障害のあるがん患者のニーズに基づいた情報普及と医療者向け研修プログラムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
202008042A
報告書区分
総括
研究課題名
障害のあるがん患者のニーズに基づいた情報普及と医療者向け研修プログラムの開発に関する研究
課題番号
20EA1014
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
八巻 知香子(国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報提供部)
研究分担者(所属機関)
  • 河村 宏(特定非営利活動法人 支援技術開発機構 理事会)
  • 飛松 好子(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 石川 准(静岡県立大学 国際関係学部)
  • 山内 智香子(滋賀県立成人病センター 放射線治療科)
  • 堀之内 秀仁(独立行政法人国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)
  • 今井 健二郎(国立国際医療研究センター 研究所 糖尿病情報センター)
  • 打浪 文子(立正大学 社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,219,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害のある人ががんに罹患し、医療機関を受診する場合、がん患者やその家族、また受け入れる医療者にとってどのような困難があるのかは十分に明らかになっていない。がん治療は様々な選択が必要であり、治療の侵襲性も高いため、本人が自分の状況を理解し、納得して治療に臨むことが欠かせないが、障害のある人への情報提供の方法についても充分に確立されているとはいえない。
 本研究では(1)障害者および医療者双方の視点から、現状で障害のあるがん患者が受診する際の困難を把握すること、(2)障害者支援専門機関がもつ支援技術を医療機関で応用・普及させる方法を提示し、(3)様々な障害のある人が利用可能な情報資料の作成手順を定式化することを目的とする。
研究方法
1)障害のあるがん患者や家族の困りごと、ニーズ調査
国立障害者リハビリテーションセンターの職員、視覚障害者情報提供施設職員、手話通訳者、計37名への面接調査を行い、具体的に解決すべき課題の抽出を行った。
2)急性期医療機関における障害のある患者への対応の現状と困難に関する研究
医師4名、看護師1名、がん専門相談員1名によるグループディスカッションをおこなった。
3)障害のある人の情報ニーズに対応する資材作成と普及手法の検討に関する研究
 (1)知的障害者向けのわかりやすいがん資料作成手法の検討、(2)音声資料作成の迅速化の検討、(3)がん情報サービス内の新型コロナウイルス感染症に関する資料のアクセシブル版作成のプロセスの検討、(4)聴覚障害者情報提供施設における手話版資料の所蔵状況の調査を行った。
4)医療従事者と支援スタッフのためのサポートガイドの作成に関する研究
先行研究で作成された「医療従事者のための見えにくい方へのサポートガイド」で示した内容に、新型コロナウイルス感染症の入院で想定される流れに沿って場面を設定し、その場面ごとに配慮を必要とする事項を加えたパンフレットを作成した。
5)ろう者の健康の不平等に関する米国の研究動向に関する研究
オンライン会議システムを用い、該当分野の第一人者である、プールナ・クシャルナガル博士による講演会を開催した。
結果と考察
1)障害者および医療者双方の視点からみた、障害のあるがん患者が受診する際の困難
障害者の受診時の困難についての、福祉専門職、手話通訳者を対象とした調査からは、障害のある患者は、適切な配慮を十分に受けていない事例も明らかとなった。
一方、急性期医療機関の医療者への調査結果からは、個別のケースにおいては、何らかの支援が図られているが、家族が同行している場合には、家族等に対応を任せる傾向があることも明らかになった。
障害のある患者の受け入れを判断する医師が沿うべきガイドライン等を明確に示すこと、治療や療養について障害のある人が理解しやすい資料の提供が医療の適切な受け入れに寄与する可能性が高いと考えられた。

2)障害者支援専門機関がもつ支援技術を医療機関で応用・普及させる方法の検討
「医療従事者と支援スタッフのためのサポートガイド『視覚に障がいのある方が新型コロナウイルスに感染し入院したら』」は、視覚障害者を支援する専門職や眼科医、また視覚障害当事者等から、内容がわかりやすく、活用しやすい等の反響を多数得た。コロナ禍が収束以降も、聴覚障害、知的障害など、他の障害のある人に求められる医療機関の対応についても同様の資料を作成し普及することは有用であると考えられた。

3)様々な障害のある人が利用可能な情報資料の作成手順の定式化と普及方法の検討
今回の作成プロセスの検討で明らかになった手順を明文化し、普及することで、障害のある人も利用できる医療情報を適時に発信していくことが可能になると考えられた。その際、医療情報の提供元と、障害にあわせた情報提供をする機関との円滑な連携が行われること、作成方法がまだ確立途上にある手話やわかりやすい版の作成などについては、参照できる表現を蓄積した資料、正確性を担保するための手法などの洗練が必要であると考えられる。
また作成されたものが広く利用できるよう、わかりやすい版、手話版等についても、様々な機関で適切に作成された資料が蓄積されるような仕組みが求められる。
結論
本研究で明らかになった、障害のある人が医療機関を受診した際の困難については、医療者が平易に利用できる対応方法の提示によって、望ましい対応を広げる可能性が示唆された。医療機関での対応方法については、本研究で作成した医療従事者向けのサポートガイドを応用して他障害に展開することが有用であると考えられた。障害のある人がアクセスしやすい情報提供の方法については、本年度の試作によって明らかになった作成プロセスを展開していくことで、より多くの資料をアクセシブルな形で提供可能になっていくと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202008042Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,984,000円
(2)補助金確定額
11,984,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,986,055円
人件費・謝金 3,793,387円
旅費 153,220円
その他 3,289,002円
間接経費 2,765,000円
合計 11,986,664円

備考

備考
自己資金 2664円

公開日・更新日

公開日
2021-12-07
更新日
-