地域高齢者の市販弁当等の購買状況を踏まえた適切な食事の普及啓発のための研究

文献情報

文献番号
202009008A
報告書区分
総括
研究課題名
地域高齢者の市販弁当等の購買状況を踏まえた適切な食事の普及啓発のための研究
課題番号
H30-循環器等-一般-008
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
本川 佳子(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 横山 友里(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 奈良 一寛(実践女子大学 生活科学部 )
  • 小林 知未(武庫川女子大学 食物栄養科学部)
  • 目加田 優子(文教大学 健康栄養学部)
  • 鈴木 友貴(小久保 友貴)(愛知淑徳大学健康医療科学部健康栄養学科)
  • 渡邊 裕(北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室)
  • 平野 浩彦(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 歯科口腔外科/研究所 口腔保健と栄養)
  • 大渕 修一(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)
  • 大上 安奈(東洋大学 食環境科学部)
  • 吉崎 貴大(東洋大学 食環境科学部食環境科学科)
  • 粟田 主一(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 自立促進と精神保健研究チーム)
  • 飯坂 真司(淑徳大学 看護栄養学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
7,774,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①地域高齢者の市販の惣菜等の利用状況を含めた摂取状況の比較および食事パターンの検討
高齢者が普段利用する食事サービスで多いのは「外食」や「店で売っている弁当やお惣菜」が多く、利用する者の割合がそれぞれ4割を占め、高齢期の食生活に外食、市販弁当・惣菜等が占める割合は今後も高くなると推察される。このため地域高齢者の適切な栄養支援に向けては、市販弁当・惣菜等の利用状況を考慮した、食環境整備の推進を行っていく必要がある。しかし、これまでに本邦において地域高齢者の食事調査及び惣菜等の購買状況を含めた食事パターン(惣菜等の利用頻度等)の把握や、食事パターン別の栄養素等摂取量についての実態把握は十分ではない。そこで本研究では、地域高齢者の食事パターン及び食事パターン別の栄養素等摂取量について実態を把握することを目的に調査を行った。
②地域高齢者の市販弁当等の食品分析による実態に即した栄養素等摂取量の把握
本研究は、市販弁当、総菜等を活用した食環境整備を目指し、地域高齢者の栄養成分表示の活用方法について検討することを目的に調査を行った。
③地域高齢者の市販の惣菜等の利用状況を含めたツール素案の作成
市販弁当等の利用状況を考慮し高齢者の適切な栄養支援の一助とするための地域高齢者の適切な食事に資する普及啓発用ツール素案を作成することを目的とした。
研究方法
①地域高齢者403名をリクルートし、1日分の秤量法による食事調査を行った。惣菜等の購入状況を含めた食事調査による食事パターンについて検討したところ、惣菜等使用の割合は24%であった。自炊群、市販群の比較では、ビタミン、ミネラルで市販群で低値を示し、推奨量の達成割合も同様の結果であった。市販の惣菜等の活用については、これらの栄養素の摂取が少なくなりがちであることを踏まえ、惣菜の追加、果実類の追加等を提案することで、市販群を利用した食事においても適切な栄養摂取につなげることが可能であると考える。また欠食群との比較では炭水化物、ビタミン、ミネラル、食塩相当量、食物繊維総量で欠食群が低値であり、推奨量の達成割合も同様の結果であった。朝昼夕別の市販、自炊の8グループ別の比較により、市販の使用状況による栄養素の差を明らかにすることを目的に検討を行ったところ、脂質、海藻類といった栄養素、食品群で差が認められたが、群間の差は認められなかった。
②分担報告書「地域高齢者の市販の惣菜等の利用状況を含めた摂取状況の比較および食事パターンの検討」で得られた食事調査から、市販弁当等を抽出し、栄養成分分析を行った。栄養成分分析は、食事調査から得られた市販弁当等を同様のものを購入し(110件)、エネルギー、炭水化物、食物繊維、たんぱく質、脂質、食塩相当量、カルシウム、カリウムとし、公定法により測定を行った(以下、分析値)。得られた分析値のうち、栄養成分表示されているエネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム(食塩相当量)について栄養成分表示のある市販弁当、総菜56件について記載されている値と比較検討した。
③本研究では分担報告書「地域高齢者の市販の惣菜等の利用状況を含めた摂取状況の比較および食事パターンの検討」「地域高齢者の市販弁当等の食品分析による実態に即した栄養素等摂取量の把握」の結果をもとに、市販弁当等の利用状況を考慮し高齢者の適切な栄養支援の一助とするための地域高齢者の適切な食事に資する普及啓発用ツール素案を作成した。
結果と考察
①本研究により、地域高齢者の惣菜等を含めた食事パターンが明らかとなった。惣菜等を利用した食事においても組み合わせ等の提案により、適切な栄養摂取が可能と考えられ、一方で欠食については特に低栄養リスクの増加があることから、市販の弁当、総菜等の使用を含めた提案を行う必要性が示された。
②市販の弁当、総菜等の栄養成分表示と分析値を比較した結果、比較的高い一致率を示した。市販の弁当、総菜等を利用する際は、食品の栄養成分表示を通して、栄養管理につなげることが期待されるが、今後詳細に検討していく必要性が示唆された。
③潜在クラス分析の結果はツール素案作成のための情報として有意な傾向は認められず、分担報告書の結果を含めたツール素案を市販の弁当、総菜等も含めた適切な食事摂取のための普及啓発資料とし、ツール素案を作成した。
結論
今後本研究結果を基礎資料とした適切な栄養管理を可能とする食環境整備の推進や普及・啓発が期待される。

