小児がん拠点病院等及び成人診療科との連携による長期フォローアップ体制の構築のための研究

文献情報

文献番号
202008050A
報告書区分
総括
研究課題名
小児がん拠点病院等及び成人診療科との連携による長期フォローアップ体制の構築のための研究
課題番号
20EA1022
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 清谷 知賀子(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター )
  • 瀧本 哲也(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター)
  • 原 純一(地方独立行政法人大阪市民病院機構 大阪市立総合医療センター 小児血液腫瘍科)
  • 依藤 亨(地方独立行政法人大阪市民病院機構 大阪市立総合医療センター)
  • 田尻 達郎(京都府立医科大学)
  • 清水 千佳子(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター)
  • 向井 幹夫(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター)
  • 康 勝好(埼玉県立小児医療センター)
  • 長谷川 大輔(学校法人聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 佐藤 真理(順天堂大学大学院医学研究科電子医療情報管理学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
11,540,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の最終目的は、国立成育医療研究センターに長期フォローアップセンターを設立し、情報収集・ 発信の基盤となるオンラインネットワークおよびCCS サポートシステムを構築することにある。さらに、長期フォローアップの出口である循環器、内分泌など長期合併症に対する成人施設との連携、人間ドックの活用についても課題を明らかにし、その対策を検討することも目的としている。
研究方法
国立成育医療研究センター内に長期フォローアップセンターを設置して、診療施設、中央診断・臨床研究のデータセンター、CCSおよびその家族等と連携して情報の授受を行うオンラインネットワークを構築するとともに、情報発信を行うCCSサポートシステムを構築する。初年度は、CCS登録の対象者、収集する情報、提供する情報の内容について原案を作成すると共に、TCCSGコホート研究においてデータセンターとREDCapを用いたネットワークを実際に稼働して情報収集を開始する。最終年度には、対象をJCCG登録患者に拡大することを検討し、全国的な小児がん長期フォローアップセンターとしての活動を開始する計画である。また、人間ドックの応用の可能性、循環器、内分泌など長期合併症に対する成人施設との連携、各種学会との連携に関しても検討を行なった。
結果と考察
長期フォローアップに関連する基本的な方針や方法等について検討し、TCCSGコホート研究を小児がん長期フォローアップの一つのモデルとした。TCCSGコホート研究計画書ver1.1を作成し、国立成育医療研究センターの倫理審査およびTCCSG参加施設の施設倫理審査承認を得て、2020年12月からREDCapによるWEB登録を開始し、2021年4月7日現在、10件の施設登録、62件の研究参加者登録を得ている。さらに、16歳以上の登録者に対し、COVID-19に関するWEBアンケート調査を実施し、実行可能性を検証した。
聖路加大学病院、大阪国際がんセンターで行っているCCS用人間ドックに関して、現状と課題を抽出した。小児がん経験者では代謝異常、肝機能異常、腎機能異常、内分泌異常、認知機能障害、歯科・眼科・耳鼻科的異常などを多く認め、人間ドックを用いることで効率的に評価できる可能性があると考えられた。大阪国際がんセンター成人病ドックでは、成人病ドック受診者の32%にがんサバイバーの受診を認めた。CCS人間ドックの課題の一つとして、公的資金による検診負担の軽減が必要であると考えられた。患者向けスマートフォンアプリの開発もすすめ、双方向性の情報伝達が可能になるものと考えられる。
JCCGで行われている長期フォローアップ関連研究の情報を収集した。長期的な合併症が問題となるLCHに関して、LCH-12研究の前向き追跡調査との連携の可能性について協議した。今後、長期合併症が問題となる造血細胞移植に関して、移植・免疫細胞療法委員会とも連携する計画である。また、JCCG脳腫瘍委員会で立ち上げた小児脳腫瘍患者の長期フォローアップ研究に関しても、情報を収集した。
日本小児内分泌学会CCS委員会と協同して、「小児がん内分泌診療の手引き」を作成し、日本小児血液・がん学会、JCCGよりコメントをうけて現在出版に向けた最終段階にある。
成人医療のなかでCCSに対して包括的なケアを提供できるよう、国立国際病院内に、国立成育医療研究センターからのCCSトランジションの受け入れ体制を整備し、症例検討を行った。成人医療側からみた問題点として、トリアージを行う窓口診療科の必要性、心理社会的視点の欠如、生殖医療に関する成人診療科からの患者教育の必要性などが明らかになった。医療従事者が開催する症例検討会は当事者の視点が抜け落ちているため、成人医療移行後のCCSのニーズについて、改めて検討する必要があり、小児科と成人診療科との温度差にも注意する必要があると考えられた。
結論
小児がん患者を長期にフォローアップするためのデータセンターとなる長期フォローアップセンターの基礎を構築し、TCCSGコホートをモデルとして運用を開始した。患者向けのツールとして、スマートフォンアプリを開発し、試用可能な段階となった。循環器、内分泌など長期合併症に対する成人施設との連携に関しては、トリアージを行う窓口診療科の必要性、心理社会的視点の欠如、生殖医療に関する成人診療科からの患者教育の必要性などが明らかになった。また、日本小児内分泌学会など各種学会やJCCGの各種委員会との連携が重要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202008050Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
14,214,000円
差引額 [(1)-(2)]
786,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,078,368円
人件費・謝金 5,745,185円
旅費 68,640円
その他 2,862,343円
間接経費 3,460,000円
合計 14,214,536円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-01-21
更新日
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