文献情報
文献番号
200736012A
報告書区分
総括
研究課題名
前向きコホート研究による先天異常モニタリング、特に尿道下裂、停留精巣のリスク要因と内分泌かく乱物質に対する感受性の解明
課題番号
H17-化学-一般-013
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
水上 尚典(北海道大学大学院医学研究科生殖・発達医学講座産科・生殖医学分野)
研究分担者(所属機関)
- 遠藤 俊明(札幌医科大学産婦人科学)
- 千石 一雄(旭川医科大学産婦人科学)
- 櫻木 範明(北海道大学大学院医学研究科生殖内分泌腫瘍学)
- 野々村克也(北海道大学大学院医学研究科腎泌尿器外科学)
- 藤田 正一(北海道大学大学院獣医学研究科毒性学)
- 中澤 裕之(星薬科大学大学院薬品分析化学)
- 梶原 淳睦(福岡県保健環境研究所食品分析化学)
- 岸 玲子(北海道大学大学院医学研究科公衆衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
63,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
尿道下裂、停留精巣等の先天異常の疫学研究をpopulation-basedで行ない、わが国における発生率の増加の有無、リスク要因を検討する。
研究方法
北海道内約40産科施設の協力を得て、妊婦を対象に地域ベースの前向きコーホートを設定し、先天異常の出現頻度を調べる。妊婦母体血のダイオキシン類と有機フッ素化合物の新生児体格への影響を評価し、また能動・受動喫煙別ダイオキシン類異性体の測定を行なう。NICUにおける経管栄養によるフタル酸エステル曝露を検討する。
結果と考察
(1)平成20年1月までの参加妊婦12686人、出生児10913名、うち先天異常総数281、頻度2.12%であった。うち先天性心疾患41人、ダウン症候群14人、口唇口蓋裂11人、停留精巣10人、尿道下裂6人であった。(2)195名の妊婦母体血ダイオキシン濃度は、出産により約20%減少すると推察され、年齢上昇に伴い有意に上昇した。PCDFsよる出生体重への有意な負の影響、PCDDs/PCDFsによるSGAへの負の影響がみられた。(3)全ての母体血、臍帯血、母乳からPFOSが検出され、母体血から胎盤を介して臍帯血に移行することが示唆された。PFOSと出生時体重で有意な負の相関が得られた。(4)妊婦の喫煙者では非喫煙者と比較し血中Total non-ortho PCBs、Total non-ortho PCBs TEQ、Total coplarnar-ortho PCBs TEQが、高受動喫煙群では低受動喫煙群と比較しTotal non-ortho PCBs、Total PCDFs TEQ、Total PCDD/DFs TEQ、Total TEQが有意に低かった。妊婦の喫煙習慣だけでなく周囲の環境も考慮する必要があることが示唆された。(5)経鼻経口栄養チューブを必要とした新生児はフタル酸モノ2エチルヘキシル濃度が有意に高く、塩化ビニル製チューブからフタル酸エステルに曝露されたと考えられた。
結論
母体血ダイオキシン濃度は出産により低下し、妊婦年齢に伴い上昇すること、能動的喫煙だけでなく受動喫煙曝露によっても影響を受けることが明らかとなった。ダイオキシンやPFOSによる出生体重への負の影響が認められ、これらの次世代影響が懸念された。フタル酸エステル曝露の軽減には、塩化ビニルフリーのチューブ(ポリエチレンなど)を導入すべきであると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2008-04-12
更新日
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