公開日・更新日

公開日
2022-04-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-03-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202009008B
報告書区分
総合
研究課題名
地域高齢者の市販弁当等の購買状況を踏まえた適切な食事の普及啓発のための研究
課題番号
H30-循環器等-一般-008
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
本川 佳子(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 横山 友里(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 奈良 一寛(実践女子大学 生活科学部 )
  • 小林 知未(武庫川女子大学 食物栄養科学部)
  • 目加田 優子(文教大学 健康栄養学部)
  • 鈴木 友貴(小久保 友貴)(愛知淑徳大学健康医療科学部健康栄養学科)
  • 渡邊 裕(北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室)
  • 平野 浩彦(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 歯科口腔外科/研究所 口腔保健と栄養)
  • 吉崎 貴大(東洋大学 食環境科学部食環境科学科)
  • 大上 安奈(東洋大学 食環境科学部)
  • 大渕 修一(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)
  • 粟田 主一(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 自立促進と精神保健研究チーム)
  • 飯坂 真司(淑徳大学 看護栄養学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
内閣府調査によると高齢者が普段利用する食事サービスで多いのは「外食」や「店で売っている弁当やお惣菜」が多く、利用する者の割合がそれぞれ4割を占め、単身や高齢夫婦世帯の増加、スーパー、コンビニエンスストアの充実等も伴い、高齢期の食生活に外食・市販弁当等が占める割合は今後も高くなると推察される。このため、市販弁当等の利用状況を考慮し地域高齢者の食生活の実態に即した、食環境整備の推進を行っていく必要がある。
我が国では、国民健康・栄養調査が行われ、健康増進対策や生活習慣病対策に不可欠な調査となっている。しかし、国民健康・栄養調査による栄養素等摂取量は、食品ごとの摂取量を日本食品標準分析表の収載値を基に算出されている。市販弁当等は工場等で手製とは異なる工程で加工され、手製の場合と栄養素等の量が異なることが推察される。そこで本研究は、①地域高齢者の市販弁当等の購入状況を含めた食事調査を実施し食事パターンを把握すること、②食事調査から得られた市販弁当等の食品分析を行い、より実態に近い栄養素等摂取量を把握すること、③食事パターン別に食事摂取基準の推奨量と比較して過不足傾向のある栄養素等について検討し、地域高齢者の適切な食事に資する普及啓発用素案作成を目的とし、調査研究事業を行った。
研究方法
<研究:食事調査および食品分析の実施>
①対象者
食事調査は地域の偏りがないよう、都市部(東京都板橋区)、地方(愛知県、群馬県、北海道)から対象者を選定した。都市部在住高齢者のリクルートは、東京都健康長寿医療センターが実施するお達者健診(板橋区大山)、高島平Study(板橋区高島平)、東京都健康長寿医療センター増進センターの研究参加者から参加希望者を募った。地方在住高齢者のリクルートは当チームが実施する口腔調査の対象地域および研究協力者の研究対象地域とした。都市部、地方で計404名の対象者をリクルートし、すべての調査に参加が得られた373名を分析対象者とした。各地域の対象者は、都市部283名、愛知県3名、群馬県56名、北海道31名である。
②食事調査方法
食事調査方法は国民健康・栄養調査に準じる。特別な日を除く1日分の食事について秤量法(比例案分法)により栄養素等摂取量、食品群別摂取量を算出する栄養素等摂取量算出の解析にはエクセル栄養君を用いた。秤量法実施にあたり対象者への説明、調査期間中の対応、記録のチェックには秤量法による食事調査経験者の管理栄養士または訓練を受けた調査員が行った。尚、本調査で実施する食事調査は季節間変動の影響を考慮し、実施した。
