動物性加工食品等の品質保証システムに関する研究

文献情報

文献番号
199700415A
報告書区分
総括
研究課題名
動物性加工食品等の品質保証システムに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
熊谷 進(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 小沼樽隆(国立医薬品食品衛生研)
  • 山崎省二(国立公衆衛生院)
  • 山本茂貴(国立公衆衛生院)
  • 藤原真一郎(国立公衆衛生院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 食品衛生調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
13,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年HACCPシステムによる食品の衛生管理の導入が世界的に進められ、我が国においても食品衛生法の総合衛生管理製造過程の承認制度の中にこの方式を位置づけるなど、食品製造等への導入が図られている。しかし、導入が行なわれ実行に移されている部分は未だ極めて少なく、早急に個々の食品産業への導入のための基礎的知見を収集しなければならず、同時により合理的にかつ確実にこの衛生管理を進めるための基礎データも構築しなければならない。このために本研究では、微生物危害のリスクアセスメント、食品製造施設におけるGMP、危害のデ!夕べースおよび予測モデル、HACCPシステムの評価手法、個別食品ごとのHACCPプラン作成方法、HACCPガイドブック作成を行う。またクリプトスポリジウムによる食品の汚染が懸念されていることから、この制御に関する研究も行う。
研究方法
1)微生物危害のリスクアセスメントにおける一般的要件を求める。個別事例として、Q熱リケッチアのリスクアセスメントを行なう。
2)各国における一般的衛生管理要件の状況を調査し、それに基づきGMPを構築する。
3)最新のデータを含めた危害のデータベースを作成する。予測モデル作成方法を検討する。
4)各国の情報を収集し、HACCPシステムの評価手法について検討を加える。
5)魚肉ねり製品、清涼飲料水、レトルト食品、冷凍食品についてHACCPプラン作成のための基礎的知見を得ると共に、プランのモデルを作成する。
6)紫外線やオソン、渡過等によるクリフトスボリジウムの制御に関する文献調査を行なった。
結果と考察
1 )FAO/WHOのガイドラインに治って、我が国の現状に即したりスクアナリシス手法を検討した結果、危害の同定については食中毒統計からある程度把握できること、食品中病原微生物による危害の重篤度と期間の質的量的推計を行なう危害の特定明確化については、食品中の微生物の動態や食品による病原性の変化等のデータを整備する必要があること、感染・発症用量の評価と暴露評価については疫学デー夕や食品ごとの微生物汚染状況のデータを整備する必要があること、危害度特定明確化については量的推計が現在では困難であるが、質的推計は食品の喫食状況、病原体の生態、疫学データ等から判断できるであろうことが考えられた。  Q熱の診断法のうち、PCR法による病原体検出方法を検討した結果、coml遺伝子プライマーを用いるネステッドPCR法が感度が高く特異性も高いことが分ったわが国におけるQ熱へのヒトの感染状況を把握するために、ヒト血清1 320検体について間接 蛍光抗体法で抗体力価を検査した結果、10例が抗体陽性と判定されたが、既往歴からこれらは不顕性感梁であったことがわかった。
2)米国、カナダ、EUおよびコーデックスにおける一般衛生管理要件を調査した結果施設設備・機械器具、給排水、廃棄物、防そ、従事者の衛生等に関する要件については、ハード面、ソフト面においていずれも共通であった。コーデックスおよび各国に見られた「製品の回収フログラム」については、我が国でも要件としてあげてはいるものの、具体的な基準等はこれまで無かった。我が国で要件としている「製品等の試験検査に用いる機械器具の保守点検」については他の国々では要件としていないことが分かった。これら知見を基に、「ゴール」「なぜ?」「作業手順の例」から成る製造者の指針を念頭においた具体的一般的衛生管理フログラムおよび対応する記録様式を作成した。
