がん登録等の推進に関する法律の改正に向けての課題に関する研究

文献情報

文献番号
202008031A
報告書区分
総括
研究課題名
がん登録等の推進に関する法律の改正に向けての課題に関する研究
課題番号
20EA2003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
東 尚弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センターがん登録センター)
研究分担者(所属機関)
  • 柴田 亜希子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センターがん登録センター)
  • 松田 智大(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター 国際連携研究部)
  • 奥山 絢子(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターがん登録センター院内がん登録分析室)
  • 塚田 庸一郎(国立がん研究センター がん対策情報センターがん登録センター院内がん登録室)
  • 藤 也寸志(九州がんセンター 消化管外科)
  • 友岡 史仁(日本大学法学部)
  • 加藤 源太(京都大学 医学部附属病院診療報酬センター)
  • 西野 善一(地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター研究所がん疫学・予防研究部)
  • 佐藤 智晶(東京大学 政策ビジョン研究センター)
  • 石井 夏生利(中央大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
佐藤 智晶(青山学院大学法学部准教授)分担研究者がご逝去されたため(2020年7月24日)、2020年10月7日石井 夏生利(中央大学国際情報学部教授)分担研究者と交替

研究報告書(概要版)

研究目的
平成28年1月より、がん登録等の推進に関する法律(がん登録推進法)に基づく全国がん登録が開始され、がんの予防や普及啓発、医療提供体制の構築等の施策を立案する上で参考となる、悉皆性のあるがん罹患状況や生存率等の情報を得る体制が整備された。このがん登録推進法は施行後5年を目途に見直し、改正することとされているため、 その検討に資する課題の抽出が必要である。本研究では、がん登録推進法の改正が必要となる課題を抽出し、検討に必要な情報を整理することにより、法改正への論点集約が円滑に進み、具体的な審議に役立てることを目的としている。
研究方法
1)現状で判明している課題の整理:国、病院等、研究者等のそれぞれの立場の研究分担者から、情報の収集に関する課題、利用と提供に関する課題、院内がん登録の位置づけ、その他のがんの診療詳細情報の収集等、現状で判明している課題の提言及び意見集約を行った。2)関係団体の意見聴取:都道府県のがん登録関係担当者や、がん関連学会、患者会等に対して期間を定めて意見聴取を行った。
3)課題に対する整理と検討:1)及び2)で収集された課題について、法改正が必要とされた事項については、法律的な改正の方向性について検討し、可能な限り具体的な考え方や対応案についてまとめた。海外でのデータの扱いなどについては、EUデータ保護法等をもとに整理・検討を行った。
結果と考察
1)現状で判明している課題の整理:情報の収集に関する課題、利用と提供に関する課題、院内がん登録の位置づけ、その他のがんの診療詳細情報の収集等について、様々な課題があげられた。全国がん登録の情報の収集については、現在の届出・登録項目の見直しを行い、他の情報との可能な連携方法の確立を図ることにより、登録精度の向上及びより正確な疾患の実態把握、治療への展開を図ることが重要だと考えられた。全国がん登録の情報を、がん対策やがん医療に広く活用し、医療分野における研究開発の促進を図るためには、他の医療情報との突合や統合したデータの分析を可能にすることが求められる。しかし、利用できる情報や利用者の範囲が明確でないこと、匿名化された全国がん登録情報は他のデータベースと連結することができないこと等により、また現状ではがんに関する調査研究が限定される状況にある。このため、データ利用に関する他の法律や規定等と整合性を図りつつ、利用範囲を明確にし、またデータの連結の安全性の評価を行うなどの体制を確立し情報の利活用促進につなげることが重要である。 院内がん登録については、法的位置づけや利用範囲についての規定のほか、がん登録推進法第20条に基づいて提供された都道府県がん情報の適切な管理体制について検討する必要がある。その他、全国がん登録の精度を検証・向上可能な法的根拠を整備し、適切な安全管理体制の下で全国がん登録情報等の利活用促進を図ることが重要であると考えられた。
2)関係者からの意見聴取
がん登録推進法に関する課題について、日本癌治療学会、日本疫学会、日本癌学会、日本臨床腫瘍学会、日本がん登録協議会、全国がん患者団体連合会等の団体を通じて、広く関係者からの意見を募集した。全国がん登録及び院内がん登録における法的位置づけに関する意見が31.8%と最も多かった。
3)課題整理報告書の作成
研究班での議論及び関係者からの意見聴取も参考とし、がん登録推進法の改正において、特に検討が必要と思われる課題を8項目に分類し、「課題整理報告書」としてまとめた。
4)海外の状況調査
学術研究目的による機微な個人データの取扱いについて、厳格な法制度を有するEUの一般データ保護規則(GDPR)及び日本の個人情報保護法制の改正動向を調査し、がん登録推進法の改正に向けた課題について検討した。
結論
本研究班では、がん登録推進法の見直し、改正に向けて、研究班での議論や意見交換、関係者からの意見聴取及び海外や国内のデータ利用に関する法律等の調査により、課題の抽出及び検討の方向性について整理した。がん登録推進法は、全国がん登録及び院内がん登録に関する事項を定め、また、がん登録等により得られた情報の活用について定めることにより、がんの罹患、診療、転帰等の状況の把握及び分析その他のがんに係る調査研究を推進し、がん対策の一層の充実に資することを目的としている。適切な安全管理体制の下で、データ利用に関する他の法律等との整合性を図りつつ、安全管理措置の基準や体制の見直しを行い、全国がん登録情報等の利活用促進を図っていくことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202008031C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究成果が、がん登録推進法の法律上及び運用面における課題解決に向けた検討において活用され、全国がん登録情報等の利活用促進につながることで、がんに係る調査研究の推進、がん対策の一層の充実に資することが期待される。
臨床的観点からの成果
本研究成果を基に、より実態に即したがん登録推進法の見直し、改正が行われることにより、がんの罹患、診療、転帰等の状況の詳細な実態把握及び分析が可能となり、がんに係る調査研究の推進や医療分野における研究開発の促進に寄与することが期待される。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
第15回厚生科学審議会がん登録部会(令和2年11月25日)において、本研究で得られた成果の一部を報告した。
その他のインパクト
現行のがん登録推進法の見直しに当たり、同法に関する課題について、日本癌治療学会、日本疫学会、日本癌学会、日本臨床腫瘍学会、日本がん登録協議会(JACR)、全国がん患者団体連合会(全がん連)等の団体を通じて、広く関係者からの意見募集(パブリックコメント)を行った。全国がん登録及び院内がん登録における法的位置づけやデータに関する課題等、関係者が考える課題について把握することができた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
39件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
第15回厚生科学審議会がん登録部会(令和2年11月25日)において研究成果を報告
その他成果(普及・啓発活動)
1件
がん関連学会を通じて、広く関係者からの意見募集(パブリックコメント)を実施

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
202008031Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,900,000円
(2)補助金確定額
2,442,808円
差引額 [(1)-(2)]
1,457,192円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,164,350円
人件費・謝金 0円
旅費 57,820円
その他 320,638円
間接経費 900,000円
合計 2,442,808円

備考

備考
新型コロナウイルス感染症の影響により、海外旅費がゼロになり、研究計画も変更したため、返金が発生した。

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-