③食品分析
食品分析は健康増進法に定める登録試験機関に委託した。分析項目はエネルギー、炭水化物、食物繊維、たんぱく質、脂質、食塩相当量、カルシウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛とした。
④研究各年度スケジュール
研究1年目: 第1期食事調査を実施した(2018年12月~2019年1月)。都市部在住高齢者90名を対象に食事調査および食品分析を行い、解析を行った。食品分析は食事記録および普段良く食べる市販弁当等を記録してもらい、そのうち購買頻度の高いものを抽出し、40件の分析を行った。
研究2年目:第2期食事調査(2019年4月~5月)および第3期食事調査を実施した(2019年10月~2020年11月)。第2期は地方在住高齢者53名を対象に食事調査および食品分析を行った。第3期は都市部在住高齢者193名を対象に食事調査および食品分析を行い、第1期・第2期データを結合した。食品分析は第1期と同様で、第2期、第3期合わせて55件の分析を行った。
研究3年目:第4期食事調査を実施した(2020年12月~2021年1月)。地方在住高齢者31名を対象に食事調査および食品分析を行い、第1期~第3期のデータと結合した。食品分析は第1期と同様で15件の分析を行った。
以上、全4期の食事調査から得られた適切な食事摂取に資する普及啓発用素案の叩き台を作成し、班員および専門職種へのヒアリングを行い、ツール素案を作成した。
結果と考察
本研究では分担報告書「地域高齢者の市販の惣菜等の利用状況を含めた摂取状況の比較および食事パターンの検討」「地域高齢者の市販弁当等の食品分析による実態に即した栄養素等摂取量の把握」の結果をもとに、市販弁当等の利用状況を考慮し高齢者の適切な栄養支援の一助とするための地域高齢者の適切な食事に資する普及啓発用ツール素案を作成した。
結論
今後本研究結果の普及・啓発により、地域包括ケアシステムの下、できるだけ住み慣れた地域で在宅を基本とした生活の継続を目指すための、適切な栄養管理を可能とする食環境整備の推進や普及・啓発に大きく貢献すると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2022-04-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202009008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究の実施により地域高齢者における市販弁当等の購買状況を含めた食事パターン(市販弁当等の利用頻度等)の把握や、食事パターン別の栄養素等摂取量について実態を把握した。また食事調査により把握された市販弁当等については食品分析も実施することから市販弁当等を摂取した場合のより実態に近い栄養素等摂取量を把握した。
臨床的観点からの成果
国民健康・栄養調査による栄養素等摂取量は手製の料理であるか否かを問わず、食品ごとの摂取量を日本食品標準分析表の収載値を基に算出されている。市販弁当等は工場等で手製とは異なる工程で加工され、手製の場合と栄養素等の量が異なることが推察されるが、本研究ではその点について食品分析を行い、明らかにした。
ガイドライン等の開発
本研究事業で得られたデータを食事摂取基準の推奨量と比較して過不足傾向のある栄養素等があるかどうかを検討し、適切な食事に資する普及啓発用ツール素案を作成した。
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-05-19
更新日
2023-06-22

収支報告書

文献番号
202009008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,106,000円
(2)補助金確定額
10,105,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,685,948円
人件費・謝金 1,272,436円
旅費 230,156円
その他 4,584,845円
間接経費 2,332,000円
合計 10,105,385円

備考

備考
自己資金385円

公開日・更新日

公開日
2022-05-06
更新日
-