難分解性有機汚染物質(POPs)の胎児期暴露に関する研究

文献情報

文献番号
200736019A
報告書区分
総括
研究課題名
難分解性有機汚染物質(POPs)の胎児期暴露に関する研究
課題番号
H18-化学-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 洋(東北大学大学院医学系研究科環境保健医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 細川 徹(東北大学大学院教育学研究科発達障害学)
  • 岡村 州博(東北大学大学院医学系研究科周産期医学)
  • 村田 勝敬(秋田大学大学院医学系研究科環境保健学)
  • 堺 武男(宮城県立こども病院)
  • 福土 審(東北大学大学院医学系研究科行動医学)
  • 斎藤 善則(宮城県保健環境センター環境化学部)
  • 仲井 邦彦(東北大学大学院医学系研究科環境保健医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
43,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
海外における先行研究から、ダイオキシン類、PCB、有機塩素系農薬などの残留性有機汚染物質(POPs)およびメチル水銀などの重金属の周産期曝露が出生児の成長と発達に影響することが報告されている。本研究では、POPsおよびメチル水銀の曝露に起因した健康影響の有無を明らかにするため、周産期における化学物質曝露を評価するとともに、出生児の成長と発達、とくに認知行動面の発達を追跡する前向きコホート調査を行った。
研究方法
前年度からの疫学調査を継続した。本年度は、生後42ヶ月で実施したKaufmann Assessment Battery for Children(K-ABC)による追跡調査を終了するとともに、66ヶ月(社会生活能力や不適応行動に関するアンケート調査)および84ヶ月(知能検査を含む多角的な検査バッテリー)を進めた。さらに、新生児行動評価(NBAS、生後3日目)、新版K式発達検査、Bayley Scales of Infant Development(BSID、生後7および18ヶ月)、およびK-ABCと、臍帯血PCBおよび母親毛髪総水銀との関連性を重回帰分析により解析した。
結果と考察
NBASについて、臍帯血PCBとの間に関連性は見られなかったものの、母親毛髪総水銀との間に有意な関連性が認められ、運動クラスターのスコア低下が示唆された。一方、生後7および18ヶ月に実施した発達検査では、毛髪総水銀との間に関連性は認められなかったものの、臍帯血PCBは生後7ヶ月の新版K式発達検査の認知・適応領域および言語・社会領域、ならびにK-ABC認知処理尺度において、負の相関が認められた。
結論
a) メチル水銀曝露による負の影響が新生児期に示唆されたものの、b) メチル水銀曝露の影響はそれ以降の追跡調査では観察されなかった。c) PCB曝露の影響は生後7ヵ月(新版K式発達検査)および42ヶ月(K-ABC)で観察され、周産期PCB曝露の影響が懸念されたものの、d) 7ヶ月のBSIDおよび18ヶ月のいずれの発達検査でもPCB曝露の影響は確認できなかった。化学物質曝露の影響は、子どもの成長とともに顕在化したり消失することがある。本研究は子どもの発達を追跡するコホート調査であり、引き続き周産期におけるPOPs曝露評価を母乳を用いて進めるとともに、児の発達を追跡し、生後7ヶ月および42ヶ月で観察された現象の確認を行う計画である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-08
更新日
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