現場や地域の実情に即したがん治療と並行する緩和ケアの実装の推進に関する研究

文献情報

文献番号
202008037A
報告書区分
総括
研究課題名
現場や地域の実情に即したがん治療と並行する緩和ケアの実装の推進に関する研究
課題番号
20EA1009
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 学(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 島津 太一(国立がん研究センターがん予防・検診研究センター予防研究部)
  • 松本 禎久(国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 緩和医療科)
  • 中島 貴子(京都大学医学部附属病院 次世代医療・iPS細胞治療研究センター (Ki-CONNECT))
  • 森田 達也(聖隷三方原病院 緩和支持治療科)
  • 井上 彰(東北大学 医学部)
  • 堀江 良樹(聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,370,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、①「現場や地域の実情に即したがん治療と並行する緩和ケア」モデルの実装に係わる方策・実装戦略の開発、②このモデルを実践し、実装・患者・公衆衛生アウトカムの測定、③「現場や地域の実情に即したがん治療と並行する緩和ケア」の均てん化手法の確立を目的としている。
 がん患者の生活の質を向上させるケア提供方法で、科学的に効果が実証されている介入方法について、系統的文献検索および、それに基づく、医療従事者対象のインタビューを行った。その結果を研究班で合議し、医療資源の急峻な充実は現実的ではなく、新たな革新的な技術を用い、①患者自身の問題解決能力を高め、②患者の苦痛を適切にモニタリングし、医療者の負担の軽減と、患者の適切な行動変容の推進等を目指すケア提供体制が望ましいと考えた。よって、研究班として①、②を開発および実装の課題を明らかにし、新たなケア提供方法を研究班として提案する方針とした。さらに、③「現場や地域の実情に即したがん治療と並行する緩和ケア」の均てん化手法の確立に向け、我が国の厚生労働行政が推進する「がんと診断された時からの緩和ケア」に関する政策とアウトカムとの関係を明らかにし、既存施策の評価および新規施策の提案を通して、望まれる施策を明らかにする。
 さらに、「現場や地域の実情に即したがん治療と並行する緩和ケアの実装の推進に関する研究」の一環として、④「進行がん患者に対するスクリーニングを組み合わせた看護師主導による治療早期からの専門的緩和ケア介入プログラムの臨床的有用性を検証するランダム化比較試験」の二次解析を行い、臨床現場の実情に即したがん治療と並行する専門的緩和ケアの望ましい提供体制を明らかにする。さらに、⑤がん治療後期の意思決定支援のためのプログラム策定、すなわちUnfinished business(UB)概念を中心にすえて、がん患者のUB(いわゆるこころ残り)を最小化するためのプログラムを開発する。
研究方法
① Step1相談内容のカテゴリー化、Step2解答の作成、Step3チャットボットの作成、Step4 動作テスト、Step5 患者へのテスト評価の手順で研究を進める。
② 本研究では、PRO-CTCAEの日本語版およびEORTC QLQ C30搭載のスマートフォンアプリを使用する。研究参加者を対象に半構造化面接による探索的研究を行い、ePROアプリを利用した中での経験や、障害となった点、どのようにすればさらに利用しやすくなり有益になるかについて、調査する。
③ 修正デルファイ法を採用する。本研究のコンセンサス構築の対象は、「診断時からの緩和ケア」に関する具体的な政策の内容とし、ロジックモデル草案の作成と既存・新規のがん緩和ケア政策の評価/立案を研究チームと内部専門家パネルによって行い、最終的には、既存・新規のがん緩和ケア政策に対する、修正デルファイ法を通じた独立した外部専門家パネルによる評価を行う。
④ ランダム化比較試験の二次解析として、実際に専門的緩和ケアサービスが行った介入内容や患者に対するインタビュー調査も分析する。
⑤ 本年度は、UB概念に関する系統的レビューを行い、がん患者の遺族500名を対象としてUBがどの程度の頻度に見られるか、どのような医療者の介入と関連しているかを探索した。
結果と考察
研究班初年度であり、研究結果は研究の方針として、結論に取りまとめた。
結論
① 将来的な患者の自己解決・コーピング支援による生活の質の向上、適切な病院受診行動等の行動変容、医療者の負担軽減などに貢献することが期待される。
② ePROシステムにおいて、本邦の医療環境での患者や医療従事者が継続して利用する上での課題や方策が明らかになる。
③ 「がんと診断された時からの緩和ケア」の推進において重要な政策とその評価指標とその因果構造が明らかになり、今後の我が国における厚生労働行政における、がん緩和ケア政策・行政施策の立案・評価に寄与することができる。
④ ランダム化比較試験は、204名(予定症例集積数206名の99.0%)の患者が登録された。現在、生物統計家と連携し解析を実施中であり、今後、量的分析の結果に加え、質的分析を行うことで、臨床現場の実情に即したがん治療と並行する専門的緩和ケアの望ましい提供体制を明らかにする。
⑤ 系統的レビューでは、①UBの定義、②患者・遺族におけるUBの頻度、③UBのアウトカム評価に関する評価尺度、④UBの関連概念、⑤UB, UB-related distress、それらの要因やアウトカムの概念枠組みについて検討した。遺族調査では、UBの頻度は25~30%程度であると見積もられた。遺族調査と系統的レビューの結果から、UBを軽減するプログラムの開発を来年度に行い、実装する。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202008037Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,800,000円
(2)補助金確定額
10,190,000円
差引額 [(1)-(2)]
610,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,659,293円
人件費・謝金 1,582,266円
旅費 52,600円
その他 2,469,660円
間接経費 2,430,000円
合計 10,193,819円

備考

備考
分担者、聖隷三方原病院の自己資金3,730円、東北大学の返金額610,000円が発生したため。

公開日・更新日

公開日
2022-01-21
更新日
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