進行がん患者に対する効果的かつ効率的な意思決定支援に向けた研究

文献情報

文献番号
202008038A
報告書区分
総括
研究課題名
進行がん患者に対する効果的かつ効率的な意思決定支援に向けた研究
課題番号
20EA1010
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
内富 庸介(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院支持療法開発部門)
研究分担者(所属機関)
  • 藤森 麻衣子(国立がん研究センター社会と健康研究センターコホート連携研究部)
  • 明智 龍男(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野)
  • 上野 太郎(サスメド株式会社)
  • 森 雅紀(聖隷三方原病院 緩和支持治療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は予備的無作為化比較試験により、進行・再発がん患者に対して抗がん剤治療中の早い段階から医療従事者がQPLによる質問支援を行うことで、望ましいコミュニケーション行動(患者が望む情報提供、共感的対話)、心理的苦痛を改善することを示した。一方で標準治療として経口抗がん剤を処方されている患者は、病院内での介入が困難となってきた。そのため場所を問わない介入方法の確立が必要であると考えた。本研究の目的は、進行がん患者に対して、モバイル電子端末のQPLを用いて事前にがんの知識や自らの意向を整理し、個別の価値観や意向に添った標準治療後の治療やケアに関する協働意思決定支援プログラムの有効性を検証することである。
研究方法
本年度は研究計画書作成に向けて文献レビューを行い、標準治療終了後の療養に関する患者と医師の話し合いを促進するための意思決定支援プログラムを開発した。プログラムには質問促進リスト(QPL: Question Prompt List)を用いた医師への質問選択、患者の価値観の整理、標準治療後の療養の場や希望するケアの選択が含まれる。これらを教育資材としてアプリケーションに組み込んだシステムを開発するための仕様書を作成し、プロトタイプを構築した。さらに対象者がモバイル電子端末を用いてスムーズに実施できるよう、介入者が電話や面談にて1回のみ支援するため、介入者向けの介入手順書を作成し、ロールプレイを実施した。
1. 文献レビュー・専門家間協議・患者参画によるプログラム開発
1)標準治療終了後のケア(アドバンスケアプラン)の介入研究レビュー(研究方法、介入方法):文献検索エンジンを用いて、関連する介入研究を系統的にレビューし、プログラムの内容を検討した(介入対象、時期、介入方法、評価指標、結果)。
2)標準治療終了後に関連するQuestion Prompt Listの作成:先行研究ならびに我々の研究チームが過去に開発したQPLの研究結果に基づき、本研究で使用するQPLを作成した。
3)アドバンスケアプランの介入資材の作成 :上記1)の研究結果、並びに2)で作成したQPLを用いて、アドバンスケアプランのプログラムを開発するとともに、並行して、同プログラムの介入資材を作成した。
4)専門家、患者参画によるプログラム開発 :上記1)~3)及び事前患者調査結果を基に研究者、患者、医師、看護師等で構成されるメンバーで協議し、協働意思決定支援プログラムを開発した。
2. 専門家の協議、患者参画によるアプリケーション開発
1)アプリ仕様書の作成 :上記1.の結果に基づき、アプリケーション開発会社と共にアプリケーションの仕様を作成した。
2)プロトタイプの開発:仕様書に基づきアプリケーション開発会社と共にアプリケーションを構築した。
3)専門家の協議・患者参画による修正:上記1)2)のアプリケーションの使用感、表現内容を確認するため、アドバンスケアプランに臨床・研究で携わる専門家並びに患者会代表に依頼して、仕様書の修正を行った。
3. 介入手順書の作成
1)上記1.2.から、介入手順書を作成した
2)介入者養成のために手順書を用いてロールプレイを実施した
倫理面への配慮:本研究は国立がん研究センター研究倫理審査委員会において承認された(課題番号 2020-500)。当該年度には倫理的配慮が必要となる調査は実施していないが、今後の調査において研究協力は個人の自由意思によるものとし、研究同意後も随時撤回が可能であること、不参加や同意撤回による不利益は生じないこと、個人のプライバシーは厳重に守られることを文書で説明して同意を得る。現時点で特に連携の必要性がある事象は発生していない。
結果と考察
結果:文献レビューを実施し、プログラムに関連する介入対象者、介入時期、介入内容、評価指標、結果をまとめた。得られた成果に基づき、専門家間で毎月会議を実施し、プログラムの内容、介入の詳細な実施方法について協議を行った。介入に使用するQPLとアドバンスケアプランを含むプログラムの全体像を協議により作成した。 アプリケーション開発会社と共にプログラムに基づいて、アプリケーションの仕様を検討し作成した。現在、仕様書に基づきアプリケーションを構築し、患者と医師から評価を得る予定である。介入マニュアルに基づいて、介入者を養成し、介入実施者の体制を構築している。
考察:介入プログラムの有効性を検証する試験実施に向け、体制を構築し、必要な資材の作成、アプリケーション開発を行った。今後は介入プログラムの検証試験の実施を進めていくことができる。
結論
本年度はモバイル端末上のアプリケーションを用いた協働意思決定プログラムの検証に向けて、プログラム開発とアプリケーションプロトタイプの作成を行った。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202008038Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,000,000円
(2)補助金確定額
11,880,000円
差引額 [(1)-(2)]
120,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 902,007円
人件費・謝金 8,190,818円
旅費 0円
その他 19,490円
間接経費 2,769,000円
合計 11,881,315円

備考

備考
研究代表者と、厚生労働省から直接交付を受ける研究分担者の支出のうち1000円に満たない端数1,315円は自己負担した

公開日・更新日

公開日
2021-12-07
更新日
2023-11-14