がん診療連携拠点病院等の実態把握とがん医療提供体制における均てん化と集約化のバランスに関する研究

文献情報

文献番号
202008030A
報告書区分
総括
研究課題名
がん診療連携拠点病院等の実態把握とがん医療提供体制における均てん化と集約化のバランスに関する研究
課題番号
20EA1003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
若尾 文彦(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 東 尚弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センター がん臨床情報部)
  • 谷水 正人(独立行政法人 国立病院機構 四国がんセンター 統括診療部、臨床研究センター)
  • 松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 吉田 輝彦(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院 遺伝子診療部門)
  • 伊藤 ゆり(大阪医科大学 研究支援センター医療統計室)
  • 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
21,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん医療の均てん化は、がん対策基本法第2条で定められた基本理念の一つであるものの、実態としては専門医の偏在など地域差の存在は繰り返し指摘されている。均てん化推進のために指定が進められてきたがん診療連携拠点病院についても空白二次医療圏をなくすのは難しく、また院内がん登録、相談支援、キャンサーボード等取組み自体も、施設間差があるとされている。一方で資源は有限であり、最近相次いで開発されている高価な薬物療法は、全患者が使用することは財政的に不可能ともされているし、例えば希少がんの治療を全ての施設で分散すると患者の数が必要な臨床試験は成り立たない。そのため第3期のがん対策推進基本計画では均てん化を推進するとともに、一部集約化すべき事項があると指摘された。しかし、その区別は明確ではなく、本研究の最大の目的はその中で一定方向性を見出すことにある。
研究方法
以下3つの方法で行う。
1.(現況把握)現状のがん診療連携拠点病院、小児がん拠点病院、がんゲノム医療中核拠点病院の、構造、過程、アウトカムの視点から実態の現状を把握し、その施設間差や地域差を記述する
2.(意見聴取)患者・家族・医療者、必要に応じて一般国民の意見を、対面、質問紙調査などを使って聴取する。中でも、現況把握で判明した施設間差について、将来的な進むべき方向性は均てん化か、集約化か、意見の分布の記述を試みる。またがん診療連携拠点病院のあるべき姿、期待する事項についても衆知を結集する
3.(論点・視点の整理)これらの思考過程をセオリー化することで、今後の集約化・均てん化の方向性の検討の上での論点を明確化する。

1.現況把握
<意見交換会>
がん診療連携拠点病院、小児がん拠点病院、がんゲノム医療中核拠点病院についての、現状について、分担研究者を中心として、研究協力者との意見交換会を開催し、現状の課題とその考えられる解決策を同定する。
 患者市民パネルから有志を募り、がん診療連携拠点病院についての印象、体験についての意見交換会を開催し、体験した問題点などを収集することで、患者・家族の視点からのがん診療連携拠点病院の在り方や希望を探る。

<データからの検討>
がん診療連携拠点病院現況報告(以下、「現況報告)という)などから、施設の種別による特性を検討する。
全国がん登録、院内がん登録、あるいはDPCとの連携データを使ってそれらの実態を把握する。

2.意見聴取
<がん診療連携拠点病院の現状・意見調査>
 以上の作業により抽出された論点に加え、現行の指定要件についてのがん診療連携拠点病院管理者の意見、また、それぞれの施設の現状や持続可能性(将来的な見通し)について、アンケート調査を行う準備を行った。
 アンケートを作成する過程で、さらに数名のインタビューを行い先行する拠点病院アンケート調査や、地域がん診療連携拠点病院と都道府県がん診療連携拠点病院の違いなどについての現況聴取を行った。
また、アンケートの方法についてもインターネット調査を予定していたが、既存の各システムを比較しながら最適な方法を検討した。
結果と考察
結果:本年は、意見聴取を中心に現状の把握に努めた。意見交換会については、がん診療連携拠点病院、小児がん拠点病院、がんゲノム医療拠点病院それぞれについて、分担研究者・研究協力者と意見交換会を行い、現状と課題を同定した。また、国立がん研究センターがん対策情報センター患者市民パネルから有志を募り、患者の視点からのがん診療連携拠点病院に対する期待・課題を同定した。データからの検討についてはがん診療連携拠点病院現況報告のデータから平成30年時点での人員配置を施設種別ごとに比較、今後の課題を明らかにした。これらをもとに、がん診療連携拠点病院を対象としたアンケート調査を計画、質問紙を作成するとともに方法についての検討を行った。次年度からこの調査をもとに検討を進める予定である。

考察:本年度は初年度であり、課題の同定を3つの分野(一般、小児、ゲノム)に設置された拠点病院の種類について行うとともに、特に一般のがん診療連携拠点病院について、対象を広げた形で意見収集を行うとともに、今後のがん診療連携拠点病院指定要件を検討する材料として、まず現行の指定要件に関する実態・意見収集のアンケートを作成した。今後は実際の調査を行うとともに、より詳細な解析を、データ源を追加して行っていく。
結論
関係者それぞれの問題意識を総合し、また、現況報告による解析から、現在のがん診療連携拠点病院の種別や地域差などが想定された。今後は詳細な調査を通して、より具体的に差を明らかにし、今後の方向性について検討に資する資料を提供する。

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
2022-08-15

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202008030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
27,000,000円
(2)補助金確定額
24,673,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,327,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,837,581円
人件費・謝金 6,382,317円
旅費 0円
その他 4,503,438円
間接経費 5,950,000円
合計 24,673,336円

備考

備考
新型コロナウイルス感染症の影響により、旅費がゼロになり、研究計画も変更したため、返金が発生した。若尾文彦分担分で残金2,327,000円が出た。

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-