次期がん対策推進基本計画に向けた新たな指標及び評価方法の開発のための研究

文献情報

文献番号
202008047A
報告書区分
総括
研究課題名
次期がん対策推進基本計画に向けた新たな指標及び評価方法の開発のための研究
課題番号
20EA1019
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
東 尚弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センターがん登録センター)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 ゆり(大阪医科大学 研究支援センター医療統計室)
  • 小川 千登世(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科)
  • 樋田 勉(獨協大学 経済学部)
  • 助友 裕子(日本女子体育大学 体育学部 スポーツ健康学科)
  • 増田 昌人(琉球大学病院がんセンター)
  • 松坂 方士(弘前大学医学部附属病院臨床試験管理センター)
  • 若尾 文彦(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター)
  • 高山 智子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報提供部)
  • 脇田 貴文(関西大学 社会学部)
  • 片山 佳代子(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター (臨 床研究所)がん予防・情報学部)
  • 渡邊 ともね(国立がん研究センター がん対策情報センター がん臨床情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、次期がん対策推進基本計画に向けた進捗評価指標を設定し、測定結果に基づくがん対策の継続的改善を推進するため必要な研究を行うことを目的とする。特定のテーマに偏ることなく分野横断的にがん対策上の課題を俯瞰するため必要事項の抽出から始め、科学的に整理しつつ解決を進めていく点が独創的な点である。
研究方法
初年度である本年度は大別して以下の6点を行った。
①患者体験調査に基づく政策提言
平成30年度実施の患者体験調査(以下、患者体験調査という)について、その結果を元とした政策提言を行うため、患者関係者と頻繁な意見交換を行った。

②患者体験調査の詳細解析
成人患者体験調査のデータを使い、代表的なテーマに対して詳細に分析を開始した。データの正確性を検討するものや無回答のパターンに関する検討など方法論に関するものと、主として経済的問題、就労支援、AYA世代、高齢者といった対象者で区別した際の特徴などについて詳細解析及び自由記述に関する分析も行われた。

③小児患者体験調査
今回初めて小児患者体験調査が行われたことを受けて分析を行った。

④患者体験調査改善点の検討
患者の回答負担軽減のためには、施設から得られた情報を使って質問数を減らすことが考えられるが、回答率が下がってしまう懸念がある。そこで、今回、主として患者体験調査の本調査と並行して、各施設で10名ずつ、施設から得られた診療情報と比較可能な形で質問紙上も説明を行った分について解析を行った。

⑤数理モデルにかかる調査
シミュレーションががん対策評価に使えるかどうかの検討は必要である。シミュレーションの活用が先行する欧米諸国に比較して、我が国の課題を検討するためには、事例の収集が必要と考えられた。

⑥がん教育
がん対策関係者、がん教育担当者の問題意識を集約して、先行研究なども参考にしながら、がん教育の進捗評価が可能な、高校2年生へのアンケート用紙を確立し、実態調査を計画した。
結果と考察
結果:1.患者体験調査の結果をもととした政策提言
患者体験調査についての政策提言をまとめて公表し、報告書を発行するとともに国立がん研究センターのホームページ上で公表した。

2.患者体験調査の詳細解析
患者の治療納得度や、医療者との情報交換,金銭的負担,専門的な治療,全体評価,家族・家族以外への迷惑,偏見など、代表的な患者体験についての地域差、就労、ピアサポートなどのテーマについての解析や、選択肢式ではなく自由回答についての分析などを取り上げた。現在これらを解析中である。

3.小児患者体験調査
参加依頼施設は150、このうち参加施設数は97であり、調査票の発送数2511、除外数492、であった。現在これらの詳細解析を開始したところである。

4.都道府県のがん対策との情報交換
コロナ禍のためにがん対策の進捗が影響されている実態が明らかになっている。第三期青森県がん対策推進計画の中間評価は、コロナ禍により調査が中止、中間評価も延期された。沖縄県はロジックモデルの作成を行い指標を策定する作業は進めている。神奈川においても審議会の書面開催が続き新しい提案は困難な状態だった。

5.患者体験調査の改善点
患者の回答と、病院から得られている医療情報を一部において比較した結果、診断などは9割以上の一致が得られていた一方、がんのステージは47%の一致度であった。ステージ情報は回答に頼るのではなく、別途取得する方が良いと考えられる。

6.シミュレーション
 がん対策の進捗評価に使えるマイクロシミュレーションモデルは何かということを検討する前提として、今回は海外事例、国内事例を概観した。

考察:患者体験調査の成人・小児の報告書が発行されそれらのデータに基づくさらなる解析を進めていくこととなっている。患者体験調査自体は、主たる目的が幅広い実態把握に基づくがん対策全般の評価であるために、詳細な原因の分析に資する解析には限界があるものの、次の調査などへの出発点になると考えられた。
 がん教育については、がん対策の文脈の中で考えられる達成度と教育現場の目標を明確に整合性をとることが、評価をする上でも必要であると考えられ、その認識のもとに質問紙を作成する必要があると考えられ、準備中である。
 その他、コロナ禍のために研究の遂行が影響を受けたが、今後新しい日常に適合した方法で研究を進めていく必要がある。
結論
がん対策推進基本計画の中間評価に資する患者体験調査の報告が発行され、詳細な解析を行うとともに、次期がん対策推進基本計画の策定に向けたデータの提供が必要になると考えられる。コロナ禍の影響は免れ得ないが、新しいやり方で、がん対策の評価を実施していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202008047Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,000,000円
(2)補助金確定額
10,612,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,388,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,054,522円
人件費・謝金 1,725,864円
旅費 0円
その他 1,072,252円
間接経費 2,760,000円
合計 10,612,638円

備考

備考
新型コロナウイルス感染症の影響により、旅費がゼロになり、研究計画も変更したため、返金が発生した。東尚弘分担分で残金1,344,454円、渡邊ともね分担分で残金42,908円が出た。また、預金利息1円が発生したため。

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-