生まれ年度によるHPVワクチン接種環境の違いに着目した子宮頸がん罹患リスクの評価・子宮頸がん検診受診勧奨手法の開発とHPVワクチンの有効性評価

文献情報

文献番号
202008053A
報告書区分
総括
研究課題名
生まれ年度によるHPVワクチン接種環境の違いに着目した子宮頸がん罹患リスクの評価・子宮頸がん検診受診勧奨手法の開発とHPVワクチンの有効性評価
課題番号
20EA1025
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
上田 豊(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学)
研究分担者(所属機関)
  • 平井 啓(大阪大学 コミュニケーションデザイン・センター/大学院医学系研究科生体機能補完医学講座/人間科学研究)
  • 中山 富雄(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター検診研究部)
  • 宮城 悦子(横浜市立大学 大学院医学研究科生殖生育病態医学)
  • 榎本 隆之(新潟大学 医歯学系)
  • 池田 さやか(国際医療福祉大学 三田病院 女性腫瘍センター・婦人科)
  • 中川 慧(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学)
  • 八木 麻未(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,690,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
当研究は、本邦におけるHPV ワクチンによる子宮頸がん(浸潤がん)の予防効果の検証のためのコホートの形成を第一の目的としている。さらに、生まれ年度ごとの20歳での細胞診異常やCINの発生率を継続的に把握していくことで、HPVワクチン導入前世代・接種世代・停止世代の子宮頸がん罹患リスクを評価することを第二の目的としている。さらに、子宮頸がん罹患リスクの特に高いワクチン停止世代に対して適切な子宮頸がん検診受診手法を開発して検診受診率を上昇させることで、HPVワクチン積極的勧奨差し控え継続による弊害の低減に寄与することが第三の目的である。
研究方法
(1) 生まれ年度による子宮頸がん罹患リスクの評価
(1-1)20歳子宮頸がん検診結果の経年的観察調査
<2020年度>
前研究では7自治体からのデータを活用して解析を行ったが、当研究では協力自治体を増やし、HSIL以上の細胞診異常や前がん病変の頻度の大規模な時系列調査を実施するためのデータ収集を行う予定とした。
(1-2)生まれ年度による子宮頸がん累積罹患率・死亡率の解析
(調査(A):全国がん登録システムを活用した生まれ年度によるコホート研究)
<2020年度>
協力自治体と契約して自治体のHPVワクチン接種記録の電子化・解析対象リスト作成を行い、全国がん登録データの使用申請を行う予定とした。
(2) HPVワクチンによる子宮頸がん予防効果の解析
(調査(B):全国がん登録システムを活用したHPVワクチン接種コホート研究)
<2020年度>上記(1-2)と同様
(3) HPVワクチン停止世代に対する子宮頸がん検診受診勧奨手法の開発
<2020年度>
HPVワクチン導入前世代と接種世代と停止世代の女性に対するインタビュー調査および停止世代の女性に対する子宮頸がん検診受診勧奨メッセージ案の作成する予定とした。
結果と考察
(1) 生まれ年度による子宮頸がん罹患リスクの評価
(1-1)20歳子宮頸がん検診結果の経年的観察調査
前研究から協力を得られていた7自治体に加えて当研究で新たに18自治体からデータ提供を受けて解析を行った。解析年度も1997年度生まれまで更新することができた。ワクチン導入に伴ってHSIL以上は著明に減少し、細胞診異常全体(ASC-US以上)では減少はしたものの増加傾向は持続していた。組織診異常についても同様の傾向であった。これら成果は現在論文として投稿中である。
(1-2)生まれ年度による子宮頸がん累積罹患率・死亡率の解析
(調査(A):全国がん登録システムを活用した生まれ年度によるコホート研究)
 2020年度は、協力自治体と契約して自治体のHPVワクチン接種記録の電子化・解析対象リスト作成を行い、全国がん登録データの使用申請を行う予定であったが、協力予定であった自治体がCOVID-19対応等により当作業の実施が困難となった。そこで新たに別の自治体に協力を依頼し、国立がん研究センターとも面談を行い、実施に向けた準備を進めている。
(2) HPVワクチンによる子宮頸がん予防効果の解析
(調査(B):全国がん登録システムを活用したHPVワクチン接種コホート研究)
上述の(1-2)生まれ年度による子宮頸がん累積罹患率・死亡率の解析(調査(A))と同じ。
(3) HPVワクチン停止世代に対する子宮頸がん検診受診勧奨手法の開発
インタビュールームにて、「2000年度以降生まれはHPVワクチン停止状態のために再び子宮頸がんが急増する世代である」・「ワクチンを接種していないことはHPVに無防備な状態である」といった情報が停止世代の女性においては検診だけが子宮頸がんを予防する手段となるという理解につながる様子であった。これらをもとにメッセージ案を作成し、その評価を2021年度にインターネット調査で行う予定であったが、これを前倒しして2020年度に実施した。すなわち、インターネット調査において、子宮頸がん検診受診意向はメッセージ案提示群では206名では155名(75.2%)と、非提示群に比して有意に高率であった(p=0.018)。
結論
 本邦におけるHPV ワクチンによる子宮頸がん(浸潤がん)の予防効果の検証のためのコホートの形成については、がCOVID-19対応等により自治体の協力が得られず、2021年度以降も引き続き交渉を行っていく。生まれ年度ごとの20歳での細胞診異常やCINの発生率の調査は順調に進んでおり、今後もデータ収集を継続する。子宮頸がん罹患リスクの特に高いワクチン停止世代に対して適切な子宮頸がん検診受診手法の開発は、予定を越えてワクチン停止世代の子宮頸がん検診受診勧奨メッセージの定量評価(インターネット調査)まで実施することができた。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
2021-10-01

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202008053Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,997,000円
(2)補助金確定額
9,997,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 204,342円
人件費・謝金 0円
旅費 214,440円
その他 7,271,218円
間接経費 2,307,000円
合計 9,997,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-