がん検診の利益・不利益等の適切な情報提供の方法の確立に資する研究

文献情報

文献番号
202008051A
報告書区分
総括
研究課題名
がん検診の利益・不利益等の適切な情報提供の方法の確立に資する研究
課題番号
20EA1023
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 博(青森県立中央病院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国ではがん検診の正確な情報提供が不十分である。がん検診の基本的概念や原則を学ぶための成書が国内になく、本研究ではがん検診に関する従事者向けの(1)がん検診の教科書的資材とそれに基づいた(2)e-ラーニング資材等を開発する。併せて(3)がん検診従事者が地域のがん検診実施状況/水準を把握し、主体的に改善ができるよう支援する資材も作成する。対象とする従事者には検診に関与する医師、自治体の検診担当者、検診機関の検診担当者等、広くがん検診に関与する職種が含まれる。またがん検診の対象である一般市民向けには個人を尊重した意思決定の支援のために(4)利益のみならず不利益についても理解できるわかりやすいe-learning資材を海外の先進国の資材等を参照して作成する。以上を通じ、我が国においてがん検診の適切な情報提供を促進するとともに、がん検診実施の向上を図る。

研究方法
(1)がん検診従事者向けの教科書的資材の作成
国際標準のがん検診の原則を理解・共有するための適切な教科書的資材について検討した。
(2)がん検診従事者向けのe-learning資材の内容や提供方法の決定
がん検診に関する国際的な情報を公開しているCancer Screening in Five ContinentsプロジェクトとOECD Health Statisticsを用いて一定以上の水準で組織型検診を行っている国を対象として抽出した。
(3)がん検診従事者が地域のがん検診実施状況/水準を把握し、主体的に改善ができるよう支援する資材作成
がん検診のプロセス指標、市区町村用チェックリストなどから使用するデータと精度管理の手法や精度管理水準の理解の促進のための表示方法などを検討した。
(4)一般の市民向けのe-learningの内容や提供方法の決定
一般向けの内容に適した利益・不利益情報とその表示方法を検討するため、(2)で抽出した国の資材収集を行い検討することとした。

結果と考察
(1) がん検診従事者向けの教科書的資材の作成
検診の国際基準である’Principles and practice of screening for disease’(Wilson-Jungner, WHO)と現在の指針的位置づけとしてWHO EuropeのScreening programmes: a short guide(short guide)が国際標準の原則を記述した教科書資材として最適と判断され、その出版権をWHOから正式に取得し、翻訳作業中である。国際的に検診のバイブル的資材と位置づけられている古典的資材と最新資材の2つの)WHO資材の翻訳版を公開することはわが国の科学的根拠に基づくがん検診の理解とその実施に大きく貢献する。
(2) がん検診従事者向けのe-learning資材の内容や提供方法の決定
Cancer Screening in Five ContinentsプロジェクトとOECD Health Statisticsを精査した結果、(1)の翻訳資材に沿った構成とし、理解度のセルフチェックができる45-50分程度の資材とすることを決定した。教科書的資材の出版物の他にe-learning資材を公表することで従事者の理解をさらに促進することが期待できる。
(3) がん検診従事者が地域のがん検診実施状況/水準を把握し、主体的に改善ができるよう支援する資材作成
本年度は自治体が行う子宮頸がん検診について検討した。子宮頸がん検診に関与する機関や担当者を整理し、資材に盛り込むデータの項目とそれらデータと精度管理水準の関係等の理解のためにコンテンツの視覚化など、表示方法を検討し、資材の概要を決定した。今後、他のがん検診にも応用が可能と考えられた。検診従事者の精度管理指標やデータの理解が促進され、今後の精度管理の向上が期待できる。
(4) 一般の市民向けのe-learningの内容や提供方法の決定
Cancer Screening in Five ContinentsプロジェクトとOECD Health Statisticsを精査した結果、(1)の資材を踏まえた内容とし、一般のがん検診受診者が検診の検査の待ち時間等の5分程度の時間で閲覧できるアニメーションを作成することとした。わが国でも個人の意思決定重視の原則にかなう利益、不利益情報の適切な提供が促進されることが期待される。

結論
わが国で初の検診に関する国際標準の原則を踏まえたがん検診従事者向けの教科書的資材の作成と、それと呼応した形でのがん検診従事者向け、および一般向けe-learningの作成により、本研究班の目的であるがん検診に関する適切な情報提供が促進されるものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202008051Z