれ1月後:26名/23名、3か月後:26名/23名、3か月後:26名/23名であった。
 教材+個別指導群と教材指導群との間に参加者特性の有意差は認められなかった。
 主観的改善度において「やや改善」以上との回答者は、教材+個別指導群において1月後、3か月後、6か月後で76.9 %、84.6 %、80.0 %であり、教材指導群では34.8 %、54.5 %、52.2 %と、いずれの時点でも教材+個別指導群の改善度が高くなっていた。また満足度で「やや満足」以上との回答者は、教材+個別指導群において1月後、3か月後、6か月後で96.2 %、96.2 %、92.0 %であり、教材指導群では56.5 %、68.2 %、47.8 %と、いずれの時点でも教材+個別指導群の満足度が高くなっていた。別指導による痛み関連指標への効果の推定(混合効果モデルを用いた推定)を行った結果、いずれの指導方法でもロコモによる生活の支障度が改善した。個別指導を含む指導は、QOLを改善する点で優越性が認められた。
結論
筋肉超音波AI評価後の検診参加者に希望に沿って割付を行い、専門家による助言の介入群と対照群の 2 群に割付を行う比較試験を行った。
いずれの指導方法でもロコモによる生活の支障度が改善した。個別指導を含む指導は、QOLを改善する点で優越性が認められ、満足度も高かった。筋肉超音波の測定結果に関しては、今回の介入研究参加者全例に実施しておる、現在新たなアルゴリズム導入と使用機器をモバイル型に変更すること視野に入れているため、次年度に筋肉超音波AI測定の有用性を提示する予定である。

公開日・更新日

公開日
2022-06-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202009016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,930,000円
(2)補助金確定額
7,930,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,582,338円
人件費・謝金 1,476,432円
旅費 183,880円
その他 2,857,350円
間接経費 1,830,000円
合計 7,930,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-03-25
更新日
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