3)腸管出血性大腸菌0157菌株についてTSA上の単一集落をTSB(pH7.3)中で増菌した後に、pH7,3または5.0のTSBで希釈した菌液を用いて、550C下での加熱致死実験を行なった結果、pH5.0における方が高い耐熱性が見いだされた。
コンピュータを用いて増殖曲線Gompertz式の各係数を実験データから求める方法および最良の式を求めるためのあてはまりの良否を判断する方法を考案した。
ソーセージ製造における腸管出血性大腸菌0157の死滅条件検討のための実験方法を検討した。
4)米国、ニュージーランド、オーストラリアにおけるHACCPシステムの評価手法の調査結果に基づき、HACCPシステムについては計画段階からシステム実施中に至るまで検証が必要であること、検証はプランの目的達成のバリデーションとプランが有効に稼働していることのべリフィケーションにより実施する必要があること、食品の安全性に潜在的に影響するものは全て検証の対象になること、適切なチェックリストを作成すべきであること、検証のための経験・教育・訓練が必要であること、清浄性の検査方法としてとしてATP測定法が実用的であることがわかった。
5)魚肉ねり製品の製造と衛生管理方法、食中毒発生事例、微生物学的および理化学的試験成績、関連文献等を収集整理するとともに魚肉ねり製品製造の品質専門家からの情報に基づき、12品目の製品について原材料リストと製造工程図を作成し、危害分析を行なった。HACCPフランを作成するうえで考慮すべき必須の危害として、シュードモナスやセラチアなど腐敗微生物、腸炎ビフリオ、黄色フドウ球菌、クロストリジウム属菌、サルモネラ、病原大腸菌、セレウス菌、アニサキス、シュードテラノーバ、大複殖門条虫、アフラトキシン(香辛料を使用の場合)、食品添加物、ヒスタミン、洗浄殺菌剤、異物が掲げられた。
国際的調和に留意した冷凍食品の微生物規格を設定するために国内外の冷凍食品の微生物規格を調査した結果、日本の規格基準では細菌数、大腸菌群、大腸菌が、ICMSFでは細菌数、糞便性大腸菌群、黄色フドウ球菌、大腸菌が、AOACでは大腸菌が、米国FDAではサルモネラ、黄色フドウ球菌エンテロトキシン、黄色ブトウ球菌、細菌数、大腸菌、ポツリヌス菌、ボツリヌス毒素がそれぞれ使われているが、EUの基準には細菌数等の基準は含まれていないことがわかった。
6)クリプトスボリジウムオーシストの不活化に要する薬剤濃度と接触時間に関しては、塩素、二酸化塩素、過酸化水素、ヨウ素の効果が調べられており、このうち比較的実用レベルの近いのは二酸化塩素1.8mg/1、1 0分間であることが、また加熱に対しては6 00C I0分間で、凍結ではー200CI日でそれぞれ不活化されることが認められている。
結論
1)我が国の現状に即したりスクアナリシス手法を検討し,必要なデータを明らかにした。Q熱の診断法として感渡が高く特異性も高いPCR法による病原体検出方法を見いだした。我が国におけるヒト血清1320検体のうち10例が抗体陽性と判定され、既往歴からこれらは不顕性感染であったことがわかった。
2)米国、カナダ、EUおよびコーデックスにおける一般衛生管理要件を調査し、これら知見を基に製造者の指針を念頭においた具体的一般的衛生管理フログラムおよび対応する記録様式を作成した。
3)腸管出血性大腸菌0157菌株について加熱致死実験を行ない、PHによる影響を見いだした。増殖曲線Gompertz式の作成方法を検討した。ソーセージ製造における腸管出血性大腸菌0157の加熱致死実験方法を検討した。
4)米国、ニュージーランド、オーストラリアにおけるHACCPシステムの評価手法の調査結果に基づき、HACCPシステムの評価に必要な事項を明らかにした。
5)魚肉ねり製品12品目について原材料リストと製造工程図を作成し、危害分析を行なった。国内外の冷凍食品の微生物規格を調査し明らかにした。
6)クリプトスボリジウムオ-シストの不活化に有効な薬剤、加熱条件、凍結条件について文献的に明らかにした。

公開日・更新日

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