大規模レジストリ・大規模臨床試験の分析による合併症予防に有効な標準糖尿病診療の構築のための研究

文献情報

文献番号
202009013A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模レジストリ・大規模臨床試験の分析による合併症予防に有効な標準糖尿病診療の構築のための研究
課題番号
19FA1003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
植木 浩二郎(国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 門脇 孝(東京大学 医学部附属病院 糖尿病・生活習慣病予防講座)
  • 野田 光彦(埼玉医科大学 内分泌・糖尿病内科)
  • 岩本 安彦(公益財団法人日本糖尿病財団)
  • 大杉 満(国立国際医療研究センター糖尿病情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,940,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病の良好な管理により合併症を予防することは、寿命の延長とQOLの維持につながることが期待されるが、合併症予防による医療コスト削減と薬剤費などの医療費のバランスについても検討したうえでの標準治療の策定についての研究は、これまでなされてこなかった。
我々は、J-DOIT3試験において、ガイドラインより厳格な治療を行なうことにより、心血管イベント、脳血管イベント、腎症イベントを抑制することを報告した。一方、日本糖尿病学会と共に診療録直結型全国糖尿病データベース事業J-DREAMSを立ち上げ、大規模レジストリを構築した。更に、他の厚労科研研究班と緊密な連携を取りNDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)のデータを用いた全国の糖尿病の診療実態に関する解析に着手している。
過去10年以上に及ぶ最適治療の効果を前向きに評価できるJ-DOIT3のデータを解析し、得られた仮説をより多くの症例の最新の状況を横断的・縦断的に評価できるJ-DREAMSで検証し、更に非専門施設も含めた全国規模の実態を俯瞰できるNDBのデータへと外挿することで、各々の強みを活かしながらより正確な評価ができるものと期待される。
研究方法
【J-DOIT3】
腎症・網膜症の発症抑制に寄与する危険因子や薬剤の同定、厳格な多因子介入がQOL、骨折に与える影響などを明らかにする。並行して、介入終了後の追跡研究を行う。
【J-DREAMS】
患者の背景情報など、糖尿病標準診療テンプレートを用いて入力し、SS-MIX2標準データ格納システムを用いて蓄積され、多目的臨床データ登録システム(MCDRS)を使用してデータ抽出と送信が行われる。
【NDB】
特別抽出データを解析する環境を整備する。
結果と考察
【J-DOIT3】
介入期間中のサブ解析として、①腎症の発症には厳格な多因子介入、中でも血糖コントロールが重要である一方、その進展には血圧コントロールが重要であること、②骨折のリスクは女性において、FRAXスコアによって予測される一方、ピオグリタゾンの投与によって上昇すること、③網膜症の発症を抑制するには血糖コントロール、並びに低血糖の回避が重要であるころ、④QOLを考える上で糖尿病の治療満足度は、厳格な多因子介入により上昇し、中でも血糖コントロールが重要であることが示された。⑤脳血管イベントは厳格な多因子介入で抑制され、なかでもHDLコレステロール値が重要であることが明らかとなった。
加えて追跡研究においては、介入研究の主解析結果発表後も、両群の治療目標の設定は殆ど変化していないこと、並びに各危険因子の治療状況として、追跡3年目では群間差は縮まりつつあるものの、依然として強化療法群において良好なコントロールがなされていることを明らかにした。更に先行研究の報告を踏まえつつ、より長期の追跡を行なうことの重要性が改めて示唆された。
【J-DREAMS】
2020年3月末で、大学医学部附属病院や地域中核病院を中心に63施設、70,000人以上の登録がある糖尿病データベースである。
本分担研究では、J-DOIT3の本研究・追跡研究の解析結果や、NDBなどとの複数の臨床研究結果、糖尿病データベースとの突合を行うために、多角的に症例データが解析可能であるかを検証した。
併存疾患の有病割合に関する横断観察研究を行った。男女別、年齢別、糖尿病罹病期間別の層別解析を行った。 J-DREAMSは参加施設・登録症例も増加しており、1型糖尿病患者も多く含む糖尿病症例データベースである。検査結果だけでなく、症例の背景情報が豊富に収集されていることから横断解析、縦断解析のいずれにも用いることが出来ることが示された。
【NDBの整備状況】
 厚労科研・門脇班と緊密に連絡を取り、取得済みの2014年度度、2015年度分に加えて令和元年度に、糖尿病に関する特別抽出NDBデータを2016年度、2017年度分を取得した。
結論
【J-DOIT3】
2型糖尿病に合併した腎症・網膜症といった細小血管症や、有害事象である骨折、並びにQOLについて、どの因子が重要であるかをそれぞれ同定した。また介入終了後4年が経過したが、引き続き各危険因子は良好にコントロールされており、そのイベント発症率を含めて長期的に追跡することの重要性も、改めて示唆された。
【J-DREAMS】
糖尿病の併存疾患に関する横断観察研究の解析結果を提示した。J-DREAMSは参加施設・登録症例も増加しており、1型糖尿病患者も多く含む糖尿病症例データベースである。検査結果だけでなく、症例の背景情報が豊富に収集されていることから横断解析、縦断解析のいずれにも用いることが出来ることが示された。
【NDBの整備状況】
本研究でNDB特別抽出データを利用する準備を整えている。

公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202009013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,022,000円
(2)補助金確定額
9,022,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 58,431円
人件費・謝金 33,000円
旅費 0円
その他 6,848,569円
間接経費 2,082,000円
合計 9,022,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-03-25
更新日
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