実装を視野に入れたがん患者の精神心理的な支援に関する診療ガイドラインの開発研究

文献情報

文献番号
202008040A
報告書区分
総括
研究課題名
実装を視野に入れたがん患者の精神心理的な支援に関する診療ガイドラインの開発研究
課題番号
20EA1012
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
吉内 一浩(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 内富 庸介(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院支持療法開発部門)
  • 明智 龍男(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野)
  • 奥山 徹(名古屋市立大学大学院 医学研究科 精神・認知・行動医学)
  • 藤森 麻衣子(国立がん研究センター社会と健康研究センターコホート連携研究部)
  • 秋月 伸哉(都立駒込病院 精神腫瘍科)
  • 藤澤 大介(慶應義塾大学医学部精神神経科学教室)
  • 小川 朝生(国立研究開発法人国立がん研究センター 先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野)
  • 島津 太一(国立がん研究センター社会と健康研究センター行動科学研究部実装科学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の死因の第一位のがんに関する重要な問題の一つに、精神心理的な問題がある。国際サイコオンコロジー学会でも、「気持ちのつらさ(うつや不安)」を「第6のバイタルサイン」として評価すべきであるという提言がされている。実際、わが国でも、がん患者の「気持ちのつらさ」の併存率が28.0%と報告されている(Fujisawa D, Support Care Cancer 2010)。近年は、再発恐怖も大きな問題で不眠(Akechi T, Psycho-Oncology 2007)とともに対策が急がれている(Butow P, Oncology 2018)。また、医療者のコミュニケーションスキルも重要な課題となっている(Fujimori M, J Clin Oncol 2014)。
 しかし、わが国では、前述の精神心理的な問題に関する診療ガイドラインが存在せず、そのことが「がん研究10か年戦略」の推進に関する報告書(中間報告、2019.4)の中の「がん患者の精神心理面に与える影響の把握や、患者の精神心理的ケアが不十分である」との指摘につながっていると考えられる。
 以上より、本研究では、気持ちのつらさ(不安・うつ)、再発恐怖、不眠、コミュニケーションに関する診療ガイドラインの作成を行う。その際、欧米においてガイドラインが半数未満の医療機関でしか使用されていないという問題があるので(Riba MB, J Natl Compr Canc Netw 2019)、普及のための実装科学の知見も取り入れて、ガイドラインの作成を行う。
研究方法
 ガイドラインのテーマとしては、本研究課題に課せられた通り、「再発恐怖」(世界的に用いられている表現に合わせて再発不安でなく、再発恐怖と表記する)」、「気持ちのつらさ(不安・抑うつ)」、「コミュニケーション」、「不眠」とした。
 また、ガイドラインの開発方法に関しては、日本医療評価機構のMinds診療ガイドラインの作成マニュアルに準拠した方法を用いることとした。
 具体的には、
① 統括委員会、ガイドライン作成グループの設置(テーマの類似性のため研究Iと重複あり)
② スコープの作成、重要臨床課題・クリニカルクエスチョンの設定
③ 系統的レビューを中心としたエビデンスの収集、評価・統合
④ 推奨文の作成
⑤ 診療ガイドライン草案作成
⑥ 外部評価者(患者等の一般市民の代表を含む)による外部評価
⑦ 診療ガイドライン最終決定
⑧ 公開
という手順を踏むこととした。
結果と考察
・結果:日本医療機能評価機構のMindsに準拠した、気持ちのつらさ(不安・うつ)、再発恐怖、不眠、コミュニケーションに関するガイドラインの作成を開始し、①作成グループの設置、②スコープの作成と重要臨床課題・クリニカルクエスチョンの設定を行い、現在、系統的レビューを中心としたエビデンスの収集・評価・統合を行なっている。
・考察:今後、がん患者の再発恐怖に対する精神心理的な支援法に関する診療ガイドラインが作成され、がん患者の生活の質の向上が期待される。また、より一層症状緩和を推進するうえで必要な研究が明らかになることが期待される。
結論
がん患者の「再発恐怖」、「気持ちのつらさ(不安・抑うつ)」、「コミュニケーション」、「不眠」に対する精神心理的な支援法に関する診療ガイドラインが作成されることにより、がん患者の生活の質の向上が期待される。さらに、不足しているエビデンスの構築が期待されるとともに、普及・実装のための方略も示されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202008040Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,700,000円
(2)補助金確定額
11,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,594,702円
人件費・謝金 2,838,901円
旅費 0円
その他 3,566,397円
間接経費 2,700,000円
合計 11,700,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-